カセットテープ博物館に再訪いたしました!

カセットテープ博物館に再訪いたしました!

『懐かしのカセットテープ博物館』というウェブサイトをご存知でしょうか。カセットテープを取り上げたページは多いですが、その中でも1980年以前のカセットテープを中心に、ものすごい収蔵量をほこるページです。1980年以降のカセットも数多くの写真が掲載されていて、とても勉強になります。その裏側をちょっと覗かせていただきました。


きっかけはステレオ時代の別冊でした

2017年に『カセットテープ・コンプリートブック』という本を発行しました。その時に『カセットテープ年鑑』というページを作りまして、何年にどんなカセットが発売されたか、という年表みたいなものです。ただ作り始めたはいいのですが、そうそうに行き詰まりました。
ちなみにどんなページかと申しますと……

カセットテープ年鑑

こんなページです。この本を作った2017年時点ですでに日本のカセットテープメーカーはマクセルを除いてすべて生産終了。公式の資料も古いものほど散逸していてメーカーの協力は期待できません。ということで、当時の雑誌などに掲載された広告、新製品情報、カセットテープ特集などを掘り起こし、年表を埋めていきました。

たとえば1980年に発売されたカセットテープを知りたければ、1980年に発行されたオーディオ誌やFM雑誌などでカセットテープ特集をしているかどうかを探し、あればそれを基本資料として、さらにFM誌やステレオ、レコパル、オーディオアクセサリーなどの新製品コーナーや広告をすべてチェックしていきます。
ところが、同じ頃に発行された雑誌なのに、A誌とB誌で掲載されているカセットのパッケージデザインが違っていたり、価格が違ったり…。そもそも載っていたりいなかったり…。そんなことが頻発したのです。

ただし、大半はどちらかが間違っているということではなく、同業の人間として弁護すれば、A誌もB誌も編集時には正しい情報だったのでしょう。そもそも本は情報収集→執筆→編集→印刷→発行というスケジュールで進行していきますので、その間にモデルチェンジしたり価格改定したり、ということだったのだと思います。とはいえページを作るに当たっては、どちらの情報がより実態に則しているか判断しなくてはなりません。がそれはいくら雑誌を読んでも分からないのです。
そこで頼ったのが『懐かしのカセットテープ博物館』でした。

藁にもすがる思いでウェブサイト経由で館長の加藤邦裕さんにご連絡を取らせていただき、色々とお知恵を拝借したり、広告や発売日が分かる資料などをお借りしたりと、それはもう『懐かしのカセットテープ博物館』と加藤さんのお力添えがなければ完成はなかったといっても過言ではありません、本当に。……ということで、それ以来なにかとご助力いただいている間柄なのです。
ふー、長かった。ここから本題です。

あ、長いついでに宣伝させてください。『カセットテープ・コンプリートブック』、まだ売っているところもあると思いますので、ご興味あるかたはぜひ。ちなみに表紙の「カットプレイヤー御三家」とあるのは「カセットプレイヤー御三家」の、もちろん間違いでございます。

カセットテープ年鑑 表紙

で、『懐かしのカセットテープ博物館』の裏側

『カセットテープ・コンプリートブック』でも掲載しているのですが、『懐かしのカセットテープ博物館』には以前も伺ってます。ですが、今回はほぼ抜き打ちでの訪問。じつはステレオ時代14号でDCCデッキの1号機、フィリップスDCC900を取り上げているのですが、ヤフオク!で入手した編集部のDCC900が動かず、加藤様にお借りしたのです。その後、音楽之友社のステレオさんとのコラボ企画やミュージックバードの番組で使うため、再び加藤さんにお借りに伺いました。そのときの写真です。

加藤さんは「写真撮るって聞いてなかったから片付けてないんですけど」と多少嫌がられたところ、無理にとお願いし撮らせていただきました。
写真を見て、「カセット少ししかないじゃん」と思われた方もいらっしゃるとは思いますが、じつは積んであるダンボールの中はほぼカセットです。

箱には「70's未開封 3M」、「70's未開封 PHILIPS BASF」という文字が。中身を想像すると恐ろしい…。70年代の未開封カセットがこのように積み上げられております。しかも一番上の箱には「ELCASET」の文字が!? 幻のメディアがダンボール箱単位でここにあるという、信じられない状況です。ご存知の方も多いとは思いますが、カセットの利便性とオープンリールの高音質を両立させようと誕生した、巨大なカセットテープあるいはオープンリールをケースに入れたような、冗談みたいなメディアです。でも音は相当良かったと聞きます。体験したことはないですが。
もちろん机の正面のラックにもレアなカセットが並びます。

まさに博物館! 多少詳しい方やコレクターの方には垂涎のカセットが並びます。諸説あるマクセルの初号機ですが、やはり数種類お持ちですね。富士フイルムの初代カセットもあります。
ダンボール以外にも、懐かしのカセットテープラック(引き出し式)がいくつも積まれてまして、加藤さんに断って手近のひとつを開けてみます。
That's(太陽誘電)ですね。

that's MG

MGは通常のハイポジションより安い46分600円という低価格を実現した超低価格メタルテープ。1983年に登場したThat'sブランドの1号機です。VXは海外専売品ですね。SUONO(スオノ)はイタリア語で『音』。イタリアのカーデザイナーの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロのデザインとなる傑作カセットです。ただ形状が凝りすぎててコンパクトカセットの規格に合わず、スロットローディングのカーステレオなどでは詰まることもありました。その辺を改良し、規格として成立させたのがCDシリーズです。
別の引き出しはナショナルのテープが並んでました。その中の一本にMA-DUがありました。

オングローム ナショナル

「オングローム」シリーズは磁性体を蒸着させたテープ。一般的な塗布するタイプと異なり、超微粒子を均一に配置できます。そのメタル版。実物を見るのは初めてです。とてもレアなテープです。

レアなデッキが並びます

カセットテープ同様、デッキもレアなものが多いのです。ステレオ時代12号でナカミチのDRAGONと対決させていただいたタンバーグ3014Aも加藤さんからお借りしたもの。
机の右手、一番手が届きやすいところにはルボックス(スチューダーの民生版)がありますが、その左側にはDATなどと一緒にナカミチの人気ベスト3といえるような、RX-505、1000ZXそしてDRAGON。その上にあるのはなんとエルカセットではないですか。まあエルカセットのテープがあれだけあれば、デッキもありますね、当然。それにしても今回お借りしたDCCといい、DAT、エルカセットとカセット式テープメディアの歴史がこの部屋に凝縮されています。
…と感心しながらそこらじゅうを遠慮なく眺めていると、加藤さんが不敵な笑みを浮かべています。「じつはもっとレアなデッキを手に入れたんですよ。聴いてみます?」。
おーっと、ここから先は次のステレオ時代でやらせてください! とはいえ、この寸止めっぷりもあんまりなので、ヒント。

さて、このデッキ、なんでしょうか?

なお、「懐かしのかカセットテープ博物館」の収蔵庫(加藤さんのご自宅)は、もちろん非公開です。ご了承ください。

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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