『こんなものを買った』CORAL EX-101

『こんなものを買った』CORAL EX-101

じつはこれ、ずいぶんと前に購入したままになっていたものなのです。つい買ってしまったのですが、使い所がなくて。片付けをしていて見つけたのですが、試しに聴いてみたらこれがまた……。


自他ともに認めるコーラル好き

小学生の頃、埼玉県川口市に住んでまして、自宅から歩いて2、3分のところにちょっとした工場がありました。それがコーラルでした。

工場の入り口近くにはスピーカーの絵が描かれた大きな看板が鉄柱の上に掲げられていました。私はその立派な看板を見ながら育ちました。また地元にそうしたメーカーがあるのが誇らしく、中学の頃、自分の部屋に置くために初めて買ったスピーカーもコーラルの10cmフルレンジでした。しかし、大学生になってアルバイトで自分のスピーカーが買えるようになった頃には、コーラルの看板はなくなっていたのです。

もともと日本コロムビアの技術者だった梅原洋一氏がパイオニア創始者の松本望氏の誘いで独立して作った福洋コーン紙。そう、もともとはコーン紙のメーカーだったのです。やがて自社でのユニット生産、システムスピーカー生産の後、アンプ等のコンポまで手がけるようになり、当時のブランドだった『コーラル』を社名としコーラル音響が誕生しました。1970年代になりスピーカーの専業メーカーとなり、ベータ、フラットやDXシリーズなど数々の名品を生み出しつつも、バブルの崩壊を待つことなくひっそりとブランドは終焉を迎えました。

そんな私の夢は、いつかDX-ELEVENを買って思う存分鳴らしたいというものですが、まあ今でもセットで10万円以上で取引されているうえ、なかなかレアでめったにお目にかかれません。DX-SEVEN/IIでもいいのですが、これも最低でも5、6万はする人気モデルなうえ、ELEVEN以上にレア。というわけで目下のところDX-5を、しかも自宅には置けず実家に帰ったときだけ楽しむという生活を送っております。


 *  *  *

そんなコーラル好きの私ですが、救いがあるとすればコーラルには優れた小型スピーカーもあった、ということでしょう。前述の10cmフルレンジを使った4B-1AVも低音こそあれですが、なかなかバランスの取れたいい音を鳴らします。さらにその上にはコンパクト2ウェイのEX-101とEX-102AVというモデルがあります。

まだ「ヤフオク!」がいまのように盛んでなかったころ、EX-102AVを6000円で手に入れ、その音の良さにびっくりしました。普通に鳴らせばドンシャリ系なのですが、トーンセレクターがついていて『MILD』に切り替えると上と下のつながりが良くなります、若干ですが。
幅19cm、高さ29cm、奥行き18.5cmと手頃なサイズながら、重さは4.6kgもありずっしり。サイズ以上に豊かに鳴ってくれるそれは良いスピーカーです。その後良さそうな出物を見つけては買ってしまい、3セット持っています。

EX-102AVはフロントにポートを持つバフレフで、ウーハーは14cm、ツイーターは3.6cmドームです。ご覧の通り左右非対称のデザインなので右チャンネル用と左チャンネル用が一組になってます。

本命は密閉式

さてこのEX-102AVには姉妹機があります。EX-101というモデルで、多分こちらのほうが先からあったモデルと思われます。じつは以前、このEX-101をヤフオクで手に入れたことがありました。外装はボロボロでターミナルもマイナスドライバーで固定するタイプに変更されていました。安かったこともあって、まったく期待していなかったのですが、試しに鳴らすと凄い音がしたのです。まるでJBLのモニターのように、カンカンバシバシ、抜群のキレの良さ! 見た目とのギャップが凄すぎる!!

