ソニー ウォークマン/テープレコーダー 総合カタログ (WALKMAN 10th ANNIVERSARY BOOK)

ソニー ウォークマン/テープレコーダー 総合カタログ (WALKMAN 10th ANNIVERSARY BOOK)

家電蒐集家松崎順一さんが考古学的アプローチで昭和時代の様々なカタログを読み解くコーナー。今回は前の元号である「平成」がスタートした1989年に発売されたソニーのウォークマンカタログ兼10周年アニバーサリーブックをとりあげます。


初代ウォークマン発売から10年間は日本のカルチャーの大転換期だった。

以前にウォークマンIIのカタログを取り上げたことがあるが、今回は初代ウォークマンが1979年に発売されてから10年経った1989年のウォークマン・カタログをご紹介します。初代が発売された70年代は既にオーディオがブームになっており、ホームオーディオセットは皆持っていた。またポータブルオーディオもラジカセが全盛の時代で、オーディオに関してはなに不自由がなかった時代だった。そんな中に突如登場したのがソニーのウォークマンだった。ウォークマンはそれまでのオーディオの概念を変え、新しい時代のアイコンとして愛され続けた。今回紹介するカタログは初代の誕生から10年間の世の中の移り変わりがウォークマンの歴史と共に紹介されている貴重な資料になっている。今回はそんなちょっと異色な10周年記念カタログをみてみよう。

表紙はウォークマンIIが化石になったようなシンボリック的なイメージだ。よく見ると下には「GOLD CASSETTE PLAYER」という銘板もある。実質このウォークマンIIが完全オリジナルという意味でもソニーがシリーズの象徴しているように思っている。

中を開くとまず初めにウォークマンが創った10年史がイントロダクションとして簡潔にまとめられている。「音楽を解放した」という表現が実にぴったりだ。それぞれの年代のカタログも懐かしい。

このページから歴代のウォークマンに沿って時代背景が順に紹介されている。スタートは初代TPS-L2だ。そしてカジュアルファッションが流行る中で大ヒットしたのがボートハウスのトレーナーだ。愛用されていた方も多いと思っている。

そして翌80年から81年には完全オリジナルのウォークマンWM-2が登場し、巷では漫才ブームが起こる傍ら、ライフスタイルに遊び感覚が加わり新たなカルチャーとして定着していった。ルービックキューブもヒットしたアイテムだったが不器用な筆者には向いてなかった。

82年にヒットしたE・Tの影響もあって宇宙への憧れが再燃した反面、自分自身の健康管理にも目覚めた年代だった。また、83年に発売されたウォークマンWM-20も驚きのカセットケースサイズになり小型化が更に進んだ頃だった。

85年といえばバブル景気がスタートした年代だ。誰もが人と違う個性を求め始めた頃に「見栄講座」はまさにぴったりの本だった。ウォークマンも他社製品と違う個性が求められ、登場視したのが充電式だった。

87年頃はスニーカーブームやフィットネス志向でリーボックを始め、スニーカーが大人気となり、ファッションにも取り入れたコーディネイトが新しかった。ウォークマンもシンプルで多機能をリモコン一つで操るスタイルが人気を呼んだのだ。

そして88年にはソウルオリンピックを見るためにBS放送の普及率が一気に上がった。
さらにFM局の開局ラッシュが音楽のグローバル化を形にし、ウォークマンもワイヤレス化により一層洗練された頃だった。

1989年のウォークマンのラインナップだ。使用目的によって様々なバリエーションが存在している。それはバブル絶頂期という背景があってこそなのだと思っている。

最後のページには非売品の10周年記念モデルのプレゼントが載っている。本物は見たことはないが筆者的にはあまり物欲が湧かない。ただこの時代を象徴しているウォークマンである事は確かだ。カタログで10年を振り返る企画は他にはなく意外と楽しめた。


出典: ソニー株式会社 ウォークマン/カセットレコーダー 総合カタログ (1989年)

ゴールデン横丁の仲間たち | 松崎 順一(まつざき じゅんいち)

https://goldenyokocho.jp/articles/676

家電蒐集家・デザインアンダーグラウンド工場長。1960年生まれ。インハウスデザイナーを経て2003年よりデザインアンダーグラウンドを設立し活動を開始。近代家電製品の蒐集・整備・カスタマイズ等を手掛ける。近年は特にデジタル世代へのメイド・イン・ジャパン家電の持つ魅力をカルチャーとして伝える活動をイベント、執筆等、広範囲に展開中。

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