オーディオのたのしみ オーディオ誌で振り返る【1984年秋】

オーディオのたのしみ オーディオ誌で振り返る【1984年秋】

オーディオ製品に限ったことではないのでしょうが、各メーカーがこぞってシェアを取りに行く価格帯というものが存在するものです。最量販価格帯と同義と考えてよいでしょう。1980年代のオーディオ業界においては、プリメインアンプの「ナナキュッパ(79,800円)」と、スピーカーの「ゴッキュッパ(59,800円)」が特に熾烈を極める戦場であったと言えます。そこで今回は『別冊FMfan』1984年秋号(43号)(共同通信社)の「スピーカー大特集」より、話題のゴッキュッパ製品を振り返ってみます。CDプレーヤー最新情報とあわせてご覧ください。


飄々とした味わい、Dr.Whoのサウンド・アドバイスも絶好調

CDプレーヤーは本格普及の一歩手前

登場から2年が経ち、ようやく価格は10万円を切り、79,800円の製品もぼちぼち現れ出しました。本格的な普及のための目安となる59,800円の実現も目前に迫ってきました。この頃にはローディング方式は水平トレー式に落ち着き、ボディーカラーはなぜか黒一色と各社横並びの様子。ミニ特集「秋のCDプレイヤー最新情報」より、3モデルのレポートを見てみましょう。レポーターは石田善之氏です。

シャープ DX-100  79,800円

シャープ DX-100

外形寸法 W330 x H79.5 x D297mm
重量 4.7kg
消費電力 18W

■評価レポートより
とうとう出たか、というのが第一印象となった、8万円を割ったCDプレイヤーの第一号である。ICやLSIを従来の三分の一以下とし、そうすることで全体を6ブロックにし、それぞれがワンチップのLSIで構成したというのが、コストダウンの要因といえるだろう。このプレイヤーが背負っている使命は、ユーザー層の拡大というもので、オーディオに特別な関心を寄せる人だけでなく、幅広く一般の若い人たちにも使ってもらおう、というわけである。
音の方だが、出力レベルはごく標準的。レンジ感はさほど欲張ったものではないのだが、とりたてて音の硬さやひ弱さがあるわけではなく、この価格であっても、CDのダイゴ味は十分に味わうことができる。低域にはゆったりとした量感がついているが、音の深みや厚みにつながるといわけではない。高域は、硬さ、ということではないのだが、明解でストレートで、高級機と比較すると、音の持つ立体感や張り出しなどに若干の差がつく。ポピュラー・ボーカルやフュージョンなどは、シャッキリとして、ハリもあって悪くない。

Lo-D DAD-4000  79,800円

Lo-D DAD-4000

外形寸法 W320 x H83 x D302mm
重量 4.4kg
消費電力 17W

■評価レポートより
先に発売しているDAD-600は12万円、コンポサイズのリモコン付きである。この4000は、基本的にそれに近いもので、メカニズムやLSIなどは同じだ。リモコンを省略し、生産性を高めるために、パネルなどは樹脂系の素材を用いるなどして、大幅なコストダウンを図っている。
出力は、平均的なものよりも2dB近く大きい。堂々とした鳴りっぷりの良さがよく出ていて、レンジ感も十分に広い。低域の音の輪郭性、あるいは高域での繊細さ、という追求の仕方ではなく、屈託のない、のびのびと明るく、リラックスして楽しめる良さを十分に感じる。ポピュラー軽はもちろんだが、クラシックでも、厚みのある響きの良さは出ているし、オルガンも十分に低いところまで出てくる。タッチの良さ、輪郭の良さ、ゆったりとホール全体が響いていく、という状況はよく伝える。

パイオニア P-DX700  89,800円

パイオニア P-DX700 

外形寸法 W320W x H98 x D260mm
重量 4.6kg
消費電力 21W

■評価レポートより
今現在、最も小型コンパクトなCDプレイヤーである。シスコンの「プライベート」に合わせたサイズで、パネルカラーはシルバーとブラックとが用意されている。赤い文字やブルーのインジケーターでカラフルな美しさも備えている。
出力レベルは標準的だ。全体的に、とてもこのサイズとは思えないくらいにタップリとした音である。耳当たり良く、聴きやすい中~低域で、適度にしなやかであり、ツヤやかさ、輝かしさのある中高域である。ハイエンドは、あまり欲張った感じがないので、これが聴きやすさにもつながっている。音抜けや透明度の高さ、といった追求ではなく、聴きやすく、親しみやすいサウンドをねらったものであろう。幅広いソースに対し、のびやかでゆったりとした良さを引き出す。

「スピーカー大特集」より

今回のスピーカー大特集は全28機種が対象です。うち、定価が10万円以下のスピーカー16機種を長岡鉄男氏が、10万円以上の12機種を藤岡誠氏がレポート。テストレポートのほかにも、高島誠氏による「国産トップエンドスピーカー分析」と、細谷信二氏の「最近の日本製スピーカーの作られ方-その技術的背景と使いこなしについて」という興味深い読み物も含まれています。冒頭に書いた通り、今回はスピーカーの最激戦区、定価59,800円のモデル4機種を取り上げます。レポーターは長岡鉄男氏です。

