【旧車】ベレットGT│いすゞ 日本車で最初に“グランツーリスモ”を名乗った小さなクーペ

【旧車】ベレットGT│いすゞ 日本車で最初に“グランツーリスモ”を名乗った小さなクーペ


■「ベレG」の愛称で親しまれた、いすゞ謹製スポーツカー
・モデル名 :ベレット1600GT
・世代/型式:1963~1974年/PR90型
・メーカー名:いすゞ自動車
・搭載エンジン:直列4気筒OHV 1579cc
 ボア×ストローク83.0×73.0mm 
・最高出力 :88ps/5400rpm
・最大トルク:12.5kg.m/4200rpm
・トランスミッション:4速マニュアル(フロアシフト式)
・サスペンション:前ダブルウィッシュボーン独立+後ダイアゴナルスイングアクスル独立
・ボディサイズ:全長4005×全幅1495×全高1350mm
・ホイールベース:2350mm
・ホイール/タイヤ:5J×13スチール+175/70HR13
・最高速度:160km/h
・車両重量:940kg
・販売時期 :1964年
・生産台数 :17,439台

いすゞ自動車は第二次大戦以前、トラック&バスを製造する大型商用車専業メーカーだった。そのいすゞが、戦後に乗用車生産へ進出する。1953年(昭和28年)から英国の大衆車ヒルマンのノックダウン生産を開始。そこで乗用車製造のノウハウを獲得する。1961年(昭和36年)に初の自社設計のミッドサイズ・セダン「ベレル」を発表した。さらに2年後の1963年、ヒルマンの後継車として完全オリジナル設計の意欲作である新型「ベレット」をデビューさせた。ベレットとは、「小さなベレル」という意味を持つ。

はじまりはベレット・セダンとともに置かれたプロトタイプクーペから

いすゞベレット1500

いすゞ・ベレットは1963年10月に東京・晴海で開催された「第10回全日本自動車ショー」で、いすゞ・ブースで展示・発表された小型セダンだ。発売はその年の11月。1.5リッターのガソリン車と1.8リッターディーゼル車が用意され、それぞれスタンダードとデラックスの2グレード構成というラインアップだった。

ベレットは小型ファミリーセダンではあるが、欧州的な斬新なスタイリングを持ち、4速MTフロアシフト、独特なスイングアクスルの独立式リアサスペンションを採用するなど当時の国産車では稀なスポーティセダンだ。

そして、モーターショーで、このベレット・セダンのほかに、ブースには魅力的なプロトタイプクーペがさり気なく置かれてあった。1500GTと名付けられたモデルである。

高速時代幕開けに登場、日本車初の「グランツーリスモ」を名乗る

翌1964年4月、このクーペをベースにしたベレット1600GTがデビューする。プロトタイプに搭載されていた1471ccの直列4気筒OHVエンジンは、1579ccに排気量をアップしていた。日本では東京オリンピックが10月に開催されるため、首都高速の開通や新幹線の開業、名神高速道路の開通など、まさに高度成長期に突入した時代だった。

ベレット1600GTは、日本車で初めて「GT:グランツーリスモ」を名乗ったクルマだ。
デビュー時のカタログには、
「GT、つまりGran Turismoは、FIA(国際自動車連盟)のインターナショナル・スポーティング・コード附則“J”の項に『経済性を考慮せず最高性能と最大の快適性を求める顧客のために、少量生産されるクルマ』と定義されています」と記されていた。

ベレットGTが標榜したのは、まさにこの「グランツーリスモ」だった。

排気量を拡大してベレットGTに搭載された直列4気筒OHVのG160型エンジンは、ボア×ストローク83.0×73.0mmのショートストロークタイプ。9.3と高めの圧縮比に2連装SUキャブレターによって88ps/5400rpmの最高出力と12.5kg.m/4200rpmの最大トルクを発揮した。このスペックは1.5リッターセダンのエンジンを25psと1.3kg.m上回る値だった。

組み合わせたトランスミションは4段のフロアシフトで、最高速度は160km/h、0-400m加速は18.3秒という性能を叩き出していた。

2ドアクーペのモノコックボディのディメンションは、全長×全幅×全高4005×1495×1350mm、ホイールベース2350mmと非常にコンパクト。車両重量は940kgだった。

このボディ&シャシーを支える足回りはセダンを踏襲する。フロントサスペンションは当時一般的だったダブルウィッシュボーン+コイル独立と堅実な設計だ。が、リアはスイングアクスルにコンペイセイターを組み合わせた、極めて凝った設計のダイアゴナル式スイングアクスルの独立懸架だった。

