ジウジアーロのデザインをベースにしたサブロクパーソナルクーペ

・モデル名 :フロンテクーペ(LC10W型)
・メーカー名:スズキ
・年式 :1972
・撮影場所 :サクラオートヒストリーフォーラム2018
・撮影者 :会長
3代目フロンテ(LC10-Ⅱ型)の派生モデルとして登場

ホンダN360の発売をキッカケに、サブロク軽の世界では各社がパワーを競い合うようにしてハイパワーなスポーティモデルを次々とデビューさせた。
そんな中、スズキが71年に3代目フロンテ(LC10-Ⅱ型、フロンテ71W)をベースにしたクーペバージョンを発表。折からのブームで人気を集めていたスーパーカーを彷彿とさせるような低く戦闘的なフォルムに、日本中のクルマ好きたちの目が釘付けになった。
フロンテクーペのデザインは、あのジョルジェット・ジウジアーロがスケッチした原案をもとに、スズキ社内のデザインチームがアレンジして作り上げた。
こういうとジウジアーロがいかにもなスポーツクーペを描いたように思いがちだが、実は彼のスケッチはどちらかというとトールボーイスタイルとでもいうような、背が高めで居住性を確保したシティ・コミューターのようなものだった。
スズキのデザインチームは、このスケッチの全体感やフェイス回りのデザインなどを生かして、そのまま上屋を押し下げてクーペにしてしまったような感じなのだが、これが不思議なぐらい完成されたデザインになっている。
低く構えたフェイス回り、強く傾斜してノーズからルーフまで流れるようなライン、三角窓がなくサイドウインドウのグラフィックも大きく、キックアップしたリアピラーの根本など、伸びやかなデザインはまさにスポーツカーのそれだ。
トールスタイルのスケッチから上屋を押し下げたといったが、ルーフの高さは約1,200ミリと当時の軽自動車では最も低い数値だった。
デビュー当時は2シーターで、「ふたりだけのクーペ」というキャッチコピーが若者たちの心を惹きつけた。だがやはり、自家用車にはリアシートを求める人が多かったようで、注目はされるものの売れ行きはちょっと厳しかった。
その後、ユーザーの要望に応えるかたちでプラス2のリアシートが設けられると、とたんにフロンテクーペは爆発的な人気になったんだ。
スタイリッシュで経済的でそこそこ実用性もある、マイクロクーペ。人気が高かったのもうなずけるね。
ボンネットが黒く塗装されているのは、当時流行ったモディファイのひとつだろう。明るい塗色の場合、太陽光が反射するのを防ぐために黒く塗装するのがよいとされ、メーカーがオプションで用意している車種もあったね。



