欧米では60年代に生まれたロック・フェスが日本に根付かなかった理由

欧米では60年代に生まれたロック・フェスが日本に根付かなかった理由

来週末開催のサマーソニックやフジロックが始まった2000年前後まで、長らく音楽フェスが生まれては消える時代が続きました…。


次に注目のフェスは来週末開催のサマソニ

店番  :今年の夏フェスシーズンも中盤にさしかかってきましたが、次に来るビッグ・フェスといえば、やはり来週末開催のサマソニことサマーソニックでしょうか?

北中さん:ロック系ではそうですね。フジロックより少し遅れて2000年にはじまりましたが、どんどん規模が拡大して、国内最大級のフェスとして定着しています。東京と大阪で同時開催され、原則同じ出演者が両会場で入れ替わる「循環型」を日本に導入した最初のフェスです。どちらも都心から約1時間で行ける都市型のイベントですが、フェスですから、体力勝負であることに変わりないので、行くならそれなりの体力と準備は「必」です。

店番  :フジロックはイギリスのグラストンベリー・フェスティバルをヒントに生まれたそうですが、サマソニはどうなんでしょう?

北中さん:ウィキペディアでは、「循環型」はイギリスのレディング/リーズ・フェスティバルをモデルにしたとあります。

60年代には生まれていたイギリスのロック・フェス

店番  :レディングといえば、老舗のロック・フェスですよね?

北中さん:そうですね。運営母体はもともと名前のちがうジャズ・フェスティバルを開催していたのですが、1963年に初期のローリング・ストーンズなどブルース色の強いバンドが出演したら評判がよかったので、年々ロックの割合が増えていきました。1969年からロック専門になり、それまで転々としていた開催地も1971年からレディングに定着しました。

店番  :最初は開催地が毎年変わってたんですね。

北中さん:はい。ロックがポピュラー音楽の主流になったのと軌を一にして発展してきたフェスで、プログレ、メタル、パンク、オルタナティブ、ヒップホップなどなど、メインの出演者も旬に応じて変わってきました。リーズと二か所で開催というスタイルがはじまったのは1999年からですから、翌年サマソニがその方式を参照したのだとすれば、すばやい対応ですね。

衝撃的だったウッドストック・フェスティバル

店番  :日本ではロック・フェスティバルはいつ頃からはじまったんですか?

北中さん:1969年に東京の日比谷野外音楽堂などでロック系のアーティストが集まってコンサートを開いたのが先駆的なものです。大型のものでは単発ですが、1971年にピンク・フロイドが出演した箱根アフロディーテが最初でしょう。

店番  :その動きは、やはり海外のロック・フェスの影響を受けてはじまったんでしょうか?

北中さん:そうですね。ロック・フェスのはじまりは1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルと言われています。この成功によって、大手レコード会社がロックに本格的に力を入れはじめたんです。コロムビア・レコードの社長だったクライヴ・デイヴィスが、ここでステージを観てジャニス・ジョプリンのもとに飛んで行ったというのは有名な話です。しかし影響が大きかったのは1969年に40万人を集めて行なわれたウッドストックです。翌年記録映画が公開されて、音楽だけでなくロックをめぐる若者文化がすごいことになっているとみんなが驚いたのです。

日本でのロック・フェスの歴史は?

北中さん:日本のロック・フェスティバルはみんなウッドストックに憧れてはじまったと言っていいと思います。1974年に郡山で行なわれたワンステップや、それに続いたワールド・ロックもそうでしたが、継続できませんでした。

店番  :時期が早すぎたということでしょうか?

北中さん:それもありますし、発想のちがいもありました。日本では夢を追う形ではじまりましたが、英米の場合は最初からビジネスとして成立させたいという起業家が関わっていました。

店番  :意外とビジネスライクな成り立ちだったんですね…。

フェスはアメリカでどのように広まったのか?

北中さん:不思議ですが、アメリカではレディングのような老舗ロック・フェスは生まれませんでした。そのかわりブルースやジャズなどを土台にロックまで幅を広げた地域おこし型のフェスティバルが数多く行なわれています。

店番  :そういえばウッドストックは続かなかったですね?

北中さん:オルタナティヴ・ロックの祭典として90年代にはじまった全米巡回型のロラパルーザも長続きすると思われていましたが、財政的に破綻してしまいました。しかし、いまでは開催母体が変わって復活し、シカゴで毎年行われています。フランスのパリやブラジルのリオなど世界各地ヴァージョンも展開中です。

ロック・フェスの楽しみ方~サマソニ編

店番  :ロック・フェスに行くとすれば、注意点や楽しみはどんなところにあるんでしょう?

北中さん:フェスごとに性格がちがうので、まずそれをチェックして、どこに行くか決めたいですね。
たとえばサマソニは大物から新人までたくさんのアーティストが出演するので、ロックを中心にした洋楽の動向をチェックするのに便利だと思います。近年はアジア系のアーティストやアイドルにも門戸を開くなど、絶えず新しい傾向に目配りしていますからね。

店番  :出演者どうしのサプライズ共演とかもあるんでしょうか?

北中さん:2008年にアリシア・キーズがコールドプレイのステージに参加したような例もありますが、メインのステージはアーティストがそれぞれの世界観を打ち出すので、共演は意外と少ないかもしれません。小さなコーナーで若手のミュージシャンがセッションしていたという話は聞きますが。

サマソニはそうした意外性より、若手にいちはやくふれたり、ベテランの貫禄を味わったりするのに向いているのではないでしょうか?

たとえば第1回目の2000年にトップバッターで出演したミューズはその後スーパースターに成長していきました。2002年のガンズ&ローゼズの復活では、歴史に立ち会うこと自体が楽しみだったようですね。

MUSE & Brian Johnson of AC/DC - Back In Black

YouTube 提供:MUSE


こちらは昨年のレディング・フェスティバルでのMUSEとAC/DCのヴォーカリスト、ブライアン・ジョンソンの共演の様子。フェスならではの特別な時間を楽しめたら良いですね。

SUMMER SONIC 2018

http://www.summersonic.com/2018/

SUMMER SONIC 2018 公式サイト 2018年8月18日(土)・19日(日)の2日間開催! 東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ 大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

特集:夏フェス 初めてのサマソニ ハウツーガイド| ゴールデン横丁 | So-net

https://www.so-net.ne.jp/golden/gtunes/article/2018/201807/2018_special04.html

夏フェス サマソニ(サマーソニック)の歩き方を紹介。交通手段、服装、靴の選び方や手軽に行きやすい点などフェスとしての特徴を説明します。

ゴールデン横丁の仲間たち | 北中 正和 (きたなか まさかず)

https://goldenyokocho.jp/articles/669

1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。

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