【旧車】最高速度は時速302キロ!打倒カウンタックのため誕生したフェラーリ512BB

【旧車】最高速度は時速302キロ!打倒カウンタックのため誕生したフェラーリ512BB

1970年代のスーパーカーブームで、カウンタックと並び当時人気の頂点だったフェラーリ512BB。公道最速の座を死守すべく誕生した、フェラーリのフラッグシップモデルだ。その美しいベルリネッタの魅力に迫る。


社会現象だったスーパーカーブーム

日本に最初のスーパーカーブームが訪れたのは、1970年代前半から半ばにかけてのこと。「最初の」と断ったのは、その後も何度かスーパーカーが注目された時期があったのだが、一般的に「スーパーカーブーム」という際はこの70年代のブームのことを指すからだ。熱烈なクルマ好きの間のブームではなく、世間一般の人たちもブームが来ているということを感じるレベルの大きなムーブメントだった、70年代のスーパーカーブーム。ただ単にエキゾチックな輸入高級スポーツカーが注目されたのではなく、これらを主役とするショーやイベント、あるいはテレビ番組、さまざまな関連グッズ(キャラクター商品)が企画・販売され、その多くに人々が熱狂した。もはや社会現象といえるレベルのブームだったのだ。そしてそのブームの頂点にあったのが、ランボルギーニ・カウンタックとフェラーリ512BBだった。

永遠のライバルによる最高速度の競い合い

70年代のスーパーカーブームにおいてランボルギーニとフェラーリを語る時、それぞれが公称する最高速度のことは避けて通れない。レースの世界での歴史を持ち、キング・オブ・スーパーカーといわれたフェラーリのフラッグシップ、512BBは「302km/h」という当時公道最速のスペックを誇った。一方、新興勢力であり端から打倒フェラーリを標榜して登場したランボルギーニの市販車第2弾であるカウンタックLP400は、最高速度300km/hとされていた。
LP400は1973年(昭和48年)の登場で、512BBは1976年(昭和51年)。しかも512BBのベースとなった365GT/4BBのスープアップ版で、そもそも365自体もカウンタックのデビューから半年後にプロトタイプが発表されたという後発組だ。今でいうベンチャー企業のようにいきなりスターダムにのし上がってきたランボルギーニに対し、先行するフェラーリが対抗意識をむき出しにしていたのは想像に難くない。当然、どちらのマシンも当時としては世界最高の性能であったことは間違いない。もっとも、両方とも実際にはそれほどのスピードが出るということはなく、あくまでカタログ上の表記だった。そんなことはツユ知らない日本の子どもたちは、この2km/hの差を巡って口角泡を飛ばすクチプロレスをしたものだった。

512BBのベースとなった初代「365GT/4BB」

フェラーリ512BBがデビューしたのは、1976年(昭和51年)のこと。そのベースとなった365GT/4BBのマイナーチェンジ版という位置付けだった。当時非常に厳しくなりつつあったアメリカの排ガス規制に対応するため、排気量アップを伴うチューニングと各部の材質の見直しおよびリデザインが施されたのだ。基本的な設計は同じだが、365GT/4BBは高価な素材だったFRPやマグネシウムを多用し高コストだったため、多くをスチールやアルミに置き換えも行われた。結果的に重量増となったが、排気量アップによるトルク増大、重量配分の変化もあり扱いやすさが向上した。

365GT/4BBはフェラーリのフラッグシップモデルで、フロントエンジンモデルだった365GTB/4(通称デイトナ)の後継として1971年(昭和46年)に販売が開始された。1973年の販売開始時点で「最高時速302km、最高出力385馬力」を公称していた。国内で自動車雑誌等による検証によれば、トップスピードはおよそ280km/hほどだったといわれている。

BBとはベルリネッタ・ボクサー(Berlinetta Boxer )の略で、2ドアクーペ・水平対向エンジンを意味する。ただし実際のエンジンは水平対向ではなく、デイトナのV12を180度に広げたV型である。これをトランスミッションの上に重ねた「イシゴニスレイアウト」となっている。イシゴニスレイアウトはイギリスの旧ミニのためにアレックス・イシゴニスによって開発された方式で、エンジンとトランスミッションの全長を短くすることができるため、狭いエンジンルームに効率的に収めることができる。ミッドシップレイアウトの場合、これによって重量物を可能な限り車体の中央に近い位置に置くことができるのだが、重量物であるエンジンが高い位置にマウントされることとなり、重心点が高くなってしまうというデメリットもある。この点においてトランスミッションをエンジンの前側に置き室内に張り出してしまう方式を採って低重心を保ちハンドリングを重視したのが、カウンタックだ。さらに言うと、同じミッドシップとはいえ後軸近くに重心点が来るBBと、前後軸上に来るカウンタックでハンドリング性能はかなり異なってくる。
このレイアウトの方針によりカウンタックは居住性や乗降性に難がでたため、回避策としてあの特徴的な跳ね上げ式のドアを採用することとなり、一方フェラーリは比較的ルーミーな室内を確保することができ、本革をふんだんに使ったシンプルでありつつもゴージャスなコクピットを実現することができた。このあたりの差は両社の考え方の違いが表れている点であり、それぞれの魅力のひとつでもある。

