ソニー スカイセンサー5900 カタログ

ソニー スカイセンサー5900 カタログ

家電蒐集家松崎順一さんが考古学的アプローチで昭和時代の様々なカタログを読み解くコーナー。今回は今でも謎の紅茶キノコが流行った1975年のソニーのスカイセンサー5900のカタログを取り上げます。


夢の待ち受け受信を可能にしたスカイセンサー5900は短波放送の魅力を倍増させた。

BCLは50代後半以上の男性なら一度はやったことのある趣味だと思う。携帯電話もパソコンも無い時代、海外から飛んで来る電波は男のロマンの塊だった。そのBCLのブームが始まったのが1972年頃からだった。このプロダクト考古学の中でもナショナルのクーガ、プロシードは紹介してきたがソニーは殆どなかったように思っている。ICF-5900はスカイセンサーの誕生から初の短波直読を可能にした、歴史的な製品だった。そしてそのメカニカルなデザインは今見ても美しく全く色褪せていない。そのため今でも愛好者は多く、個人取引でもコンディションの良いものは高額で取引されている。筆者も当時憧れの1台だった。今回はICF-5900の単品カタログをみてみよう。

表紙はICF-5900の斜め横からのアングルで撮られた写真で、一番美しく見えるポジションかもしれない。ICF-5900のアンテナはラテカセのジャッカルと同じフィルムレバータイプで、レバーを引くとアンテナがポップするユニークなアンテナだ。また、大きなキャプションの通り、ICF-5900の売りは短波の10キロヘルツ直読で、クリスタルマーカーを使い徐々に周波数を合わせていくプロセスが楽しかったのである。下の方には笑い翡翠の声がインターバルシグナルだったラジオ・オーストラリア推薦の文字もみえる。

表紙をめくると現れるのが、当時のベリカードだ。筆者も現在持っているものも何枚かある。また、当時日本語放送をしてなかったレアな放送局もあり、今となっては大変貴重な写真だ。そしてその下には短波放送受信の魅力が書かれている。インターネットがなかった時代、誰よりもいち早く情報を得られるのが一番楽しかった記憶がある。下の方にSINPOコード表記も見られる。

このページから3ページが見開きでつながっている。そして70年代の家電カタログでよく見られた分解イラストが2ページに渡って全面で表現されている。筆者も中を開けたことがあるが
当時はトランジスタも抵抗、コンデンサーも大きく、基盤いっぱいに半田付けされたイラストは実に壮観だ。このギッシリ詰まったメカを見るだけで細かいキャプションを読まなくてもICF-5900の高性能さが伝わってくる。ACアダプター込みで27,800円という価格も、当時としては購入し易い設定だと思う。

そして見開きの中央は分解イラストの上にメインの操作部分の写真が載っている。メインダイヤルと中央に鎮座する大型のスプレッドダイヤルの存在感は5900の一番の魅力だろう。さらにBFOも装備し、SWL(主にアマチュア無線を聴く趣味)も可能で、まさに電波をわしづかみできるラジオだ。

こちらのページはこれでもかと、ICF-5900のスペックが羅列表記されている。クリスタルマーカーの使い方も細かく書かれていて思わず試したくなってしまう。また、他のカタログでも使われているのがSINPO55555という表記だ。55555とは最高の受信状態のことでBCLにとって受信報告書にいちばん書きたい数字だった。

最後のページはオプションが載っているが、ICF-5900は短波受信が命の人向けで
当時これらの製品を繋いで楽しんでいた人は少なかったように思う。ただ、その下に載っている外部アンテナは誰もが欲しかった製品だと思っている。そしてICF-5900には後期型もあり、当時の人気度が分かるのだ。


出典: ソニー株式会社「スカイセンサー5900」単品カタログ (1975年)

ゴールデン横丁の仲間たち | 松崎 順一(まつざき じゅんいち)

https://goldenyokocho.jp/articles/676

家電蒐集家・デザインアンダーグラウンド工場長。1960年生まれ。インハウスデザイナーを経て2003年よりデザインアンダーグラウンドを設立し活動を開始。近代家電製品の蒐集・整備・カスタマイズ等を手掛ける。近年は特にデジタル世代へのメイド・イン・ジャパン家電の持つ魅力をカルチャーとして伝える活動をイベント、執筆等、広範囲に展開中。

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