『大人の秘密基地』を作ろう! part 1

『大人の秘密基地』を作ろう! part 1

いい感じで会社が借りた倉庫の一室をリスニングルーム(正しくは試聴室)に改造する許可をゲットした私。いよいよDIYによる部屋作りが始めようとしたのですが、正直どこから手をつけたものか……。


理想とのあまりの違いに立ちすくむ

正式に総務(つまり会社)から倉庫の一室を試聴室にリフォームしてよい、という許可は得ることに成功しました。しかし、そこからマッハで作業が進んだかというと決してそうではありませんでした。

「こんな狭い試聴室、自分の力だけで十分だぜ」なんて息巻いてみたものの、正直に告白してしまえばカナヅチだってノコギリだって、ちゃんと使うのは中学生のとき以来です。昨年、息子の幼稚園で父の日のイベントとして『親子で工作』というものがありまして、まあ親子で一緒に板切れから船を作ってプールで走らせる、という簡単なものでしたが、それすらクラスでビリ。仕事の都合で代理参加していたママさんにも負ける始末。クギをまっすぐ打つだけで、木を直角に切るだけで一苦労したのでした。


そんな私がどうして「ひとりでDIY」なんていう自信があったのかといえば、ネットで実際にやった人のブログが沢山あるからなのです。

すごい人はボロボロの中古住宅をひとりでまるっとリノベーションしてしまう人だっていたのです。
それはもう和室を洋室に、なんて序の口。それはもう素敵なお宅に仕上げていました。
しかもブログを見る限りとても簡単そうに……。

倉庫を訪れては入り口で佇む……を繰り返す

電気は通しました。とりあえず掃除のために中古の掃除機もハードオフで買ってきました。さらにだんだん暑くなってきたので、ポケットマネーでウインドーエアコンまで、これもハードオフでゲット。ラジカセでラジオなんかかけながら、そこそこ快適に過ごせる環境は整ってきました。しかし、目標は「音がガンガン鳴らせて」「機材の音が評価できる」試聴室だったはず。ガリガリ君を食べながら資料が読めることではないのです。

とはいえ、どこから手をつけていいかまったく分からず……いや、すべきことはまあまあ分かっているのです。昨年、物件を探し始めたころから、何度も何度も繰り返し繰り返し脳内シミュレーションを実施してきたのですから。「まずあそこをああして、ここをこうしたあと、こっちをこうして……」と手順は分かっているつもりです。ただ、それが正しいのかわかりません。実際に部屋にクギを打っていいのか、壁にノコギリを入れていいのか、踏ん切りがつかないというか…。

また和室を洋室にした人はけっこういるのです。が、このくらいの規模の防音室をDIYで作った人はあまりいません。そこで『防音室』『DIY』とググると真っ先に出てくる『ピアリビング』という会社にヘルプを求めることにしました。


 *  *  *


ここでちょっと横道に逸れますが、メディアでいうところのヘルプというのは、いわゆる『タイアップ』ということになります。通常人気のあるメディア(とか人気ユーチューバー)だと「紹介するので○百万ください」ということになるのですが、私たちくらいの弱小メディアだとせいぜい「物品を提供(あるいは安く)してください」ということになります。

ピアリビングさんはDIYで自分の部屋に防音処理を施すためのアイテムを販売されている会社です。今回のヘルプはもちろん防音用の部材を分けていただきたい、というものですが、それよりも切実なお願いとして「作り方を教えてください!」ということがありました。今回のことに限らずメーカーさんやショップさんに「PRするのでお取り扱いの物品をください」というのは意外と高い確率で成立するものです。

ただし今回は、まずベースがほぼ廃屋の狭い和室、さらに施工の仕方も教えてほしい、というとても勝手なお願いでした。

とりあえず企画書を書き、現状の部屋の写真を添付したうえで、ピアリビングさんのホームページ経由でメールしました。
「自分がピアリビングさんの担当者だったらドン引きだよなー」なんて思いつつ、祈る思いで待つこと数日。
ピアリビング東京ショールームの梶原さんという方から「詳しく話しを聞きましょう」というメールが! アポイントを取り、伺う日時が決まったあとも「本当にあの写真見てくれたのかなあ」と半信半疑。

