ロックの政治利用はアメリカの伝統⁉ トランプ政権下で最初の中間選挙を目前に控えて

ロックの政治利用はアメリカの伝統⁉ トランプ政権下で最初の中間選挙を目前に控えて

11月6日(火)に中間選挙が行われるアメリカでは、歴史的にロックと政治の間に切っても切れない関係があるようで…


YouTube 出典:neilyoungchannel

本日の曲:Neil Young - Rockin' In The Free World

1989年の作品。歌詞の'Keep on rockin' in the free world'というフレーズは、当時のジョージ・H・W・ブッシュ(父ブッシュ)大統領や共和党の新自由主義政策をシニカルに批判するものでしたが、ヤングの意図とは裏腹に自由主義万歳ソングと解釈され、共産主義崩壊のアンセムとして扱われるようになったのだとか。

トランプ政権の「中間試験」になる選挙がまもなく

店番  :先生、大変です。テイラー・スウィフトがまたやってくれました。

北中さん:ん? どうしたのかな。新しいボーイ・フレンドとの喧嘩を歌にしたとか、そんなゴシップですか?

店番  :それは彼女の得意技じゃないですか。ちがいますよ。もっとシリアスな話です。

北中さん:というと?

店番  :11月6日はアメリカの中間選挙です。トランプ政権になってから初めての大規模な選挙です。

北中さん:そうですね。連邦議員や州知事の半数以上が改選されるので、結果によって、これまでのトランプ大統領のお騒がせな言動が評価されるわけですね。それとテイラー・スウィフトとどういう関係が?

テイラー・スウィフトが選挙に一石を投じた政治発言

店番  :彼女がインスタグラムで、今度の中間選挙では、テネシー州の共和党の下院議員選候補に投票しないと発表したことで、炎上したという事件です。

北中さん:ああ、そのニュースですか。たしかにこれまでの彼女とは様変わりですね。政治的な意見を表明しない日本の芸能人とちがって、アメリカではたくさんのセレブ芸能人が政治家や政党の支持を明言していますが、彼女は意見を言わなかったので、無責任だと批判されていました。

というのは、かつての彼女はカントリー・シンガーとして活躍していましたが、カントリーのファンは、共和党やトランプ支持者が多いわけです。おまけに彼女の本拠地は、カントリー・ミュージックの都ナッシュヴィルのあるテネシー州でしたからね。

店番  :言いたくても言えなかったということでしょうか?

北中さん:明確にはわかりませんが、以前から共和党支持じゃなかったかもしれませんね。しかしここ数年、彼女はカントリー・ミュージックの世界からポップ・ミュージックの世界に転身して大成功していますから、カントリー・ファンが少しくらい離れても大丈夫と判断したのでしょう。

今回は共和党候補が性差別を容認しているので、投票したくないと、理由も説明しています。発表して炎上したかもしれませんが、それ以上に支持するファンが多かったようです。

カントリー・ミュージック出身のテイラー・スウィフト Photo: Eva Rinaldi

ミュージシャンから抗議が殺到したトランプ流「炎上選曲」

店番  :トランプ大統領は「テイラー・スウィフトを25パーセント嫌いになった」と言ってるそうですが…。

北中さん:大統領が反応しなければならないくらい、影響力があるということでしょう。大統領は彼女の音楽のファンだと公言していましたしね。しかし残りの75パーセントが好きということは、彼女のファンであり続けるつもりなんでしょうか(笑)。

店番  :そういえば、他にもトランプ大統領に反対するミュージシャンは多いですね。

北中さん:2年前の大統領選挙のときは、トランプ候補がニール・ヤングの「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を無断で使用して抗議されたのをはじめ、R.E.M.やエアロスミスも無断使用されて抗議していました。

「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を無断で使われて抗議したニール・ヤング Photo: elmuzz

ロックの政治利用はアメリカの伝統⁉

店番  :.。oO(そういや、選挙の頃からよく揉めてたな…)

北中さん:昔の話では、80年代に共和党のレーガン候補が民主党支持のブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・USA」を無断使用して抗議された事件が有名です。このときはベトナム帰還兵の視点で政府を批判した歌なのに、あたかも愛国の歌であるかのように使っていました。

店番  :ロックの無断使用は昔からあったんですね。

北中さん:トランプさんは大統領就任後も、マドンナ、ケイティ・ペリー、グリーン・デイ、リアーナ、ゴリラズ、ロジャー・ウォーターズ、U2、ケンドリック・ラマー、レディ・ガガなどなど、たくさんのミュージシャンから批判されていますね。

店番  :つい最近でもファレル・ウィリアムスの「ハッピー」を無断使用して抗議されてましたね。懲りないというか、確信犯というか…。

トランプ氏の集会の様子。「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」というスローガンの入った赤い帽子をかぶった支持者も。 Photo: The Epoch Times

もちろんトランプ応援団のアーティストもいます

店番  :みんなトランプ大統領のどこに反対しているのでしょう?

北中さん:理由はアーティストによってちがいますが、性別、人種、移民などに関する大統領の発言や考え方が差別的だと反対している人が多いように思います。

店番  :大統領と共和党を支持するアーティストもいますよね?

北中さん:キッド・ロック、サム・ムーア(サム&デイヴ)、ジェフ・バクスター(ドゥービー・ブラザーズ)、マイク・ラヴ(ザ・ビーチ・ボーイズ)などはトランプ支持者ですが、いちばん有名なのはカニエ・ウエストでしょう。

トランプ大統領とカニエ・ウェスト Photo: John Miller

支持政党がそれまでの真逆に変わるアーティストも

北中さん:彼は21世紀のヒップホップ界を代表する大物ラッパーの一人ですが、10月にホワイトハウスに行って大統領と会っています。「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」という大統領選のときのスローガンの入った赤い帽子をかぶって大統領とハグしている写真が出回っていますね。

店番  :ヒップホップと共和党って縁遠そうな印象ですが…

北中さん:黒人ラッパーには民主党支持者が多いので、白人寄りと言われる大統領としては、有難い応援者だと思います。もっとも、会見中は、カニエが喋り倒したため、大統領もあっけにとられたままだったようですが。

店番  :カニエ・ウエストは、共和党のジョージ・ブッシュ大統領を人種差別主義者と批判していたような記憶があるんですが?

北中さん:支持政党や人は、変わりますからね。かつてニール・ヤングも共和党のレーガン大統領支持発言をしたことがありました。フランク・シナトラは、60年代には民主党のケネディ大統領を支持していましたが、70年代には共和党のニクソン大統領を支持していました。

個別の政策や人柄や言動によって、是々非々の判断をしている人もいる、ということではないでしょうか。

店番  :最近、カニエは「政治から距離を置く」とも言ってますし、支持する人が変わるのはよくあることなんでしょうね…。

北中さん:実はカニエ・ウエストとトランプ大統領の面会は、デジタル時代の音楽著作権にまつわる重要な法律に大統領が署名した日に行なわれたんですが、カニエの派手な言動でそちらのニュースの影が薄くなってしまったと音楽関係者はぼやいているそうです。

ゴールデン横丁の仲間たち | 北中 正和 (きたなか まさかず)

https://goldenyokocho.jp/articles/669

1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。

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