【旧車】ホンダ NSX│ホンダ 決して「乗る人を拒否しないスーパースポーツ」

【旧車】ホンダ NSX│ホンダ 決して「乗る人を拒否しないスーパースポーツ」


■緊張ではない、開放するスポーツ」バブル期に生まれた日本を代表するスーパースポーツ
・モデル名 :HONDA NSX
・世代/型式:1990年/NA1/2型系
・メーカー名:本田技研工業
・搭載エンジン:V型6気筒DOHC24バルブVTEC
 ボア×ストローク90.0×78.0mm C30型2977cc
・最高出力 :280ps/7300rpm(MT車)265ps/6800rpm(AT車)
・最大トルク:30.0kg.m/5800rpm
・トランスミッション:5速マニュアル/4速オートマチック
・サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン独立
・ボディサイズ:全長×全幅×全高4430×1810×1170mm
・タイヤサイズ:前205/50ZR15、後225/50ZR16
 ヨコハマADVAN A22+専用鍛造アルミホイール
・ホイールベース:2530mm
・車両重量 :1350kg
・販売時期 :1990-2006
・生産台数 :18,734台

日本を代表するスーパースポーツと呼ぶに相応しい1台、それはホンダNSXだろう。そしてNSXはホンダという企業を象徴するクルマでもある。1989年2月、米シカゴショーでアキュラ・ブランドとしてデビュー。まさに日本のバブル絶頂期にプロトタイプとして発表され、その翌年の1990年9月にプロダクションモデルとして市場に出た新世代スポーツカーは、ホンダらしい新しいコンセプトから生まれたミッドシップスポーツだった。コンセプトを端的に表現したキャッチコピーは、「緊張ではない、解放するスポーツ」である。

NewSportsXの名を冠したホンダのスーパースポーツ

ホンダNSX、98年にプロトタイプがシカゴでアンベールしてから、あれほど長いティザーキャンペーンに一喜一憂させられたクルマは数少ない。最初に目にしたショーモデルであるプロトタイプは「NS-X」で、正式発売されたプロダクトモデルはハイフンの無い「NSX」だった。言い尽くされたことだが、ホンダの新しいスポーツカー、ニューの「N」、スポーツの「S」、そして未知数を表す「X」を合成した“New Sports X”の誕生である。

ホンダは60年代にS500やS600、S800の名称で「S」をスポーツの意味で使っていたし、軽自動車のベストセラー、N360の「N」は乗り物を意味していた。このような暗号めいた名称は、その後のS2000、そして現在の「S660」や「N-BOX」に引き継がれている。こう考えるとNSXは乗用車とスポーツカーの概念を融合、あるいはそんなカテゴライズを払拭した未知のクルマとも解釈できる。決して「乗る人を拒否することがないスポーツカー」が、ホンダNSXファーストヴァージョンの基本的な立ち位置である。

それは、世界屈指のメカニズムVTECエンジンなどハイテクをオールアルミのモノコックボディに凝縮した高性能車ながら、一方で極めて柔軟なドライバビリティとコンフォート性を併せ持ったクルマに仕上がっていたことからも理解できる。

今となっては“コンパクト”といえるミッドシップスポーツ

発売されたNSXのボディ寸法は全長×全幅×全高4430×1810×1170mm、ホイールベース2530mm。オールアルミニウムでつくられたモノコックシャシー&ボディで徹底した軽量化を狙った車重は1350kg。これは、ボディだけでなく4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションアームや支持部材、搭載エンジン、内装のシートレールやシートフレームなどすべてをアルミ製とすることで達成した。当時のホンダの発表では、一般的な鋼板ボディ比で140kg、サスペンションなどを含めてトータルで約200kg、およそ大人3人分の軽量化に成功したとされた。
サイズそのものは幅こそ1.8m超だが、それ以外は当時売れに売れていたデートカーと呼ばれた3代目のホンダ・プレリュードと大差ない寸法。運転しても実にコンパクトで視界も良好な2座ミッドシップスポーツだった。

軽量化はクルマの発進&中間加速などの動力性能に有利なことは明白だ。ミッドシップレイアウトによる機敏な回頭性にも当然有効に働き、ヨー・ピッチング・ロールなどの挙動変化の軽減にも大いに効く。

バブルに間に合った幸運なスーパースポーツ

ホンダはこのアルミボディをつくるために栃木研究所の隣にNSX専用工場を建設したが、当初の生産能力は日産25台、月間で500台、1年で6000台が限界だった。NSXは、はじめから少量生産を標榜し、それ以上増やすつもりもないとしていた。

