Nakamichiのコダワリ – ナカミチのカセットテープ

Nakamichiのコダワリ – ナカミチのカセットテープ

今回のナカミチのコダワリは「ナカミチのカセットテープ」について取り上げたいと思います。


幻のカセットテープ?

敢えて、ナカミチの~としましたが、そのまさかです。ナカミチブランドでカセットテープがリリースされておりました。これは、ナカミチをご存知の方でも、意外と知られていない様です。

カセットデッキのカタログ最終頁や総合カタログに、このカセットテープが掲載されていましたので、実際にカタログを入手された方は目にされていたかと思います。でも、画面の向こうで「全盛期に家電量販店で頻繁にカセットテープを買っていたけれど、一度もナカミチのテープは見たことが無かった」との声が聞こえました。

『正解です』

売っていなかったのです。いえ、正確には家電量販店などで店頭販売をしていなかったのです。今では何でも簡単にネットで購入することができますが、当時はインターネット普及前です。郵便振替による通信販売でのみ取扱でしたから、店頭で見かけることは無かったのです。

このパンフレットにあるように、カセットテープ以外にアクセサリ類も通信販売で購入することができました。ナカミチはカセットテープだけではなく、オーディオに付随する関連商品をリリースしておりました。そちらはまた別途紹介したいと思います。

それでは、本題に入ります。
なぜ、ナカミチは「ナカミチのテープ」にコダワリをもって販売していたのでしょうか。

理由はカセットテープの性能を最大限に発揮させるためです。

ご存知の通り、カセットテープはカセットテープメーカー各社から、多くのモデルが販売されています。その全てに対して、カセットデッキの仕様で謳われている特性を保証することは出来ません。オートキャリブレーション機能を持つ上位モデルでしたら、技術的には実現可能になると思いますが、その他のカセットデッキでは、内蔵するテープポジション(予め工場で調整された設定)を使うしかありません。カタログを見ると、必ず測定条件としてテープ名の記載があると思います。カセットデッキの性能は単体で測れるものではなく、必ずカセットテープとセットである必要があるのです。

それを明確に表わしているのが、カセットデッキのフロントパネルにあるテープ・ポジション表記です。ナカミチでは、ノーマル/ハイポジション/メタル、タイプ1/タイプ2/タイプ4という表記は無く、EX(ノーマルテープ/タイプ1)、SX(ハイポジション/タイプ2)、ZX(メタルポジション/タイプ4)といった「ナカミチのテープ種別名」があるのみです。これは、ナカミチのカセットデッキを入手して、最初に驚くポイントではないでしょうか。

さて、ここから核心に入っていきます。さきほどから何度も「ナカミチのテープ」と記述していますが、自社で製造している訳ではありません。ナカミチのテープを所有されている方、ネット検索で見たことがある方は、お分かりかと思いますが、テープメーカーのOEM品です。これは、ナカミチだけではなく、YAHAMA、PIONEERなど他メーカーの事例もありました。カセットテープのOEMというと、ナカミチを含めて発注元メーカーの要望でパッケージ、インデックスラベルなど外観だけの変更で、テープ自体は同じだと思っていました。

しかし、ナカミチのカセットテープ・カタログを見ると「選別品」という記載があるのです。これは当時からずっと疑問としてあったのですが、解消することなく時が経ちました。今回記事にするため、調査を始めたところ、運よくTDKでカセットテープ開発部門に所属されていた畠山さんにコンタクトをとることができ、わざわざOEM担当だった方に「選別品」の情報を問い合わせて頂きました。テープ製造時、ジャンボロールを規格に定められたテープ幅に合わせて裁断し、巻き取られたものをパンケーキと呼びますが、そのパンケーキの状態で厳しい受入検査を実施し、良品と判定されたテープのみを使って製造されたとのことです。なるほど、確かにカタログに書かれている通りの「選別品」であり、コダワリの「ナカミチのテープ」でした。

