オーディオのたのしみ オーディオ誌で振り返る【1980年春】

オーディオのたのしみ オーディオ誌で振り返る【1980年春】

コンパクトディスクが登場する以前のアナログオーディオ時代、音楽ソースの主役はレコードでした。レコードの音溝に刻まれた微小な凹凸をなぞり、そこで発生する振動を電気信号に変換するのがカートリッジです。まさに音の入り口と言えましょう。オーディオコンポのなかでは一番ちいさなアイテムですが、オーディオシステム全体への音の影響度はスピーカーに次いで大きいのではないでしょうか。『別冊FMfan』1980年春号(25号)(共同通信社)の第1特集はカートリッジ27機種フルテスト。評価者は『FMfan』誌(共同通信社)のダイナミックテストでもおなじみの長岡鉄男氏です。


形も様々なカートリッジたち

宝石のようなカートリッジたち

巻頭の特集は山中敬三氏のカートリッジコレクションを紹介する、題して「名カートリッジ物語 - カートリッジコレクションの楽しみ」です。世界中から選りすぐった氏のコレクションはまるで宝石のよう。眺めているだけでも心躍ります。

MC型カートリッジの元祖、オルトフォン(デンマーク)

デッカはレコードメーカーとしても古くから有名(イギリス)

エラックはMM型カートリッジのオリジネーターのひとつ(ドイツ)

名機V15シリーズで知られるシュアー(アメリカ)

プロ用として絶大なる信頼を勝ち得たDL-103はデンオンの出世作(日本)

カッターヘッドと相似形をうたうVM型を開発したオーディオ・テクニカ(日本)

長岡鉄男の最新カートリッジ27機種フルテスト

長岡鉄男氏の製品テストレポートはおそらく筆者名を見なくてもわかるぐらいに特徴のあるものでした。ひとつは計測データをふんだんに盛り込んでいたこと。コンポに使われているパーツのサイズや重量を計測するのはお約束で、計測対象は外部に出ているボリュームノブやインシュレーターなどにとどまらず、本体内部にあるヒートシンクやトランス、スピーカーユニット単体のサイズや重量まで測定して記事に掲載していました。素材や材質にも注目していました。基本的には「重く」「厚く」「太い」が高く評価されていました。今回のフルテストでもスペアナで計測した周波数特性が掲載されています。もうひとつの特徴は音質を表現する際のユニークなボキャブラリーですが、紹介すると長くなるので次の機会に譲りましょう。

ではフルテストから気になった5モデルを選んでダイジェストをお届けしましょう。

ビクター U-2E 17,000円

ビクター U-2E

型式 MM型
再生周波数 10~40,000Hz
出力電圧(1kHz, 5cm/sec)2.8mV
セパレーション 25dB
出力バランス 1.5dB
針圧 1.3~1.7g
出力インピーダンス 800Ω
負荷抵抗 47kΩ~100kΩ
針先形状 だ円
カンチレバーの素材 アルミ合金
自重 17.5g

■レポートより抜粋
ユニークな、しかしスマートとはいえないスタイルのシェル一体型カートリッジである。
針圧は1.5g、出力は2.8mVとなっているが、実際には公称3.5mVのカートリッジと変わらない。インピーダンスが低いので、ロスが少ないからであろう。公称出力電圧が大きくてもインピーダンスの高いカートリッジは、内部でロスってしまうから、アンプに加えられる電圧は低下するのである。
音質はブックシェルフ型スピーカーとの相性がいいタイプだ。低域はゆったりとして量感がある。筋金入りのハードな低音というのとはちょっとちがうが、ブックシェルフから予想外の低音を引っ張り出してくれるというタイプだ。中域は歪み感が少なく、やや甘口だが滑らか、ハイエンドは少しカラリゼーションを感じる。このカラリゼーションがたいせつで、もしこれをとってしまうと、このカートリッジは重く甘口の太めの音になってしまうと思う。

シュアー V-15ⅢHE 30,000円

シュアー V-15ⅢHE

型式 MM型
再生周波数 10~25,000Hz
出力電圧(1kHz, 5cm/sec)3.5mV
セパレーション 25dB
出力バランス 2dB
針圧 0,75~1.25g
負荷抵抗 47kΩ
カンチレバーの素材 アルミ合金
自重 6.4g