そのせいか、バブル絶頂期だった89年プロトタイプ発表直後から全国のホンダ・ベルノ店への問合せの電話が殺到、その数は自動車専門誌に記事が掲載される度に跳ね上がったという。噂の域を出ないが、金額を記入していない小切手を添えて予約にやってきた客もいたという。価格800.3万円~860,3万円で正式発売されても、その狂想は止まらず、並行輸入業者がアメリカから逆輸入した左ハンドルモデルを2000万円で販売していた例もあった。

そのNSXの開発作業はバブル経済前夜の1985年に始まったという。発売の6年半前のことだった。それまでホンダはN360以来、一貫して四輪車の駆動方式としてFF(前輪駆動)を採用してきた。しかし、一方でホンダは第2期フォーミュラ1・GP参戦でアイルトン・セナ、アラン・プロストという超一級ドライバーを擁して黄金期を謳歌していた。そんなモータースポーツ好きの企業集団ホンダが、本格スポーツカー開発で本格ミッドシップスポーツの開発を目指すのは当然だった。

クルマの基本性能「走る・曲がる・止まる」を極限まで追求し、バランスをとるための要件のひとつ、軽量化は、アルミ製ボディの採用で達成できる目途がついた。次いでパワーユニットである。

自然吸気エンジンとして究極を目指したVTEC

NSXの心臓であるC30型エンジンは、ボア×ストローク90.0×78.0mmの2977cc・V型6気筒DOHC24バルブエンジン。90度バンク角のV6は、可変バルブタイミング&リフト機構「VTEC」を搭載した。各気筒に配された4バルブのバルブ径は吸気側35mm、排気側30mm。VTECシステムでは、低回転用と高回転用の2種類のカムシャフトを設け、この吸排気バルブの開閉時間とリフト量を回転域に見合うように調整するホンダ独自の機構だ。自然吸気エンジンで究極の性能を持たせるためのホンダの回答でもあった。

その最高出力は、圧縮比10.2から当時の国内メーカー自主規制値であった280ps/7300rpm(MT車)と265ps/6800rpm(AT車)。最大トルクは30.0kg.m/5800rpmを得た。レブリミッターはMT車が8200rpm、AT車が7500rpmで燃料をカットする設定だった。スペックを一見すると、高回転型エンジンのように思える。確かに高回転まできれいに回るエンジンだったが、2000rpm辺りから最大トルクの8割、25kg.mほどの図太いトルクを発生するユニットで、軽量なボディをグイッと押し出すドライバビリティに優れた柔軟性が高いエンジンでもあった。だから、MT車であっても渋滞が頻発する東京都内の一般路で何の苦もなく運転できた。

NSXはこのV6・VTECユニットを横置きにミッドシップ搭載し、トランスミッションを側方に配した。また、燃料タンクは対衝突耐性の高いボディ中央部に配置。この結果、前後重量配分は、ミッドシップ・リヤドライブ(MR)車として理想的な42対58を実現。これは加速時に有効なトラクションが得られるのに加え、制動時には前輪荷重に移行し前後ブレーキ負担が理想的な50対50になる。また、燃料タンク中央配置でタンク内の残ガソリン重量に重量配分が左右されないオマケまで付いた。

結果として空気抵抗係数、CD値0.32のオールアルミ製軽量ボディに、たった6本のシリンダーだけが載ったNSXは、0-100km/h加速:5.0秒(MT)、最高速度270km/hを達成する。
ブレーキシステムは4輪ベンチレーテッドディスクで、ローター厚は前28mm、後21mm。ABSは標準装備で、新開発4センサー・4チャネルの高度なデジタル制御システムが備わった。
装着タイヤは、フロントが205/50ZR15、リアが225/50ZR16サイズのヨコハマタイヤのアドバン(ADVAN)A022。組み合わせたホイールはスピニング加工を施したワンピース鍛造アルミ製で、同サイズの鋳造ホイール比で約6kgの軽量化が図られたと発表資料に記されていた。

快適装備が充実した2座スポーツ

床から僅かに160mmに設置された極めて低いシートに身体を収めてインテリアを眺めると、368mm径の小さめのステアリングにはSRSエアバッグが内蔵され、インパネやドアライニングは本物の手縫い。電動調整式のパワーシートは本革製で、ブラックのほかオフホワイトも選択できた。また、快適装備も充実しており、大容量のオートエアコンが搭載され、BOSE製のカセットオーディオが備わる。さらにエンジンルームとキャビンを仕切るウィンドウは2重ガラスとして遮音性を高めた。

