津村順天堂「中将湯温泉」にバスクリンの気概を知る
一発目は津村順天堂。
そう、バスクリンで有名なツムラの前身。
以前、庶民文化研究所に町田忍所長を訪ねたときから、ゴル横取材班がずっと気になっていたのがこの看板。インパクト濃いめである。
「中将湯温泉」というのは、津村順天堂が初めて売り出したと言われる婦人薬「中将湯」が入った入浴剤。薬の回だと言うのに、いきなり薬じゃないのをピックアップするところがさすが町田さんである。まさに豊富な人生経験。
婦人薬の「中将湯」は、中将姫という能や浄瑠璃で演じられる悲劇の皇女の伝承に由来し、津村順天堂創業者の母の家に伝わる家伝薬がもとなのだとか。
「中将湯温泉」の看板をよく見ると「男女一切の病気に」と書かれており、なんとも全知全能感を与えてくれるが、「身体の冷え」を退治するあたり、今のバスクリンの気概を見た気がする。
余談だがバスクリンは現在、ツムラから独立し、株式会社バスクリンとなっている。入浴剤がひとつの会社になるというのだからすごい!
蛇だ!元気だ!漲るパワー!は気のもの?

さて、2発目は「蛇」。
薬の回だと言うのに、町田さんたら今度は「素材」でまとめてくれた。
いわゆる漢方などで欠かせないのが蛇をどうにかした素材。
今でもマムシエキスなどがあるように、主に精力剤などで使われることが多い。
当然、昭和の時代も蛇のなにがしかを使った薬がいくつもあった。
そして、そうした薬を取り扱うお店の店頭がこんな感じである。
ひと目見て蛇とわかるショーウインドウ。インパクト濃いめである。
ちなみに、庶民文化研究所の所長、町田さんは実際にコブラの粉末を飲んだことがあるらしい。
強精剤という触れ込みだったが、これといって「元気が出た」ということはなかったらしい…。町田さん曰く「気の問題だろう」とのこと。
蛇つながりだろうか…。ショーウインドウにはこっそりと毒蝮三太夫さんの姿が確認できる。蛇の薬だから毒蝮…。
猿からつくる「猿頭霜(えんとうそう)」

続きまして「猿」。
猿の頭を黒焼きにして、それを粉末状にして飲むものらしい。
名を「猿頭霜(えんとうそう)」という。
「怪しき薬」シリーズの三発目にしてようやく薬である。
「猿頭霜」の効能は「精神的な病気」全般らしい。
頭の中であれこれ想像して悩むのが人間だから、頭を飲み込んだら精神的に落ち着くこともあるかもしれない。しらんけど。
ちなみに、こちらに対する町田さんの案層は「単純な結びつけだなぁ」だそうだ。さもありなん。
役行者由来の「陀羅尼助(だらにすけ)」は土蔵造りの店舗で売られている

「怪しき薬」の回だと言うのに、最後は怪しくない伝統薬「陀羅尼助(だらにすけ)」。胃腸薬だ。
このいかにも歴史ある土蔵造りの店舗。こちらはかつて役行者から伝えられたとされる「陀羅尼助(だらにすけ)」を販売している奈良県吉野のお店。
こうした伝統薬を売る店舗にはしばしばこういった土蔵造りの店舗があるらしい。
1300年の歴史を持ち、かの役行者が伝えた陀羅尼助は胃腸の諸問題全般に効果を発揮するらしいので、二日酔いなどの胃のむかつきに悩まされているオヤジはぜひ飲んでみてほしい。
きっとスッキリ回復する…はずである。
深くて、ちょっぴり面白い薬の奥深い世界。
さらに詳しく知りたい方は、ぜひ庶民文化研究所所長・町田忍著「懐かしの家庭薬大全」という本を読んでもらいたい。
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ありとあらゆる庶民文化に精通し、膨大なコレクションとエピソードをお持ちの「庶民文化研究所」所長、町田忍さん。 昭和レトロそのもののような町田さんの研究所にお邪魔し、膨大なコレクションから懐かしいアイテムをピックアップ。懐かしいエピソードや知られざる裏話、さらに華麗なる交友録までお届けします。