ディープ・パープル まもなく始まる来日公演はサヨナラ・ツアー⁉

ディープ・パープル まもなく始まる来日公演はサヨナラ・ツアー⁉

2018年10月14日(日)から始まるジャパン・ツアーのタイトルは「The Long Goodbye Tour」と意味深で…。果たしてその真相は?


YouTube 出典:deeppurpleos

本日の曲:Deep Purple - Highway Star

リッチー・ブラックモアによるギターの速弾きと、イアン・ギランの金切り声を立てる超高音シャウト、クラシカルなコード進行が印象的なバンドの代表曲。アルバム『ライヴ・イン・ジャパン』にも収録されています。

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店番  :2018年10月14日(日)から22日(月)までディープ・パープルがジャパン・ツアー中ですが、ツアーのタイトルが意味深です。「The Long Goodbye Tour」というんですね。

北中さん:お、レイモンド・チャンドラーの推理小説の名作『長いお別れ』と同じタイトルだ。目のつけどころがいいなあ。チャンドラーの小説は、ちょっとキザな名セリフのオンパレードで、「タフでなかったら生きてはいけない。優しくなれなかったら生きている値打ちがない」……。

店番  :北中さん、それは別の小説のフレーズじゃありませんでしたっけ?

北中さん:あ、そうでしたね、失礼失礼。「The Long Goodbye Tour」、たしかに思わせぶりなタイトルです。それについては、招聘元のウドーさんのサイトのディープ・パープルのページにヴォーカルのイアン・ギランのインタビューが公開されていて、その中で明らかにされています。

「未来のことは予測できたことがないし、本当にわからない」

店番  :で、今回が最後のツアーになる、ということなんでしょうか?

北中さん:「未来のことは予測できたことがないし、本当にわからない。もちろんそうでないことを願っているけどね」と答えています。

店番  :意味深なコメントですが…
     ということは、最後の来日というわけじゃないんですね。

北中さん:ツアーをやめるとは言ってませんね。
かつては先のことを考えないで進んできたが、体調を崩したとき、周囲から促されて、永遠にツアーを続けることはできないのだから、気持ちの準備だけはしなくちゃならないと思うようになった。

だけど、ツアーを急にやめることも気持ちの上では難しい。そこでファンに向けてというより、自分たちに向けて、ゆとりを持って歩んでいきたいという思いからつけたタイトルだそうです。

現在のメンバーによるライブの様子 Photo: Łukasz Ryba

バンドに終わりが来ても、遺したものは未来に続いていく

店番  :ミュージシャンに定年制度はないということですね。つい先日に亡くなったシャルル・アズナヴールのように、94歳で亡くなる直前に日本に来た人もいますしね。

北中さん:ディープ・パープルは『ライヴ・イン・ジャパン』のアルバムで世界的にブレイクしたグループだから、日本に対する思い入れもあるでしょうしね。体調さえよければ、次の来日もありうるでしょう。永続は不可能でも、できるかぎり現役でいたいという表現者は少なくないと思いますよ。

店番  :去年出たアルバムのタイトルは『ジ・インフィニット』、無限大、でした。

北中さん:氷の海を砕氷船が∞のマークを描きながら進んでいくジャケットのアートワークがロックらしいですね。『ジ・インフィニット』はそこからつけたタイトルだそうです。

人間は限りのある生き物だし、グループにも始まりと終わりがある。しかし先人から受けた影響や自分たちが未来に残していくものは実は連続している。だから始まりと終わりには形がないとも言える、そんな思いがこめられています。

アルバム『ライヴ・イン・ジャパン』は海外では『Made In Japan』のタイトルでリリースされ、大ヒットしました。 Photo: traaf

「30歳以上は信用するな」と言ったかつての若者は…

店番  :ずいぶん深遠な話ですね。

北中さん:ディープ・パープルがデビューしたころ、若者たちは「30歳以上の大人は信用するな」とか、「老人になる前に死んでしまいたい」といったスローガンを唱えていました。
自分たちが歳をとっていくことを棚上げして、粋がっていたんですね。ちなみに後者は60年代のロック世代のアンセムだったザ・フーの「マイ・ジェネレイション」の歌詞で、世代の断絶を象徴する言葉でした。

店番  :だいたい若者って、そういうものですよね。大人の言うことは、けむたいし、ウザい。若者の言い分が当たっていることもあるけど、大人に反抗することで、自分の存在を証明したい年頃ですからね。

北中さん:先のインタビューで、イアン・ギランも同じような意味のことを言ってます。表現者は若いころは自分の才能に対して、思いあがってしまいがちだ。たしかに若者の表現は若者にしか判断できないところがあるから、思いあがりにも一理はある。

自分たちもかつては大人にわかってもらわなくてもけっこうだと思っていた。客観的な評価ができるようになるのは、それが時代を超えて生き延びてからのことだ、ってね。

黄金期といわれる第二期のメンバー。ギターのリッチー・ブラックモア(右)は1993年に脱退しましたが、ベースのロジャー・グローヴァ―(左)、ドラムのイアン・ペイス(奥)、ヴォーカルのイアン・ギラン(中央)は今も現役。 Photo: dana wullenwaber

見どころはギターとキーボードの即興セッション?

店番  :ハード・ロッカーといえば、洗練された知性よりワイルドな体力で勝負するイメージがありますが、そんな話を聞くと、イアン・ギランは思慮深いところがある人なんですね。

北中さん:ディープ・パープルはハード・ロック御三家のひとつとして人気の出たグループですが、その前はオーケストラと共演したりしていました。もともと知性派のプログレ・バンドだったところにハード・ロック色を強めて人気が出たのです。

「スモーク・オン・ザ・ウォーター」や「ハイウェイ・スター」など70年代のヒット曲がいまだに有名ですが、近年のアルバムにもプログレ的な要素がありますし、体力だけのグループではないと思いますよ。もちろん、体力があるだけでもすごいんですが。

店番  :来日公演の見どころはどんな点でしょう?

北中さん:ひとつは初期からのメンバーと、後から加わった若手とのコンビネーションのよさです。誰もが知っている曲から、隠れた名曲や新曲まで、幅広く演奏してくれますし、即興も得意です。

ギターとキーボードの両方がバランスよく活躍するハード・ロックの魅力を味わえる。いつも背中のかゆいところに手が届くような演奏を聞かせてくれるグループです。だから今も人気が高いんですね。

ゴールデン横丁の仲間たち | 北中 正和 (きたなか まさかず)

https://goldenyokocho.jp/articles/669

1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。

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