9月18日はジミ・ヘン48回目の命日。夭逝の天才が歪んだギターでロックに起こした革命

9月18日はジミ・ヘン48回目の命日。夭逝の天才が歪んだギターでロックに起こした革命

1970年に亡くなって48年がたちますが、エフェクトを駆使した歪んだギター・サウンドや独創的な「ジミヘンコード」、ギターを歯で弾いたり燃やしたりするパフォーマンスはいまだに度肝を抜かれます。彼の唯一無二の音楽はどのように生まれたのでしょうか?


YouTube 提供:vevo

本日の曲:Jimi Hendrix - Purple Haze

1967年に2枚目のシングルとして発表されたジミの代表作。不協和音を含む独特なギターの響きから、サイケデリック・ロックの名作として名高い作品です。

ロック・ギターを語るのに避けて通れぬ男、ジミ・ヘン

店番  :今年の5月にギターの名門メーカー、ギブソン社が経営危機に陥ったニュースにはギターの時代のひとつの終わりを感じました。しかしギターのないロックなんて、肉のないすき焼きみたいなもので、ギターが滅びることはないと思いませんか?

北中さん:もちろんです。ロックがあるかぎり、ギターは滅びません。いや、ロックが滅びても、ギターがなくなることはないでしょう。
なにしろギターはロックの生まれる何世紀も前から愛されてきた楽器です。人間がプラスチックやプラズマを食べて生きるような時代が来ないかぎり大丈夫です!!

店番  :!??? ですよね。ところで、北中さんは誰がいちばん重要なロック・ギタリストだと思われますか?

北中さん:うーん。世界一うまい餃子の店はどこか級の難問ですね。とはいえ、複数あげてもよければ、絶対入るのがジミ・ヘンドリックスです。
こういうランキングでは定番のアメリカの雑誌『ローリング・ストーン』が選んだ「100人の偉大なギタリスト」も第1位はジミ・ヘンです。

今年は名作『エレクトリック・レディランド』発表から50周年

店番  :確かにジミ・ヘンは外せませんね。

北中さん:今年は名作『エレクトリック・レディランド』発表から50周年ということで11月には記念盤が発売されます。デモ音源、アウトテイク、ライヴ、ブルーレイのドキュメンタリー映像など、未発表音源も含む盛りだくさんな4枚組仕様です。輸入盤ではアナログ6枚組+ブルーレイのボックスも出るようです。

店番  :(北中さん、きっとまたネット通販でポチっとするんだろうな…)

北中さん:誕生日1週間前の11月20日にはライヴ・ドキュメンタリー・フィルム『ジミ・ヘンドリックス』(73年作品)の爆音上映も東京と大阪のライブハウス、ZEPPで行なわれます。2020年の没後50周年に向けて、既にいろんなプロジェクトが着々と進行しているようです。

『エレクトリック・レディランド』イギリス盤のカバー。大きな反響を呼んだものの、ジミはこのカバーを嫌っていたのだとか。

Photo: badgreeb RECORDS

50周年記念盤では、ジミ・ヘンが当初望んでいたセントラル・パークの「不思議の国のアリス」像の前で撮影された写真が初めてフルカラーで使われる。撮影は元ポール・マッカートニー夫人のリンダ・イーストマン。

初めてフィードバック・ノイズを音楽に取り入れたギタリスト

店番  :ジミ・ヘンといえば、モンタレー・ポップ・フェスティバルのステージでギターに火をつけて壊した派手なパフォーマンスが有名ですが、それだけじゃなかったですよね?

北中さん:ギターを歯で弾いたり、背中に回して曲弾きしたり、見ている人が驚いて楽しめるパフォーマンスをやる人でしたね。そのサービス精神は、リトル・リチャードやアイズレー・ブラザーズのバック・バンドにいたときからあったようで、リトル・リチャードから「オレより目立つな!」と釘をさされたこともありました。
とはいえ、それより重要なのはギタリストとして革命的な存在だったことです。

店番  :革命的と言いますと?

北中さん:ウッドストックの映画で有名な「アメリカ国歌」の変奏はノイズの嵐のような演奏でした。
初期の「フォクシー・レディ」や「パープル・ヘイズ」の演奏には、調子外れかと思うほど多彩で変わった和音や音色や自由自在なフレーズが凝縮されていました。

フィードバック・ノイズを音楽にとりこみ、演奏しながら音色を変化させる試みを大胆に推し進めたギタリストは、彼以前にはいませんでした。先駆者がいなかったわけではありませんが、彼はそれを別次元にまで高めたんです。

エフェクトを使いこなし、新しい音色を創り上げた

店番  :ロックのギター・ヒーローにはイギリス人が多いですが、彼はアメリカの黒人ギタリストでしたね?

北中さん:その意味でも稀有の存在でした。彼はまずイギリスで成功するんですが、ライヴにはイギリスの有名ミュージシャン全員が様子を見に来たそうです。エリック・クラプトンやジェフ・ベックもジミに最大級の賛辞を送っています。

店番  :エフェクトに頼りすぎという批判もあったようですが?

北中さん:エフェクトに頼ったのではなく、エフェクトをギターと結びつけて使いこなしたんです。主役はあくまでも彼の手足でした。あ、歯も忘れちゃいけないか。マイダス王は手にふれるものすべてを黄金に変えましたが、ジミ・ヘンは出すノイズをすべてアートに変えました。エフェクトも含めてエレクトリック・ギターの可能性を極限まで広げたと言えばいいか。

右利き用のギターを、左利きの構えで弾いたことが彼の独特の奏法につながったと言う人もいますね。

1967年頃のライブの様子
Photo: Wystan

R&Bの伝統を押さえた上での、型破りの独創性

店番  :彼は速いフレーズはあまり弾きませんでしたね?

北中さん:指を速く動かすのも才能だと思いますが、音楽がおもしろいかどうかはそれとはまた別の次元の問題じゃないでしょうか。派手な外見やパフォーマンスのせいで誤解されがちですが、実験的に聞こえる演奏をしてるときも、彼の音楽はブルースやリズム&ブルースの基本を押さえたうえで、発展させたものでした。

店番  :そこがジミ・ヘンのすごいところなんですね。

北中さん:革新的だけど伝統に根ざしていた。でなければ、同時代のジャズの第一線にいたマイルス・デイヴィスやギル・エヴァンスから評価されなかったでしょう。マイルスとはレコーディングの予定まであったのに、ジミの夭折で実現しなかったのはほんとに残念ですね。

ヴォーカリスト、ソングライターとしても名作を遺した

店番  :ヴォーカリストとしてはいかがですか?独特な歌い方ですが…

北中さん:若い頃の本人は歌に自信がなかったと言ってますね。たしかに美声ではないし、強靭な声でもない。それでも型破りな演奏にふさわしい味のある歌声ですよ。
やはり型破りなボブ・ディランの歌を聞いて、ジミ・ヘンはこれだったらオレもできると思ったそうで、「見張り塔からずっと」は、作者のディランよりジミ・ヘンで有名になりました。

店番  :ギタリストだけでなく曲も書いたんですよね?

北中さん:ソングライターとしても「リトル・ウィング」「エンジェル」「ヴードゥー・チャイルド」「レッド・ハウス」などの名曲を残しました。60年代後半のロックがめざしたのは、既成の音楽からの自由でしたが、ジミ・ヘンはその潮流のシンボル的存在だったと言っていいでしょう。

ゴールデン横丁の仲間たち | 北中 正和 (きたなか まさかず)

https://goldenyokocho.jp/articles/669

1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。

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