細かなマイチェンを繰り返しモデファイするGT

当時のいすゞ自動車は、まだ乗用車よりもトラックなどの商用車製造がメイン事業のメーカーだったが、高度経済成長にともなって生活水準は急速に向上した時代だ。一般生活者のライフスタイルや価値観は多様化するなかで登場したベレットGTは、消費者ニーズに敏感に反応する必要に迫られたのか、マイナーチェンジやパーツの仕様変更を頻繁に繰り返す。

ベレットGTは、1964年4月にデビューして、その半年後の9月に早くもマイナーチェンジを受ける。エクステリアはフロントデザインが大きく変化した。4灯式ヘッドライトを丸形2灯式に改め、バンパーに小型のフォグランプを配置。マフラーがシングルからツイン出しに変わった。また、フェンダーミラーが砲弾型のスポーティな「ベレGミラー」と呼ばれる形状となった。同時に、ブレーキは日本車としては初のディスクブレーキを前輪に採用した。
また、このマイナーチェンジを機に、セダンと同じエンジンを積んだ1500GTがラインアップに加わるも、翌年には生産中止となる。

1966年、2度目のマイナーチェンジが実施される。大きなポイントはパワーユニットの換装だ。それまでのG160型からG161型へ積み替えられたのだ。G161型のボア×ストロークは82.0×75.0mmで、排気量は1584ccに拡大したが、G160型との関連はみられない、まったくの新型だった。そして、このエンジンのアウトプットは、最高出力90ps/5400rpm、最大トルク13.0kg.m/4200rpmに向上した。この結果、最高速度向上は無かったが、0-400m加速は18.0秒に短縮した。

ベレット1600GTファストバック

同時に、受注生産という形で、1600GTファストバックが加わる。これは、ノッチバッククーペのリアウィンドウをなだらかに傾斜させトランクリッドまでほぼ直線でつないだ、後に登場するセリカなどのトヨタ製リフトバック・モデルを思わせるクーペだった。ただ、リフトバックのような大きなリアゲートでは無く、あくまでトランクであった。が、リアシートを倒して荷室を拡大できるトランクスルー機構を備えたのが新しい。

117クーペのエンジンを移植した1600GTR登場

ベレットGTは1968年3月に再度マイナーチェンジを受ける。ヘッドライトが丸形4灯式に戻り、テールランプの形状も台形基調の特徴的だったデザインが変更された。
そして、翌1969年に搭載エンジンが、それまでのOHVからSOHCにスイッチする。アルミ合金製のシリンダーヘッドを持った新エンジンは排気量こそ変化はないが、圧縮比が9.7まで高められ、最高出力は103ps/5800rpmにまでアップした。このエンジン換装で最高時速は、170km/hに達したと記録に残る。

GTユニットのSOHC化と時を同じくして1969年9月、エポックメイクなモデルが追加された。ベレG最強モデルとなる1600GTRの登場だ。ボンネットの下に収められたエンジンは、前年にデビューした117クーペのために開発されたG161W型のDOHCユニットだ。G161W型の排気量はGTモデルのOHCと同じ1584ccだが、圧縮比は遂に10.3まで高められた。そこに2基のソレックスキャブレターを搭載して、最高出力120ps/6400rpm、最大トルク14.5kg.m/5000rpmを得た。これによって、最高速は190km/hに達し、0-400m加速は16.6秒という俊足モデルとなった。

GTRのエクステリアデザインも普通のGTと比べて大幅にアグレッシブな造形となった。フロントバンパーが2分割され、中央にナンバープレートを配し、その左右に大型フォグランプをレイアウトした。また、ボンネットはマットブラックに塗られ、ボディサイドにやはりブラックのストライプが入る。フェンダーミラーやワイパーもブラックで仕上げられた。
インテリアでは専用のハイバック・バケットシート、本革巻きステアリングにウッド製シフトノブが装着された。

後継モデルの登場無く、1万7439台を生産してベレGの歴史を閉じる

結果、1964年にデビューしたベレットGTは、1970年に115psの1817cc・SOHCエンジンを搭載した1800GTを追加。1973年まで生産された。いすゞの公式資料によると、ベレットの総生産台数は17万0737台。うちGTは1万7439台だった。

当時のいすゞ自動車という会社は、まだトラックなどの製造が中心だったことは、既に述べた。それが原因だったのか、同社初のセダン「ベレル」、そしてこの「ベレット」、名車の誉れ高い「117クーペ」など1960年代デビューの同社のモデルは、デビュー後に一度もフルモデルチェンジを受けることなく市場から去って行った。その後のスペシャリティカー「ピアッツア」を含めてエポックメイキングなクルマとして絶賛されながら、次世代モデルの開発費まで捻出できなかったのであろうか。ある意味、いすゞ製スポーツカーの悲劇でもある。

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