歴代の「ナカミチのテープ」

続いて、これまでリリースされた歴代の「ナカミチのテープ」について紹介します。

左側のナカミチテープのモデル名、右側にOEM元のメーカーとモデル名です。
※ナカミチモデル名 → OEMモデル名
◎第一世代(1974-1976年)
Nakamichi Chrome  1974年頃 →TDK KR(2代目) 1972-1975年(二酸化クロム)
Nakamichi SX(初代)1976年頃 →TDK SA(初代)1975年
◎第二世代(1977-1982年)
Nakamichi EX 1977年~1982年 →TDK AD(初代)1977年~(Precision cassette half)
Nakamichi EXⅡ1977年~1982年 →Maxell UD(2代目) 1972年
Nakamichi SX 1977年~1982年 →TDK SA(Precision cassette half版)1975年
Nakamichi ZX 1979年~1982年 →TDK MA(初代)1979年~

第二世代のテープ3種

◎第三世代(1983-1989年)
Nakamichi EX    →TDK AD  1981年、3代目
Nakamichi EXⅡ(茶) →TDK OD  1981年、2代目
Nakamichi EXⅡ(黒) →TDK AD-X 1982年、初代
Nakamichi SX    →TDK SA  1981年、4代目
Nakamichi SXII   →TDK SA-X 1981年、2代目
Nakamichi ZX    →TDK MA  1981年、2代目
※EX、SXIIに関しては実験未実施

第三世代のテープ5種

Nakamichi EXⅡ(茶)、Nakamichi EXⅡ(黒)

Nakamichi EXⅡ(茶)とTDK OD、TDK AD-XとNakamichi EXⅡ(黒)

Nakamichi SXとTDK SA

Nakamichi ZXとTDK MA

なお、この対応表は筆者が現存する資料及び関係者から頂いた情報を基に推測したものであり、完全に裏取りされたものではありません。事実とは異なる可能性もあると思いますので、ご承知おきください。

手持ちの資料を元に対応表を作成したのですが、せっかく第三世代のカセットテープを所有していますので、実際に同一テープであるかを確認すべく、検証実験をしてみました。

検証実験は以下の方法で実施しました。

使用カセットデッキ:ナカミチ1000ZXL
使用測定器:ナカミチT-100(オーディオアナライザ)
測定方法:
1.ナカミチテープ及びTDKのテープ、其々オートキャリブレーションを実施し、設定メモリに保存
2.オートキャリブレーションされた設定メモリを、タスキ掛けで設定し、周波数特性を測定
判定方法:各ポイントでのレベル差が0.5dB以内であれば同等テープと判定

OEMとして使用してきたテープが、OEM先のであるテープメーカーの都合で、モデルチェンジすることがあったと思います。特にノーマルテープに関しては売れ筋商品であり、1モデルのライフサイクルは短い傾向にありました。その場合、ラストオーダーで一括製造するか、ランニングチェンジするという選択があったと思われます。ハイポジションであるSXでは、磁性体の色から明らかに2種類が存在している事に気づいておりました。今回の実験結果から、販売年の異なる別仕様のテープが使われていることが判り、裏付けが取れたのが収穫となりました。

リファレンステープについて

次はOEMテープに続いて、リファレンステープを紹介します。
ナカミチからはオーナーにナカミチ社内でテスト時に使用している音源などを基準音源として聴いてもらうためにリファレンステープをリリースしておりました。日本国内向けの物と海外向けの物が在ったようです。その一部を紹介します。

リファレンステープが掲載されたカタログ

・Digital Mastering Direct Cassette - Mozart/Schubert (T-260436)
テープの頭に、16KHz -5dBのテスト信号が録音されており、再生アジマスの調整をしてから音楽を聴く事が出来る様になっております。録音ですが、送り出し機にナカミチ 1000(DATレコーダ)+1000p(DAC)を使用し、録音デッキは55台のCR-70でオートチューニングを取った後に録音されています。デジタルtoアナログ、まさにタイトル通りです。

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