117クーペの後継車として最先端のデザインをまとってデビュー

・モデル名 :ピアッツァXE(初代・JR130型)
・メーカー名:いすゞ
・年式 :1988
・撮影場所 :お台場旧車天国2017
・撮影者 :会長
ジウジアーロのスタディモデルがほぼそのまま生産された

いすゞといえば旧車ファンには117クーペが大変に人気が高いけど、その117クーペの後継車として同じくイタリアの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロのデザインでデビューしたのがこのピアッツァだ。
もともとはアウディのコンポーネントを使ったスペシャリティカーのスタディモデルとして海外のモーターショー等に出展されていたが、なんらかの経緯でベース車がジェミニに変更になり、その後そのままいすゞから発売されることになったという背景がある。
鬼才の呼び声も高いジウジアーロの独創的なアイデアが多数盛り込まれたスタディモデル(プレゼンテーション用のショーカー)は、ほぼ忠実に市販車の仕様に落とし込まれた。
これはかなり珍しいケースで、当のジウジアーロもあまりの忠実さにかなり驚き感激していたという。
モーターショーに展示されていたスタディモデルが市販車になったときって、大概の場合はそのスタディモデルらしい「とんがった」部分はより現実的にアレンジされてしまうことがほとんどなのは誰もが感じるところ。
ところがピアッツァに関しては、いすゞがその製造技術の限界に挑みさまざまな工夫を凝らして現実のものとしてしまったのだ。
全体に丸みを帯びたフォルムに徹底したフラッシュサーフェース化、半目開きの可動式カバーを付けたセミリトラクタブルライトなど、国産車にはない上品なデザインは、カーデザイン界をけん引するジウジアーロの最先端デザインだ。
ところが当時の国産車はまるで折り紙細工のようなシャープでエッジの効いたラインが特徴で、とにかくカクカク路線が人気だった。
そんな中でピアッツァは話題性はものすごいものの、実際の販売はイマイチ伸び悩み、いすゞが暴走した失敗作とまで言われるほどだった。
その後、国産車のスタリングが急激に曲線基調にシフトしはじめると、2周ぐらい先を行っていたピアッツァが俄然再評価されるようになったんだ。
早い話が、当時の日本の感性では、最先端のカーデザインモードに追いつくことができなくて、ちょっと余裕が出た頃に理解されるようになったということだろう。
とんがっているのはデザインだけではなく、内装も最先端のデジタルメーターやメーターナセル両側に配置されたさまざまなサテライトスイッチなど、最新の技術や新しいギミックがてんこ盛りだ。
ちなみにサテライトスイッチは「ハンドルから手を離さずあらゆる操作ができる」という優れものなのだけど、慣れないと正直、癇癪を起こすといわれているほど独特なレイアウトになっているよ。