■レポートより抜粋
従来のTYPEⅢにくらべるとハイエンドのチリチリとしたアクセントがとれて、そのぶん、やせた感じもなくなり、ナチュラルである。オケの低弦の動きがよくわかり、分解能が高く、広がり、奥行きも出るが、ベース、ドラムの力感、シンバルのヌケはもう一息。ボーカルも美しいが、少し角がとれた感じになり、タ行、ファ行の無声音の出方がもう一息。Ⅳに比較すると、音色についても、音像についても輪郭が少し甘くなる。マトリックススピーカーでは、ソロボーカルがパッと浮き出して色気、ツヤがあり、コーラスは広く深く、そして少し甘く。そこがⅣとちがうところで、それぞれによさがあるといえそうだ。どちらもCPは高いと思う。

テクニクス 305MC 35,000円

テクニクス 305MC

型式 MC型
再生周波数 10~60,000Hz
出力電圧(1kHz, 5cm/sec) 0.2mV
セパレーション 25dB
出力バランス 1dB
針圧 1.3~1.7g(最適1.5g)
出力インピーダンス 30Ω
針先形状 0.2x0.7ミル だ円
カンチレバーの素材 ピュアボロン
自重 6.7g

■レポートより抜粋
テクニクスは国産MM型としてはモノーラル、ステレオとも第一号機を出しており、MM型では常に業界をリードしてきた。現代的MMの基本を作り上げたのもテクニクスだといってよく、その影響は海外にも及んでいる。しかし、MC型ではキャリアは浅い。

シェルはゴムリングつきなので最初はそのまま聴いた。ゴムリングつきの305MCはややウォームな中にハイエンドのきつさがあり、切れ込みと輝きがもう一息だったので、自作鉛板(釣りの板オモリで作る)リングに換えて再試聴。この方がよい。レンジは広く、低域の量感たっぷり、ハイエンド上昇気味だがさわやかでぬけがよい。オケは力強く、バスドラム、ベースも力がある。シンバルも明るく散乱する。ボーカルはサ行が少しきつくなる時があるが輪郭鮮明で、定位も明確、音場はわりと広いが、特に広いというほどではなく、そのぶん、密度は高い。

デンオン DL-303 45,000円

デンオン DL-303

型式 MC型
再生周波数 20~70,000Hz
出力電圧(1kHz, 5cm/sec) 0.2mV
セパレーション 28dB
出力バランス 1dB
針圧 1.2g
出力インピーダンス 40Ω
負荷抵抗 100Ω
針先形状 特殊だ円
カンチレバーの素材 アルミ合金
自重 6.5g

■レポートより抜粋
ロングセラーDL-103シリーズから新しい方向へ一歩踏み出した記念すべき製品がDL-303であり、今後、305、307への発展も予想される。103はオルトフォンタイプをベースにして十字型のコアを使用、ターン数をふやして出力を大幅にアップさせた使いやすいカートリッジとしていまだに人気が衰えていないが、303はデンオンとして初めての空しんMCである。
レンジは特に広い。オルガンの超低域は実にやわらかくたっぷりと出てきて、リスナーを包みこむ。全域にわたってきめが細かく歪み感極小。意外と力もあるが、鋭さ、とげとげしさはまったくなく聴きやすい。大編成のオケやコーラスに強い。ボーカルや弦はあたたかみを感じさせる鳴り方。音像は引き締まってナチュラル、レンジが広いわりにノイズが目立たないのも立派。ジャズ、ロックの迫力はもうひとつ。

オルトフォン MC-20MKⅡ 53,000円

オルトフォン MC-20MKⅡ

型式 MC型
再生周波数 20~20,000Hz
出力電圧(1kHz, 5cm/sec) 0.09mV
セパレーション 25dB
出力バランス 1.5dB
針圧 1.7g
出力インピーダンス 3Ω
負荷抵抗 10Ω
針先形状 ファインライン
カンチレバーの素材 アルミ合金
自重 7.0g

■レポートより抜粋
音はレンジが広く、バランスがよく、メリハリの効いた、しかしち密な音。細かい音をよく拾うが決して鋭くならない。余韻もきれいだ。低域のダンピングはたいへんよく、そう快である。特にソースを選ぶタイプではないが、一部のソースではきれいごとになりすぎる時もある。もう一息の鋭さ、力強さがほしいと思うところもある。この辺はボディの影響だろう。音像の輪郭はわりと鮮明で、よくぬけてくるが、あまり鋭くならず、音場もわりと広い方。マトリックススピーカーではソロボーカルはよくぬけてくるが少し甘口、オケは量感はあるが音場はそれほど広くない。
以上はトランスでのヒヤリング。プリのMC入力で聴くとだいぶ違う。低域の量感はむしろ減ってしまい、ハイエンドが多少チリチリしてくるのだが、ボーカルのヌケや鮮度は向上、マトリックススピーカーでの音場は明らかに広がって差をつける。


参考資料:『別冊FMfan』1980年春号(25号)(共同通信社)

※引用にあたっては株式会社共同通信社様の許可を得ています

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