当時、輸入スーパースポーツの多くは、クルマそのものの性能の高さを追求して設計されており、快適装備などはおざなりで、視界などにも問題がありドライバーに負担を強いるクルマが多かった。対してNSXは、ドライバー中心のスポーツカーとすることを目標とした結果が、良好な全方位の視界、ホンダ製乗用車然としたインテリア&快適装備になった。それに対して「刺激が不足」「乗用車的過ぎる」などの声がストイックな評論家から挙がったが、快適なドライビング環境はNSXの好評価につながった。何より、撮影ロケやワインディングロード試乗などで往復400km~500kmの日帰り移動を快適にこなしてくれたスーパースポーツは、以後も知らない。

アイルトン・セナも開発テストに参加

もちろん、走りの追求についても手を緩めなかった。NSXは開発当初からアイルトン・セナや中嶋悟などのホンダ・エンジンを搭載したF1マシンのドライバーが走行テストに参加。車両をテストした彼らから、ボディ剛性の低さが指摘され、過酷なコースレイアウトで有名なニュルブルクリンクなどで走行テストを繰り返した。当時ニュルブルクリンクでの走行テストは、テスト車両を持ち込み、走り込むというのが主流だったが、ホンダはニュルに程近いミューレンバッハ村にテスト基地を建設までして実施した。

フェラーリやポルシェ、ランボルギーニなどスーパースポーツは数多い。が、かのブランドはユーザーを選ぶような側面を持つ。それはドライビングスキルによる選別や社会階層による線引きである。もちろんそれを、メーカーは声高にアピールしないが、ヨーロッパ的な選別の意識が明らかに感じられる。しかし、NSXは違った。どんなユーザーにとか、どんな階層の人にアピールするとかではなく、自分たちが好きな「いいスポーツカーをつくりたい」という少年のような純粋な発想から生まれたクルマのような気がしてならない。

日本に加えて国外でも高い評価を得た初代NSXは2006年まで生産、世界で累計1万8734台を販売。そのうち日本での販売台数はType-RやType-S、Type-Tなどを含めて7415台である。国内では、いまだに6600台ほどが動態保存されているという。
その後、しばらくの間生産が休止していたNSXは、2017年にハイブリッドシステム搭載のスーパースポーツとして2代目がデビューした。

関連する投稿


スカイラインGT-R - 第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32

スカイラインGT-R - 第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32

第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32も、そろそろ旧車とかネオクラシックと呼ばれる世代になってきたね。


フェアレディZ | 日産 - アメリカでも大ヒット

フェアレディZ | 日産 - アメリカでも大ヒット

日産のスポーツカーといえばスカイラインと並び称されるフェアレディZ、これは初代のS30型だね。


2000GT | トヨタ - ため息がでるような美しいボディライン

2000GT | トヨタ - ため息がでるような美しいボディライン

日本の旧車の最高峰といってもいい、トヨタ2000GTだ。 いつみてもため息がでるような美しいボディライン、素晴らしい内装、そして音もいいという素晴らしさだね。


【クルマニアックイズ】422本目

【クルマニアックイズ】422本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!


ガゼール | 日産 - シルビアの兄弟車として人気のクーペ

ガゼール | 日産 - シルビアの兄弟車として人気のクーペ

シルビアの兄弟車として人気を誇ったガゼール。グリルやピラー、テールランプのデザインが少し異なる程度の、「一卵性双生児」と言われていたね。


最新の投稿


モルタル住宅

モルタル住宅

昭和を感じる生活用品や、家電、建物など、庶民文化研究所所長 町田忍画伯が描くイラストコレクション「昭和レトロ画帖」。今回はかつてよく見た建築資材モルタルを利用した「モルタル住宅」についてご紹介。


スカイラインGT-R - 第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32

スカイラインGT-R - 第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32

第2世代のGT-Rとして爆発的な人気を誇ったR32も、そろそろ旧車とかネオクラシックと呼ばれる世代になってきたね。


【クルマニアックイズ】430本目

【クルマニアックイズ】430本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!


空の旅のお供。航空会社のアメニティその1 マッチ・石鹸・絵葉書

空の旅のお供。航空会社のアメニティその1 マッチ・石鹸・絵葉書

日本国内はもちろん、遠く海外まで我々を運んでくれる究極の移動手段、飛行機。その機内で手に入るアイテムが、各航空会社で配られるアメニティだ。今回は様々な場所に移動している庶民文化研究所所長・町田忍さんに空の旅のアメニティを紹介してもらった。


【クルマニアックイズ】429本目

【クルマニアックイズ】429本目

あなたの車愛を試すガチンコ三択クイズ!今すぐチャレンジ!