【旧車図鑑】ホンダ・シティ:ホンダの理想と遊びゴコロが詰まったトールボーイ

【旧車図鑑】ホンダ・シティ:ホンダの理想と遊びゴコロが詰まったトールボーイ

1981年(昭和56年)に登場した初代ホンダ・シティは、それまで誰も見たことがなかったような「背の高い乗用車」だった。もともとホンダはユニークな設計の小型車を得意とし、軽自動車はもちろんのこと、1972年(昭和47年)に発売した1.2リットルクラスの初代シビックが世界中で爆発的にヒットしていた。


マンマキシマム・メカミニマムを明快に実現してみせた

そのシビックが1979年(昭和54年)に「スーパーシビック」と呼ばれた1.5リットルクラスの2代目にモデルチェンジすると、それまで初代シビックが担っていた1.2リットルクラスをカバーするリーズナブルな小型車が必要になった。しかし、シビックがあまりに売れたことから、軽自動車用の生産ラインをシビックに振り向けていたため、当時のホンダは一時的に軽自動車がカタログオフしてしまっていたのだ。ホンダとしては、軽自動車を求めるユーザーもカバーしつつ、初代シビックの穴を埋めることができ、それでいて初代シビックより進化した小型車が必要だった。

従来のホンダの軽自動車は、性能やデザイン性は優れているものの、価格が高めで室内はあまり広くなかった。そこで「背を高くする」という方法論で居住性の難点を解決してみせたのがライフ・ステップバンだったが、初代シティも、それまで乗用車でタブーとされていた「上屋を高くして室内を広くする」方法をとった。当時ホンダが提唱していた、居住スペースは最大限広く・メカ部分は限りなく小さくという「MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想」を、いちばん小さなクラスの乗用車で明快に実現してみせたのだ。言ってしまえばコロンブスの卵的な発想だが、それを分かりやすく形にしてしまうのがホンダらしいところだ。

合理性だけではない、初代シティの魅力

こういった高い合理性や設計思想だけでなく、初代シティには遊びゴコロがたくさん詰まっているという魅力があった。トールボーイスタイルと呼ばれた背高フォルムはそれだけでファニーな雰囲気を漂わせているが、そこに(汎用のランプではあるが)大きな丸目2灯のヘッドランプを組み合わせたルックスは、どことなくペットのような愛らしさを醸し出していた。そのため、小型で廉価な実用車を求めたユーザーだけでなく、クルマにライフスタイルや遊び感覚を求めた若者たちに圧倒的な支持を得ることができたのだ。もちろんそこには、多くの人の記憶に残っているであろう「ムカデダンス」のCMの力もあったことだろう。イギリスのスカ・バンドである「マッドネス」が、「ホンダホンダホンダホンダ…シティ!」と歌いながら踊るあのダンスを、子どもたちがマネしているのをよく見かけたものだ。それまで子どもがマネをして遊ぶようなクルマのCMなんてものは、ほとんどなかったと言っていいだろう。

リアゲートを開けて荷室に積むことができる折り畳みバイクの「モトコンポ」も同時に発売され、これを積んでドライブに行き、小回りの利くミニバイクで遊びまわる…なんていう新しい楽しみ方も提案された。実際にはこのモトコンポ、重量が40kg以上あったので荷室に出し入れするのはなかなか骨が折れるのだが、それでもこういった使い方を想像するだけでワクワクさせられる存在であることは間違いなかった。もっとも、シティを買うと付いてくる「オマケ」と誤解されてしまいがちで(購入すると当時の価格で8万円ほど)、結構ホンダディーラーで売れ残っていたようだったが…。

走りの楽しさも求めて進化を続けたシティ

もともとシティコミューターとして位置付けられていた初代シティ。しかし、前項のように実用車としてのシティユースだけでなく、若者たちのレジャーの足としても期待されるようになり、今度は動力性能に対するニーズも高まってきた。街中や近所をちょこちょこ走り回るだけならば不満もなかっただろうが、レジャーのために遠乗りをしたり、仲間たちで相乗りしたりすれば67馬力程度の1.2リットルエンジンではパワー不足を感じざるを得なかった。
そこでホンダは、デビュー翌年に思い切ったハイパワー化を施した「シティ・ターボ」を投入する。COMBAXエンジンと名付けられたER型1,231ccの4気筒SOHCエンジンは90mmという超ロングストロークと高圧縮比で低速トルクと低燃費を実現していたが、ここにターボチャージャーと電子燃料噴射装置「PGM-FI」を搭載。ノンターボで67馬力程度のところを100馬力までスープアップし、スポーツカー顔負けの走りっぷりをみせた。
最高速度は165.9km/hとそこそこだったが、これは低速域や加速性能を重視したギアリングの設定によるもの。ゼロヨン(0~400m間での加速タイム)は僅か16.26秒という、2リットルクラスのスポーツカー並みの性能を誇った。
シティ・ターボは内外装も走りイメージを強く演出しており、ボンネットには大型化されたエアチャンバーを避けるパワーバルジが追加。内装もバケットタイプのスポーティなシートやインパネ、3本スポークのステアリングなどが奢られた。こうなるともう、シティはカッ飛びライトウェイトスポーツといったほうがいい、若者たちにとってたまらない存在となった。

さらなる進化を遂げて誕生した「ブルドッグ」

シティ・ターボは内外装にも遊び心をちりばめつつ、高い性能を誇る「ボーイズレーサー」として大変な人気を博したが、さらに翌1983年(昭和58年)になるとインタークーラーを追加した「ターボⅡ」が追加された。シティ・ターボの魅力をさらに高めるべく、ボンネットのパワーバルジを大型化しボンネットパネルと一体化、ダイナミックフェンダーと称する大型のブリスターフェンダーを前後に装備、エアロバンパー化に加え開口部を大きくするためライセンスプレートを助手席側にオフセットし、足元もぐっと引き締めた。こうなるともう見た目はメーカー謹製のエボリューションモデルのような様相で、一気に迫力を増した。そうはいっても大きな丸目2灯の愛らしいフェイスと背高フォルムにぐっと踏ん張ったような佇まいのアンバランスさがあり、愛称の「ブルドッグ」はまさにピッタリの名前だった。
犬のほうの「ブルドッグ」はずんぐりした体型やファニーフェイスとは裏腹に、闘牛で牛と格闘するために品種改良されていった犬種である。賢く人当りもいい犬だが、いざとなったら大きな牛にも負けない強さを誇る…というブルドッグの性格は、まさにシティ・ターボⅡの特徴を表しているニックネームだろう。
いざとなったら…という点では、エンジン回転数が3,000RPM以下の時にアクセルを全開にすると10秒間だけ過給圧が10%アップする「スクランブルブースト」という機能も装備されていた。この秘密兵器感満載のアイテムも、男子の心をくすぐったのは言うまでもない。

ホンダ・シティ(初代・AA/VF型)の画像アーカイブ【旧車】

https://goldenyokocho.jp/articles/1529

ゴールデン横丁スタッフが取材で集めた画像を車種別・世代別にまとめて公開します。このページは「ホンダ・シティ(初代・ AA/VF型)」の画像アーカーブです。新着画像は随時追加します。

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