【旧車図鑑】トヨタ・セリカGT-FOUR:身近なクルマがヒーローになる

【旧車図鑑】トヨタ・セリカGT-FOUR:身近なクルマがヒーローになる

このところのWRC(世界ラリー選手権)において、トヨタのヤリスが活躍しているという話を耳にしたことがある人は多いだろう。かつて国内ではヴィッツと呼ばれていた、ごくスタンダードな小型車は現行型にモデルチェンジする際、輸出名のヤリスに名前を変えた。そしてそれまであまり打ち出していなかった、ラリーを中心としたモータースポーツのイメージも強調するようになったのである。


身近なクルマがヒーローになる

特にクルマ好きというわけではない人たちからしたら、近所の買い物に使うようなコンパクトカーがなぜ急にスポーツカーのような扱いになったのか理解に苦しむかもしれない。しかし逆説的な言い方だが、ラリーというのは「身近なクルマが無茶苦茶カッコイイ」世界なのである。本来、メーカーがモータースポーツにおいてワークス活動をするのは、プロモーションが最大の目的だ。分かりやすく言えば、クルマをカッコよく感じさせて売ることがゴールなのだ。だからこそ、「身近なクルマがヒーローになる」のが大事なのである。

ラリーで活躍する日本のスポーツカーたち

キャリアの長いクルマ好きの諸兄であれば、好きなラリーマシンの1台や2台あるのではないだろうか。WRCなら、アウディ・クワトロ、ランチア・デルタ、ルノー・5ターボ…いくらでも例を挙げていくことができる。

サファリ・ラリーで活躍したフェアレディZ432もいいし、510ブルだってカッコイイ。いやいや、ランタボ、もうちょっと後の時代ならインプレッサやランエボの無双ぶりは外せない…。そう、少し前のラリーシーンにおいては、日本車が花盛りだったのだ。90年代前半にはF1のブームと同様に、青年誌が巻頭でペター・ソルベルグとインプレッサを特集したり、カルロス・サインツの駆るセリカをスポンサードして、TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)のステッカーを付録につけたりしていた。それぐらい、日本車がラリーで活躍していて、それが世間の耳目を集めていたのだ。

市販車と変わらぬマシンがラリーフィールドを駆け抜ける

ラリーカーの魅力のひとつに、市販車とそれほど変わらない佇まいのマシンが、ドライバーの信じられないようなテクニックによって、とんでもないスピードで踊るようにコーナーを駆け抜けていく姿がある。グラベルにせよターマックにせよ、狭い峠道や山あいの林道のような未舗装路などをただひたすら全開で走り抜け、時には宙を舞う。そして、そんなマシンと同じ車種(もちろん厳密には違うが)を購入したり、運転したり、あるいは街中で見かけたりすることができる。ラリーカーに惹かれた人にとって、これはとても嬉しい点だろう。前出のカルロス・サインツが1990年(平成2年)、トヨタにドライバーズタイトルをもたらし、1993年には日本車メーカー初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得した4代目・ST165型セリカもそんな1台だ。

セリカは最強のラリーウェポンだった

1987年(昭和62年)に始まったグループAでは、ランチア・デルタHFが圧倒的な強さを見せ、年間タイトルを獲得。以後1992年まで6年連続でマニュファクチャラーズタイトルに輝くという偉業を見せた。その間、日本のトヨタ、日産、スバル、三菱などもハイテク4WD+ターボで武装したグループAカーをWRCに投入。なかでもトヨタ・セリカとランチア・デルタのタイトル争いは熾烈で、この2台をモチーフにしたアーケードゲームも大ヒットした(余談だが、家庭用ゲーム機に移植されたこのゲームは、プレイステーションのライバルであったセガ・サターン初期のキラータイトルだった)。

グループAの既定では、メーカーに市販車として当時5,000台の製造を義務付けていて(1993年以降は2,500台)、かつ改造範囲も限定的である。つまり、ラリーマシンといえども市販モデルと近いということであり、裏を返せば市販モデルにラリーマシン同様の装備やデザイン、スペックが奢られるということである。市販車の性能がラリー参戦時に大きな影響を与えるのだからそれも当然だ。
5代目・ST185型のセリカGT-FOURに設定されたホモロゲモデル「RC」がまさにそれであり、通常モデルのGT-FOURはラリーイメージを踏襲するスポーツモデルとして人気を博した。ブリスターフェンダーによるワイドボディ化や、国内初となるトルセン式LSD(リミテッドスリップデフ)、一部モデルには油圧制御式のアクティブサスが装着されるなどラリーウェポンのイメージに違わぬ装備が与えられた。

WRCを2年連続完全制覇したセリカGT-FOUR

1992年の開幕戦、ラリー・モンテカルロに投入されたST185型セリカGT-FOURは、まさに市販車と変わらぬ姿でアルプス山脈のチュリニ峠を駆け抜けてみせ、ファンの心を鷲づかみにした。もちろんその戦果も輝かしいもので、翌1993年シーズンでは全13戦中7勝を挙げる快挙を成し遂げ、トヨタは日本車メーカーとして初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。翌年も連続してタイトルを奪取した。さらに1993年はユハ・カンクネン、翌1994年はディディエ・オリオールがドライバーズタイトルを獲得という、2年連続Wタイトル(マニュファクチャラー/ドライバー)でWRCを完全制覇という大偉業を成し遂げたのである。

1993年に6代目・T200型系にモデルチェンジしたセリカだが、翌1994年には新しいホモロゲモデルのST205型GT-FOURが登場。先代に比べワイド化され、丸目4灯というこれまでと全く違ったフェイス周りと、大きく開けられたエアインテークが印象的だった。そして先代ほどではないものの、ラリーフィールドで活躍を続け、トヨタの誇るフルタイム4WDスポーツとして多くのファンを魅了し続けた。製造は1994年(平成6年)まで続けられたが、モデルチェンジを以てトヨタのフルタイム4WDスポーツは一時中断となった。そして2020年(令和2年)、冒頭のGRヤリスの登場によってその歴史とラリーフィールドでの活躍が再び始まったのである。

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