『こんなものを買った』TEAC R-888X

『こんなものを買った』TEAC R-888X

以前アカイのGX-93をご紹介した際にも申し上げましたが、取材用に買ったものの手放せなくなった機材があります。このティアックR-888Xもその1台です。


ティアックR-888X

大切に使い込まれた1台

このR-888Xも、GX-93でご紹介したステレオ時代Vol.10の「カセットデッキ御三家OB座談会」を取材する際に入手したもので、ティアックのOBとしてご参加いただいた宮本啓之さんが開発した1台だったのです。
この個体、決して美品ではありません。ご覧の通り、パワーボタンとイジェクトボタンはほぼ文字も消えてしまっています。相当使い込まれた感じがします。
ただ、文字が消えるほど使い込まれた個体のわりには、キズも少なく、筐体にゆがみもありません。
前オーナーさんが丁寧に使っていらっしゃったのか、ティアックの耐久性が高いのか…。多分、両方ですね。
R-888Xは1985年の発売です。3ヘッドの録再オートリバース機で、当時の価格は9万9800円。まあまあの高級機です。にしてもオートリバースでワウフラは0.03%ってどういう時代!? 当時の開発者の方は大変だったでしょうねぇ…。

ティアックR-888 ヘッド

ヘッド回りはこの複雑さ。録再のコンビネーションヘッドはダイキャストの回転ベースに固定されています。その両側に消去ヘッド、正逆それぞれ用のキャプスタン+ピンチローラーと配置されています。この複雑な機構が30年以上経った今でも正常に作動するのですから、当時のメカの優秀さが分かりますね。
ただ宮本さんのお話ではティアックはヘッドを自社で作っていなかったそうで、これも部品メーカー製だったそうです。

音は鮮烈ではないものの正確

以前取材した際は、アカイ、ナカミチとの比較試聴でした。ティアックのなかでもことさら音質重視の高級機ではない本機。ナカミチはもちろん音質に特化したGX-93と比較しても音は、正直イマイチと感じました。丸められた高音、低音も耳障りの良いところでまとめた感じ。ピシっとしたナカミチや突き抜ける高音のアカイと比べると、中庸な感じでした。
ところが久しぶりにラックに設置して聴いたR-888Xの音の印象はまったく違いました。
今回試聴に使ったのはユーミンの「NO SIDE」と久保田利伸の「シェイク・イット・パラダイス」。

TEAC R-888X

ユーミンの独特の歌声も久保田利伸のパンチの利いたドラムも非常に気持ち良い! しかも正逆方向で、音の違いは感じません。すげえ…。
試聴室のリファレンスデッキ、Lo-D D-17と比べると、同じシングルキャプスタンにもかかわらず、ワウフラの小ささは1分聴けば実感できます。

視聴ミュージックテープ

こんなにいい音だったなんて…。しばしいろいろなテープをかけて浸ります。

R-888Xの真価は多機能

ただしこのR-888Xの本当の存在意義はその多機能さ。そしてできるだけユーザーの手間を省くコンピューター制御。ナカミチの音は素晴らしいです。それは紛れもない事実。ですが操作の煩わしさは使う人を選びますよね。テープセレクターのかわりにバイアスとイコライザーのスイッチだったり、マニュアルでアジマスを調整するって、エンジニアですか、と言いたくなります。
同じテープ専業メーカーでもアカイやティアックの立ち位置はもう少しメジャーメーカーに近くてソニーやアイワからちょっと背伸びしてきたユーザーが多い印象です。だからテープのキャリブレーションもオート。オートリバースの利便性を強調する頭出しやブランクスキップも搭載しています。

ティアックR-888X 操作部

ただしその多機能ぶりから想像できるとおり、操作系はなかなかの複雑さ。使いこなすにはちょっと時間が必要かも。まあオートテープセレクターだし、ノイズリダクションさえ間違えなければ余計な設定なしで使っても大丈夫ですが。
メーターは緑→オレンジ→赤の3色で、オレンジに収まるのがベストみたいです。多少赤に振り切っても大丈夫なのがアナログの良いところですね。
ちなみにリモコンも用意されてます。

TEAC R-888X リモコン

ワイヤードですけど(笑)。ケーブルは長いので普通の部屋で使う分には平気です。

繰り返してしまいますが、それにしても30年以上も前のデッキが、ボタンひとつ、インジケーターひとつ不具合なく動くってすごいと思いませんか!?
そしてこの音。だからB級オーディオはやめられません。

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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