赤い霊柩車はドラマの中だけじゃない

富山県、新潟県、そして北海道は函館市。これらの街では黒い霊柩車ではなく赤い霊柩車が走っていた。
ではなぜ赤い車体なのかというと、そこには霊柩車の歴史が絡んでくる。なんでも昔は人が亡くなると、装飾を施した輿に乗せて人の手で運んでいた。そのときに輿に赤い着色を施していたそうだ。そうした伝統を、運ぶものが車になってからも反映して、赤い霊柩車が出来上がったのだとか。一節には赤は極楽浄土を表す色とも言われている。
そんな赤い霊柩車だが、我々一般人のイメージからすると、2時間ドラマで有名な「赤い霊柩車シリーズ」だろう。そのドラマで不吉を告げるのはこの「赤い霊柩車」の仕事だ。本来は極楽浄土というありがたいものを表すのに、イメージは不吉の象徴というのは、なんとも不思議な話だ。
とはいえ、いまではそもそも宮型霊柩車自体が数を減らしている。宗教選択の多様化やら、あのいかにもな見た目がイヤとかいろいろな理由はあるけれど、最近の主流は洋型と言われるステーションワゴンなどを改造して作られるシンプルな霊柩車だ。
あまり縁起のいいものではないかもしれないが、霊柩車もまた紛れもない昭和レトロなものになっているのであった。

ありとあらゆる庶民文化に精通し、膨大なコレクションとエピソードをお持ちの「庶民文化研究所」所長、町田忍さん。 昭和レトロそのもののような町田さんの研究所にお邪魔し、膨大なコレクションから懐かしいアイテムをピックアップ。懐かしいエピソードや知られざる裏話、さらに華麗なる交友録までお届けします。