ケンウッド LS-990A

ケンウッド LS-990A

型式 3ウェイ・バスレフ型
インピーダンス 6Ω
再生周波数帯域 28~45,000Hz
クロスオーバー周波数 600Hz 5kHz
最大入力 190W
出力音圧レベル 92dB/W/m
外形寸法 W355 x H671 x D321mm
重量 22kg

■評価レポートより
実測重量22.5kg。バッフルは12mm厚と18mm厚のパーチクルボードを張り合わせて30mmとしている。ほかの五面もすべて20mm厚と、このクラスでは一番厚い。そのままでも強度は十分なので、補強桟は使用していないが、裏板のウーハー対抗面にはウーハーの抜き板を張り付けて、背圧をはね返している。この部分の厚さは50mmになる。くの字に折れ曲がったパイプダクトによるバスレフ。
f特はツィーター軸上1mでは高能率でワイドでフラット、3~4kHzに落ち込みはあるが、ハイエンドは、よく伸びている。リスニングポジションでも3~4kHzの落ち込みは残っているが、ハイエンドの伸びは、このクラスのトップ、ローエンドもよく伸びている。
音はフルレンジのようにつながりがよいが、フルレンジよりずっとワイドでフラットという鳴り方。低域もエネルギーと重量感があり、音程の明確な芯のある低音、FMfan本誌でテストした時よりよくなっている。中高域も情報量が多く、繊細でツヤがある。切れ込みもよいが、よすぎて神経にさわるという感じはない。微小信号に強く、余韻、ホールエコーがきれいだ。音場も広く深く、スケール盛大、LS-330に比べるとかなりの貫禄の差を感じた。ハイCP機である。

ダイヤトーン DS-73DⅡ

ダイヤトーン DS-73DⅡ

型式 3ウェイ・密閉型
インピーダンス 6Ω
再生周波数帯域 35~30,000Hz
クロスオーバー周波数 600Hz 5kHz
最大入力 80W
出力音圧レベル 91dB/W/m
外形寸法 W370 x H680 x D330mm
重量 21kg

■評価レポートより
バッフルは20mm厚、ほかの五面は17mm厚。補強桟はバッフル中央に水平に一本、底板に一本、側板はツィーター、スコーカーに近い方が上段と下段に一本ずつ、反対側の側板は中断に一本と計五本。吸音材は三種類のフェルトを複雑に組み合わせて要所要所をきめ細かくカバーして、最小限の吸音材で、最大限の効果をあげるように考えられている。
ヒヤリングでは中高域の解像力が印象的。超微粒子と細かい線で名人芸的に分解。デザイン、色調にふさわしく、金粉をばらまくように散乱するサウンドだが、金ピカの安物とは違い、適度に抑えた渋さもある。いぶし銀ということばがあるが、これはいぶし金か。弦やハープシコードやシンバルのブラシワークに硬さ、粗さがなく、繊細で、シルキータッチ。ボーカルもブラスも明るく、ツヤがあって美しい。中高域に対して、ウーハーの帯域のスピード感がやや落ちる感じで、骨太とか筋肉もりもりとかいった感じは出にくい。量もあり、音程もわかる低音で、詰まった感じもないが、控えめで、さりげない鳴り方。

パイオニア S-180D

パイオニア S-180D

型式 3ウェイ・バスレフ型
インピーダンス 6.3Ω
再生周波数帯域 30~50,000Hz
クロスオーバー周波数 550Hz 4kHz
瞬間最大入力 200W
出力音圧レベル 94dB/W/m
外形寸法 W380 x H670 x D353mm
重量 25.5kg

■評価レポートより
連続ベストセラーの180シリーズ第四弾。価格は59,800円になったが、69,800円でおかしくないほど、金のかかったシステムだ。実測重量26.1kgはこのクラス最大。バッフルは20mm厚、ほかも同じか。バッフルと左右側板のそれぞれ中央付近に補強桟が一本ずつ。後80x160mmのパイプダクトによるバスレフ。6mm厚の紙管で丈夫。吸音材は少なめで、薄手のグラスウールが、側板の片方と、底板と裏板は四分の三の高さまで張ってある。
三つのユニットの音がよくとけあっており聴感上のレンジは特に広い。一聴して分かるのは低域の量感だ。このクラス随一、大型フロアタイプなみの量感のある低音である。特にオルガンには圧倒的な強さをみせる。中高域も解像力が高く、伸びがあり、オーケストラの弦バスから、シンバル、トライアングルまで、動きがよく分かり、混濁しない。ボーカルもやや硬さはあるが、ツヤがあって歯切れがよい。ジャンルを選ばぬ万能型、スコーカーが550Hzから4kHzまで再生しているので音像も小さく、定位もよい。

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