日野が自社開発した唯一の乗用車の初代モデル

・モデル名 :コンテッサ900(初代・PC10型)
・メーカー名:日野
・年式 :1963
・撮影場所 :第8回 石和温泉郷クラシックカーフェスティバル2018
・撮影者 :ミノ
商用車だけじゃない、日野自動車が誇る美しい乗用車

日野自動車といえば、バスやトラックなどの商用車メーカーというイメージが強い。普段トラックなどを意識して見ない人には、日野という自動車メーカーそのものが印象が薄いかもしれないぐらいだ。
もっとも、最近だと「トントントントン、日野の2トン♪」とリリー・フランキーが歌うCMを目にすることもあるから、トラックのメーカーなんだな、というぐらいは知っている若い世代も増えてきただろう。
「若い世代」といったが、日野が乗用車を作っていたことを知っているとなると、やはり一定の年齢以上の世代になってしまうだろう。
旧車イベントに出かけるとかなりの確率で出会うことができる、日野コンテッサ。
伯爵夫人、の名の通り美しいセダンとクーペは、イベントの花形だ。
そんなコンテッサも、初代が1961年~65年、2代目が64~67年と、ごく短い期間しか作られていない。それも、半世紀ほど昔の話。
そしてその1モデルだけが、日野の開発・製造した唯一のオリジナルの乗用車なのだ。

初代コンテッサ900(PC10型)は、ルノー4CVのライセンス生産を行った「日野ルノー」の製造を通じて得た経験を活かして開発した、日野オリジナルのRRタイプの乗用車だ。
イベント等では2代目となる「コンテッサ1300(PD100型/300型)」を見かけることはあるが、初代ともなるとかなり珍しい。
PC10型は4ドアセダンのみの設定で、RR車らしいフロントグリルレスのスタイルや大型丸目2灯、テールのフィンなどが特徴だ。これまたRR車の特徴ともいえる、リアに大きく切られた放熱用のルーバーも2代目と相通じるデザインだ。
基本的なレイアウトは日野ルノーを踏襲していて、ルノーエンジンを少し拡大した893cc・35馬力のエンジンを積む。リアエンジンではあるがコラムシフトを装備しているのも面白い点だ。
RR車をわざわざコラムシフトにするには、リンケージの取り回しなど結構面倒なはず。日野ルノーに続いてタクシーでの使用も多かったことも、コラム化が施された理由の一つだろう(スポーティモデルのコンテッサ900Sはフロアシフトだ)。

日野ルノーの後継といっても、大幅に近代化が施されている。
左右のリアドア後端に設けられた大型エアインテークは、まるでその後のスポーツカーのようだ。
テールフィンの後ろに設けられた蝋燭型のテールランプは、アメリカ車からの影響も見て取れる。
なにより、4CVよりグラスエリアが大きく広がったことで、ルーミーで明るい車室を実現しているのがポイントだ。このあたりも、タクシー業界から人気が高かったポイントのひとつだろう。
ちなみに仏本国のルノーでは4CVの後継はドーフィンになるが、5年ほど後にデビューしたコンテッサは、より排気量が大きくボディは小さめで直線的なデザインを採用。ドーフィンより少し近代的になっている。
コンテッサは「伯爵夫人」の意なのは先にも触れたが、そのドーフィンは「皇太子」なので、うっすらと関係があるのかもしれない。
面白いのは、オプションで用意されていた電磁式自動クラッチの「シンコーヒノマチック」。これはポルシェのスポルトマチックにも似た仕組みで、とても使いやすかったと言われている。
しかもポルシェより日野のほうが実車に搭載したのが早かったというから驚きだ。
リアグラスに貼られた「暖房車」というステッカーが、なかなか新鮮だ。