そんな気持ちのままピアリビングさんに伺う日はあっという間に来てしまったのでした。

ビーバー風カツに舌鼓を打つ

ピアリビングさんの東京ショールームはJR神田駅から3~4分のところにあります。表通りからちょっと入ったところのビルの3階。ちょっと早く着いてしまったのであたりを散策。すぐ裏に私好みの洋食屋さんを発見。午前中だったのでまだやってなかったのですが、きっとお昼時はサラリーマンが満載になるはず。アポが11時なので、さくさくっと打ち合わせを終えればお昼のラッシュ前に駆け込めるかな。いや駆け込もう。…などと考えているとすでに10分前。そろそろ伺っても良い頃です。

小さなビルです。エレベーターの大きさを見るとフロアの広さがだいたい想像できますが、それほど大きくはなさそうです。

が3階で降りてみると、いきなりDIYな雰囲気が!
ウッドデッキ風の入り口と一歩中に入ると吸音材が取り付けられた壁のサンプルや防音カーペットのサンプルがたくさん!
これこれ!

いきなりテンションが上がります。

「お待ちしてました」と迎えてくれたのはにこやかでやさしそうな中年の男性。人当たりが良さそうな方ですごくほっとしました。梶原さん、なんと東京ショールームの店長さんでした。

「拝見しましたよ企画書。『秘密基地』いいですね!」といきなり好感触。ただ、こちらとしてはまだまだ半信半疑なので、物件がどんなにボロいかを力説。さらに「どこから手をつけていいか分からないんです」と泣きついてしまいました。

むしろ梶原さんに慰められ励まされるという変な状況の中「ではいちど現場を拝見しますよ」と、わが『秘密基地(になる予定)』への来訪を約束してくださいました。

「詳しくは実地検分後」ということではありましたがざっと「こんな感じで考えてます」と天井や壁に使う吸音材、床材などをサンプルを示して説明してくれましたが、正直言うとこんなにすんなり進むと思っていなかったので、あまりの嬉しさにほぼ上の空。はい、はい、と返事はしていたものの、百戦錬磨のプロフェッショナルが力と知恵と材料までいただけるとなれば、もう大船に乗った気で、内心「良きに計らえ」状態でした。

そんなこんなでサクッと初めての打ち合わせを終え、ダッシュで洋食屋さんに駆け込みます。薄暗い店内にはまだ客はまばら。
案内されるままカウンターに付き、カウンターのおばさんが「今日のランチは…」と説明するのももどかしく「ビーバー風カツをください」とオーダーしました。朝、店の前に掲げてあったメニューを見てから気になっていたのです。

ところが料理が出てくるのを待っている間に、ぞくぞくとサラリーマンが来店。そして来る人来る人「ランチ」を注文しています。ランチはハンバーグ。あちゃー、失敗したかな…。とちょっと自信をなくしている間にビーバー風カツが到着。

うーん、揚げたての油の香り、サイコー。さっそくナイフを入れてみると、肉と衣の間に何やら入っています。一切れ口に入れてみると香ばしいネギの香り。ソースというより餡です。ちょっと中華風?うーん美味。なんか餃子も一緒に食べてる気分になります。切る、口に運ぶ、咀嚼する、飲み込むという一連の流れが止まりません。最後にキャベツをお決まりのソースで平らげるころには、むしろランチを食べている人々に対する優越感で全身は満たされていました。

気分は井之頭五郎で腹をさすりながら店を後にしました。
が、会社に戻る途中、神田駅のホームで、実地検分に対する不安がふつふつと湧き上がってきたのです。「現地を見て『これは無理ですよ』と言われたらどうしよう……」。暗澹たる気持ちで山手線に乗り込んだのでした。

(本記事はステレオ時代にて掲載いたしました『成るか念願の試聴室』関連の記事を改題のうえ大幅に加筆修正したものです)

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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