『チープ・トリックat武道館』40周年!日本の女の子たちが世界に先駆けて騒いだバンド

『チープ・トリックat武道館』40周年!日本の女の子たちが世界に先駆けて騒いだバンド

2018年10月11日に来日公演を行う彼ら。この武道館でのライヴ・アルバムが作られなかったら、ロックの殿堂入りも果たせず、パワー・ポップも生まれなかった?


YouTube 出典:vevo

本日の曲:Cheap Trick - I Want You to Want Me(甘い罠)

日本での人気が先行していたチープ・トリックが世界的な人気を誇るバンドにステップアップした『at武道館』バージョンです。

2018年は『チープ・トリックat武道館』40周年!記念来日公演もt武道館』40周年!記念来日公演も

店番  :ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールやウェンブリー・アリーナなど、ロック・コンサートではおなじみの会場がありますが…
東京だったらロックの殿堂は日本武道館ですよね?

北中さん:いまはもっと大きなスタジアム・コンサートが珍しくありませんが、国際的に知られた1万人前後の会場となると、やはり武道館でしょう。ビートルズの公演以来、武道館でコンサートを行なった洋楽アーティストは数知れません。ライヴ・アルバムを発表したアーティストもいます。

店番  :2018年10月11日にZepp Tokyoでライヴするチープ・トリックもそうですね。『チープ・トリックat武道館』の40周年記念だそうです。

北中さん:ですです。40年前の初来日公演にちなんで、4月に武道館を押さえていたのが、残念ながらギターのリック・ニールセンの体調不良でキャンセルされました。それで振替日を探しましたが、調整できなかった。とはいえ、会場が変わっても40周年記念に公演したいというバンドの意向があって、Zepp Tokyoでやることになったそうです。彼らにとって日本はそれだけ思い入れがあるところなんでしょうね。

日本限定で売るつもりのライブ盤が世界で大ヒット!

店番  :『チープ・トリックat武道館』は日本企画のアルバムだったんですよね?

北中さん:当時の彼らはアメリカではそんなに人気がなくて、日本での人気が先行していました。
それでアメリカ側がライヴ盤を出すことは考えられないので、日本のCBSソニーが制作して、当初は日本だけで発売する予定でした。日本の音楽ファンは思い出のためにライヴ盤を買う傾向がロックの時代以前からあったので、よく作られていたんです。ペレス・プラードとかね。武道館のライヴ・アルバムはディープ・パープルの名盤が先にあったので、それにあやかった面もあると思います。

店番  :ところがいつの間にか世界発売されたんですね!?

北中さん:アメリカでラジオ局がこのアルバムから「甘い罠(I Want You to Want Me)」のライヴ・ヴァージョンを放送したら、スタジオ・ヴァージョンよりノリがいいので人気が出て、日本からの輸入盤を探す問い合わせが絶えなかった。ずいぶん輸出もしたそうです。

それでアメリカのエピック・レコードがアメリカ盤を出してプロモーションした。するとアルバム・チャートの4位まで上がり、シングル・カットされた「甘い罠」も7位まで上がり、チープ・トリックにとって初の大ヒットになりました。

『チープ・トリックat武道館』のレコード Photo: acme401

日本の女の子の感覚が彼らを世界に送り出した

店番  :ひょうたんから駒みたいな話ですね。

北中さん:「甘い罠」を聞けばわかるように、とにかくポップな曲が書けるグループでした。それにしてもこのライヴ・アルバムは女の子のファンの歓声がすごいですね。

ヴォーカルのロビン・ザンダーは、甘いルックスとあいまってティーンのアイドル的な人気があったんです。オヤジ的な風貌のギタリスト、リック・ニールセンとの組み合わせのミスマッチ感も「かーわいい!」ということになったんですね。

こんなに女の子の歓声が聞こえるのは、ビートルズ以来だとアメリカでは驚かれたそうです。日本の女の子の感覚が彼らを世界に送り出したと言っていいでしょう。

店番  :MCが聞き取りやすいように、メンバーがゆっくり噛んでふくめるように英語をしゃべっているのがわかります。

北中さん:思い起こせば、クイーンも日本の女の子たちが世界に先駆けて騒いだバンドでした。70年代のロック・ファンは男が多く、女の子が騒ぐバンドを色目で見がちでしたが、このアルバムに関しては、女の子のほうが見る目があったということでしょう。

デビュー時はプロフィールを間違われるほど無名のバンドでした

北中さん:ところで彼らについてはささやかな思い出があります。

店番  :どんなことですか?

北中さん:まだ日本盤が出る前にディレクターの野中則雄さんから、こんなグループがいるんですけどとデビュー・アルバムを聞かせてもらって、変わった演奏がおもしろかったので輸入盤紹介の小さな記事を書いたんです。

その時、アメリカのレコード会社が作ったバイオグラフィには、メンバーの誰それは南米出身でどうとか、いいかげんなことが書いてあったのをそのまま真に受けて書いた覚えがあります(笑)。メンバーがフューズというバンドにいたこととか、気がつかずに(笑)。冷汗ものですが。

店番  :今だったらネットでツッコまれてるでしょうね(笑)

1999年のライブの様子。ギターがすごい… Photo: Carl Lender

ロックの殿堂入りは武道館のライヴ・アルバムがあったから

店番  :彼らの人気は80年代にも高かったですね?

北中さん:その後も『ドリーム・ポリス』『オール・シュック・アップ』『ワン・オン・ワン』などヒット・アルバムが続きましたからね。

しかし音楽の方向性として、ハード・ロックに進むのか、もっとバラエティのある音楽に進むのか、メンバーの間で意見が分かれて、方針が定まらず、人気の下降を招いたみたいです。とはいえその後もインディーズから作品を発表したり、ライヴを数多くこなしたりして、地道に活動を続け、いまではパワー・ポップの先駆者という位置づけをされています。

店番  :2016年にはロックの殿堂入りを果たしましたね。

北中さん:ですです。ディープ・パープルやシカゴと一緒の殿堂入りですから、大したものです。
それだけ評価されたのも、そもそも武道館のライヴ・アルバムがあったから、と言っていいでしょう。実は何曲か大阪公演のテイクも使われているようですが(笑)。

ゴールデン横丁の仲間たち | 北中 正和 (きたなか まさかず)

https://goldenyokocho.jp/articles/669

1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。

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