5リッター化されて「512」に

フェラーリはこれまで、1気筒あたりの排気量を車名とする慣習を採っていたが、このモデルでは「5リットル12気筒」のBBというように変更になっている。4390ccだった365GT/4BBから552ccスープアップし4942ccとなったが、出力は公称380馬力/7,200rpmから360馬力/6,800pmへダウン。先にも述べたようにトルク重視になり低回転域での扱いやすさが向上したが、最高速度は公称302km/hから変更がなかった。このあたりは当時のおおらかさでもあり、スーパーカーの持つドラマチックなエピソードともいえるだろう。
365GT/4BBと512BBは非常に似通った外観をしているが、いくつかのデザイン変更点で見分けることが可能だ。512BBではフロントにチンスポイラーが装備された他、テールランプが3連式から少し大型化された2連式に変更、マフラーも3×2の6本出しから2×2の4本出しになった。リアのタイヤハウス直前に設けられたブレーキ冷却用のNACAダクトなども識別ポイントとなる。
512BBはデビューした1976年から1981年までの間に929台が製造され、その後トリプルチョークの4連ウェーバー・キャブレター装備からインジェクション仕様に変更された512BBiへと進化。1984年には、次の世代のフラッグシップであるテスタロッサにバトンタッチしたのだった。

関連する投稿


【旧車図鑑】フォルクスワーゲン・ゴルフⅡ:小さくてキビキビ走るゴルフは、身近なガイシャだった

【旧車図鑑】フォルクスワーゲン・ゴルフⅡ:小さくてキビキビ走るゴルフは、身近なガイシャだった

1980年代後半から90年代前半頃に販売されていたクルマは、これまでヒストリックカーとか趣味の旧車と呼ばれるような対象として扱われることはあまり多くなかった。クルマが高嶺の花というような時代でもないし、クルマの品質も格段に良くなり始めた頃だからついこの間まで現役で走っているクルマも多かった。見かける台数も多くて珍しくもなんともない…なんて思っていたこの頃のクルマだが、ここ数年で急激に見かける機会がなくなってきたのではないだろうか。


【クルマニアックイズ】412本目

【クルマニアックイズ】412本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!


【クルマニアックイズ】355本目

【クルマニアックイズ】355本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!


【旧車図鑑】トヨタ・セリカGT-FOUR:身近なクルマがヒーローになる

【旧車図鑑】トヨタ・セリカGT-FOUR:身近なクルマがヒーローになる

このところのWRC(世界ラリー選手権)において、トヨタのヤリスが活躍しているという話を耳にしたことがある人は多いだろう。かつて国内ではヴィッツと呼ばれていた、ごくスタンダードな小型車は現行型にモデルチェンジする際、輸出名のヤリスに名前を変えた。そしてそれまであまり打ち出していなかった、ラリーを中心としたモータースポーツのイメージも強調するようになったのである。


【クルマニアックイズ】348本目

【クルマニアックイズ】348本目

【クルマニアックイズ】348本目


最新の投稿


スカイラインGT-R - 第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32

スカイラインGT-R - 第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32

第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32も、そろそろ旧車とかネオクラシックと呼ばれる世代になってきたね。


モルタル住宅

モルタル住宅

昭和を感じる生活用品や、家電、建物など、庶民文化研究所所長 町田忍画伯が描くイラストコレクション「昭和レトロ画帖」。今回はかつてよく見た建築資材モルタルを利用した「モルタル住宅」についてご紹介。


【クルマニアックイズ】430本目

【クルマニアックイズ】430本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!


空の旅のお供。航空会社のアメニティその1 マッチ・石鹸・絵葉書

空の旅のお供。航空会社のアメニティその1 マッチ・石鹸・絵葉書

日本国内はもちろん、遠く海外まで我々を運んでくれる究極の移動手段、飛行機。その機内で手に入るアイテムが、各航空会社で配られるアメニティだ。今回は様々な場所に移動している庶民文化研究所所長・町田忍さんに空の旅のアメニティを紹介してもらった。


【クルマニアックイズ】429本目

【クルマニアックイズ】429本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!