時代を超えて愛されるABBAの「聞き手を選ばない楽しさ」

時代を超えて愛されるABBAの「聞き手を選ばない楽しさ」

大ヒットした映画『マンマ・ミーア』の続編が今週末、10年ぶりに公開されるなど、1982年の解散から30年以上たった今でもその人気は健在です。


本日の曲:ABBA - Mamma Mia

音楽がどんどん細分化されていく時代に、彼らはあえて「聞き手を選ばない」作品を作っていきました。

『マンマ・ミーア』続編が公開。再びABBAが鳴り響く

店番  :映画『マンマ・ミーア』のヒットから10年。この週末に続編の『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』が公開されましたね。

北中さん:『マンマ・ミーア』はギリシャの島を舞台に、小さなホテルを経営する母ドナ、その娘ソフィと婚約者スカイ、娘の父親を名乗る母の3人の元恋人たちを中心にした物語でした。

今回の続編では、ニューヨークでホテル経営を学ぶスカイがそのままニューヨークに残って働かないかと誘われます。しかしソフィはギリシャの島の母のホテルの新装開店で手いっぱい、母の手伝いのため島から離れられない。しかも彼女は妊娠している。ドナがソフィを妊娠したときはどうだったのだろう? そこで話はドナの青春時代へとさかのぼって……と映画は展開していきます。

店番  :元々はABBAの代表曲を網羅したミュージカルを映画化したんですよね?

北中さん:はい。前作では全編でABBAの曲が使われ、ABBAの人気復活のきっかけになりました。今回の音楽も、もちろんABBAの曲です。サントラ盤がすでに発売中で、イギリスでは7月末に1位になっています。

二つの映画を余裕で作れるほどたくさんあるヒット曲

店番  :「ダンシング・クイーン」くらいは誰でも知っていますが、ABBAにはそんなにたくさんのヒット曲があるんですか?

北中さん:あるんです。2組のサントラ盤では、タイトル曲の「マンマ・ミーア」や「ダンシング・クイーン」などいくつか重複する曲が入っていますが、大部分は別の曲です。ただし日本ではそれほど知られていない曲も含まれていますね。前作が成功したときから、映画会社はABBAには曲がたくさんあるので、続編を作りたいと考えていました。それでABBAのメンバーの了解も得て、準備を重ねてきたそうです。

店番  :ABBAの音楽がそのまま流れると思いこんでましたが、そうではないんですよね?

北中さん:はい。ABBAの曲ですが、歌っているのは出演者です。今回は、ドナの青春時代を演じるリリー・ジェイムス他の「When I Kissed The Teacher」や、ドナの母親役(ソフィの祖母)シェールの「悲しきフェルナンド」が早くも話題になっています。

店番  :トレイラーで見られるシェール、たしかに貫禄ですね。。

北中さん:お肌ぴかぴかつるつる。70歳超とは思えません。ドナ役のメリル・ストリープと母娘というほど実年齢は離れてないと思いますが……。

誰でも楽しめるメロディを作れる、すごい才能

店番  :それにしてもABBAの人気は根強いですね。ずっとこうだったんでしょうか?

北中さん:母国のスウェーデンでは超有名人ですから、グループとして活動しなくなってからも、おりにふれ話題を呼んでいましたが、世界的には80年代中期以降、過去のグループと思われがちでした。理屈で武装したロック中心のポピュラー音楽の世界では、彼らのような楽しいポップスは必要以上に軽く見られる傾向がありますからね。90年代に彼らを最初に再評価したのはイギリスでした。99年にミュージカル版の『マンマ・ミーア』が初演されたのもイギリスです。

店番  :彼らの人気の秘密はどんなところにあるんでしょうか?

北中さん:「ダンシング・クイーン」のころの彼らの音楽は、誰でも楽しめる健康的なものでした。音楽がどんどん細分化されていった時代に、彼らは最大公約数的な、聞き手を選ばない、親しみやすいメロディを作り続けました。

シリアスなロックが好きな人も、けっこう彼らの曲を口ずさんでいたくらいです。口で言うのは簡単ですが、それは大変な才能だと思います。難解なロックで知られるフランク・ザッパのような人も彼らのファンだったそうですよ。

フランス語をタイトルに使ったり(「ヴーレ・ヴー」)、「チキチータ」などをスペイン語ヴァージョンで発表したり、ナポレオンのウォータールーの戦いを引き合いに出して恋の争いを語ったり、各国のファンへのサービスも忘れませんでした。

楽しいメロディに隠された彼らの苦悩

北中さん:彼らは2組のカップルによって結成された4人組ですが、人気絶頂期に2組とも結婚生活が破綻しました。それを彼らのラヴ・ソングに重ねて聞いた人も多かったと思います。

店番  :うーむ、大人の関係というか対応というか。。
彼らは世界的にブレイクするまでにもけっこう苦労したと聞いていますが?

北中さん:下積み時代というほどではありませんが、試行錯誤の時期があったことは確かです。
1972年の第3回世界歌謡祭にベニー・アンド・ビヨルン名義で参加したとき、予選で落ちて本選に進めなかった話は、ABBAが成功してから洋楽関係者の間でよく話題になっていました。

店番  :えーっ!そんなこともあったんですねー。

2018年、再び4人が動き出します

店番  :最近は再結成の話題もありますね。

北中さん:歳月が昔の苦労を少しずついい思い出に変えていったんでしょう。そのへんは映画『マンマ・ミーア』の世界にも通じるところがあるような気がします。メンバーはこれまでプライベートに顔をそろえることがありましたが、活動再開には慎重でした。しかし今年ついに新曲をレコーディングしたそうです。タイトルだけはすでに発表されていて「I Still Have Faith In You」と「Don’t Shut Me」です。

店番  :どんな曲になるのか、楽しみです。

北中さん:来年には彼らの姿をホログラムで見せるライヴの企画もあるそうです。ですから近い将来、何らかの形で4人がそろってみんなの前に現れる可能性が高いのではないかと思いますよ。

ABBA - Mamma Mia

YouTube 提供:vevo


元々シングル・カットの予定はなかったものの、ABBAのオーストラリアのレコード会社から要請があって急遽リリースしたところ10週にわたってチャート1位に。その後、イギリスやドイツなど世界各国で1位と大ヒットしました。

ゴールデン横丁の仲間たち | 北中 正和 (きたなか まさかず)

https://goldenyokocho.jp/articles/669

1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。

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