『思い出カセット』SONY HF/maxell UR/DENON RE

『思い出カセット』SONY HF/maxell UR/DENON RE

カセットを当たり前に使ってたあのころ。ハイスペックなテープがむしろカッコ悪く思えた時期って、ありませんでした?


あえてケースに入れず乱暴に持ち歩く

メタル、ハイポジなんてカッコ悪い

80年代の洋画で、裸で放り出してあったカセットをカーステレオに差し込んでロックやらカントリーやらをガンガン鳴らす。そんなシーンに憧れたことありませんでした? あるいはおしゃれな人ほどカセットの銘柄に無頓着だったり。ふと我が身を振り返って、ハイポジにドルビーを入れているのが恥ずかしく思えたり。そんなときは、あえて安いノーマルにドルビーなしで録音したり。レベルなんて適当にあわせて、あえて振り切り気味で、でもそれがかえって良い音に聴こえたりしませんでした?
そんな気取りがない(つもりで本当は超気取った)カセットがここに取り上げたカセットたちでした。ここにTDKのAE(またはDS)あたりが加わると最高ですね。揃いも揃ってクリアハーフ。
クリアハーフの元祖は1981年のTDK MA-Rですが、あれはダイキャストフレームをアクリル板では挟んだもの。つまりクリアなのはハーフではなく板です。ちなみに本当に難しいのはスリップシートという、リール(ハブ)とハーフの間にある、滑りを良くしたりリールの位置決めをするためのシートを透明にすることだったようですが、従来紙で作っていたそのシートを透明な樹脂シートに置き換える技術が開発された後は、透明なハーフを持つカセットはどんどん増えていきます。
1983年TDK AD-S、1984年TDK DSが登場。その後はマクセルUR-F、ソニーGokkigen!!などカラフルでファンシーな路線に展開されました。その流れでソニーがCHFの後継モデルHFを、またTDKはD(DS)の後継モデルAEに透明なハーフを採用したのです。これが自分的にさりげカッコいいテープのハシリでした。

スモークハーフのHF

いずれも透明ハーフなので、ラベルシールとリールのデザインがポイントとなるのですが、ちょっとスモークの入ったクリアハーフがめちゃくちゃカッコ良かったのがこのHF。
テープの性能としてはそれほど良くもないけど、十分音楽用として使えるもの。CHFからは格段に良くなってます。安い上にどこでも売ってたので、使いやすいテープでした。
山下達郎とか良く録音してました。達郎はマクセルのCMですけどね。

うっすらオーバルのUR

1987年、マクセルの主力モデル、UDシリーズ、XLシリーズが楕円形の窓を持つオーバルデザインのハーフにモデルチェンジします。それにともなってエントリーモデルのURもモデルチェンジ。それまで懐かしい感じの黒いハーフだったのがクリアハーフになりました。ただしただのクリアではなく、中央の楕円部分は透明、その他の部分は曇りガラス風の処理がされた、変速クリアハーフです。後にザッツ(太陽誘電)がジウジアーロ・デザインのOWシリーズに使った手法ですね。
スモーキー・オーバルウインドウと名付けられたこのデザイン、もちろんXLからURまでのファミリーデザインとして採用されたものです。このURも音楽カセットとして十分な実力を持っています。
なお現在、メジャーなカセットテープで安定的に供給されているのは、この何世代か後のマクセルURだけです。

原宿系ギャップ萌えのRE

このオーバルURと同じ1987年頃に登場したのがデンオン(現・デノン)のエントリーモデルREです。
デンオンのカセットはパッケージ、ハーフのデザインに華がないものの実力は十分。安売りされたり、分数のバリエーションが変わってた(42分や50分など)ので、けっこう愛用しました。もっともこのREはごく普通に46分、60分、90分、120分というバリエーションです。
男臭いカセットにあってピンクとかパステルグリーンとか、原宿系(当時原宿には行ったことがなかったです)のカラーリングを安っぽい透明ハーフにあしらった感じが「カセットには興味ないですう」という女の子が使ってそうで、それなのにテープの実力はある、というギャップが好きで(今でいうギャップ萌え?)何度か使いました。

AE、JP-Fなど通好みの選択

TDKのテープに間違いはないと思いつつ、地味なデザインがややおっさん臭かったんですよね。1986年にパッケージデザインを一新した際にピンクと赤をあしらったラッピングにしたものの、でも中身は地味というTDKのエントリー、AE。すごくいい娘なんだけど地味なんだよね、というタイプで、棚に並んでいる時は手に取りづらいんだけど、使ってみるといい的なテープでした。

アクシア(富士フイルム)のJP-Fは、PS-IやPS-IIの弟分(派手めな妹分?)的なテープでした。富士フイルムが背水の陣でブランド名まで一新したアクシアブランドの、音楽用としてはエントリーモデルでしたが、めちゃくちゃ安いのになかなか良い音だったんです。

※AE、JP-Fの写真は当時の広告より。

ノーマルの安物テープの実力

ウォークマン、ラジカセ、カーステレオ……。カセットの醍醐味ってやっぱりゼネラルオーディオなんですよね。そこに高いカセットは似合わない、というのは仕方ないことなんです。とはいえあえて悪い音で聴きたい人がいるわけもなく、また真面目な日本のテープメーカーはエントリーモデルでも手抜きなし。安いテープでも安心して使えました。安いから多少手荒に扱っても怖くない。それこそむき出しで通学カバンに放り込んでも大丈夫でした。
そんな愛しのクリアハーフのベーシックカセットなのです。

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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