一緒に聴いていたdiskunion JazzTOKYOの店長、生島昇氏いわく「どこかでスタジオモニターとして使われていたんじゃないでしょうか。鍛えられ方が半端ないです」と絶賛していました。ただあまりにも程度が悪かったので、美品のEX-101を落札できたので、この個体は知り合いに譲ってしまいました。

ところが届いたEX-101(写真の個体です)は程度が抜群に良かったのですが、なぜか音がスカスカ。低音は軽く、中域は薄く、高音はか細い。全体的にユニットが動いてない感じ。これは使い物にならない…。ただ以前生島氏がおっしゃっていたとおり鍛えれば良くなるのであれば、ダメ元でやってやろう。ということで、「ステレオ時代流虎の穴(仮)」に放り込むことにしました(笑)。

EX-101にスピーカーケーブルを付け、そのうえで新品のウエスでぐるぐる巻きにします。そのうえで厚手のダンボールに密封し、さらにウエスやトレーナーなどでぐるぐる巻きにし、そのまままたダンボールに密封しました。試しに鳴らしてみると50Wのアンプで10時~11時くらいまでボリュームを上げても少ししか音は漏れてこなくなりました。これを会社の倉庫(この時は旧社屋だったので倉庫はオフィスの一角にありました)の奥に押し込み、3日ほど大音量で鳴らし続けました。まあエイジングのやり直しみたいなものでしょうか。

30年ぬくぬくと腑抜けたスピーカーは生き返るのか

すでに誕生してから30年、おそらくろくに鳴らされて来なかったのでしょう、まったく動かないユニットは生き返るのでしょうか。
そもそもスピーカーにエイジングは必要なのでしょうか、あるいは有効なのでしょうか。

まあイメージ的には「良くなる」というのにも頷けますが、「何で?」と言われると「なんでだろう?」と。
でも鳴らされなかったスピーカーが鳴らなくなるのは納得できますよね?だから「スピーカーの目を覚ましてやろう」くらいの軽い気持ちで「ステレオ時代流虎の穴(仮)」に放り込んだのでした。

ところがその後試し聴きするチャンスもなく、社屋移転。EX-101は箱に詰められたまま倉庫(兼試聴室)に運ばれました。

せっかく虎の穴で鍛えたのに、その後1年もまたダンボールに放って置かれたEX-101。
「元にもどっちゃったかなあ。そもそもあれは効果あったのかなあ」と思いつつ、久しぶりにスタンドの上に置かれたEX-101。

EX-102AVと並べると一回り大きいことに気が付きます。
幅21cm、高さ34cm、奥行き19.5cmとサイズは若干の違いですが、重さは6.2kgとさらにズッシリ。またユニットもウーハーは14cmから17cmへとワンサイズアップしています。

いよいよ鳴らします。

おお!良い!!


環境が変わったからか、システムが変わったからか、それともやはり虎の穴効果なのか。上も下も真ん中も、くっきりはっきり。しかもEX-102AVと比べても、上から下までつながりが格段に良い。
ワルツ・フォー・デビーはナイフやフォークの音もはっきり。サラ・ヴォーンのボーカルも生々しく、もちろんジャズ以外もばっちりです。

それほどキャラの濃い音ではありません。個人的には中庸でやや明るいのがコーラルの音だと思っているのですが、そのど真ん中の音です。

やっぱりコーラルが好き

コーラルはもともとコーン紙のメーカー、梅原氏が継ぎ目なしのコーン紙を完成させるために作った会社です。また1960年代の後半に住友特殊金属の子会社になりました。だからでしょうか、マグネットは同クラスの他のメーカーのものよりも奢られていました。

またライバルメーカーのものよりも、若干値段が安い設定のような気もします。たとえば80年代の598クラスと同等のDX-5は4万9800円でした。同じくフラッグシップのDX-ELEVENは1本40kgもある4Wayですが13万8000円です。

ちなみにEX-101、EX-102AVは1本2万円。大きさを考えるとやや高い気もしますが、持ってみると納得。とくにEX-101は密閉式ということもあり、かなりガッチリしています。

以前元ダイヤトーンの佐伯多門氏に、密閉式でアコースティックサスペンションを実現するには箱の精度が重要、と伺ったことがあります。このEX-101は、そういった意味ではけっこう良い線行ってるのではないでしょうか。実際低域のキレも良く、スピード感のある音が鳴ります。

つまり、良いコーン、良いマグネット、良い箱、しかもコーラルにしては高めの価格設定。これで良いスピーカーができないワケがない。このEX-101なかなかの銘機だと思うのです。今でも数千円で買える傑作コンパクトスピーカーの紹介でした。

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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