【旧車】アストンマーティンDB5│アストンマーティン・ラゴンダ 映画「007」のボンドカーとして一躍脚光を浴びた

【旧車】アストンマーティンDB5│アストンマーティン・ラゴンダ 映画「007」のボンドカーとして一躍脚光を浴びた


■英国を代表する男に選ばれた、優雅なプレミアム・ロードカー
・モデル名 :アストンマーティンDB5/Aston Martin DB5
・世代/型式:1963年/DB5型
・メーカー名:アストンマーティン・ラゴンダ(英)
・搭載エンジン:直列6気筒DOHC型 ボア×ストローク96.0×92.0mm 3995cc
・最高出力 :282ps/5500rpm
・最大トルク:39.8kg.m/3850rpm
・トランスミッション:オーバードライブ付4速/5速マニュアル(フロアシフト式)
3速オートマティック
・サスペンション:前ダブルウイッシュボーン+後横置きリーフ独立
・ボディサイズ:全長×全幅×全高4572×1676×1320mm
・ホイールベース:2490mm
・最高速度 :240km/h
・車両重量 :1465-1470kg
・販売時期 :1963-1965
・生産台数 :1023万台

アストンマーティンは、1913年にロバート・バムフォードとライオネル・マーティンが、レーシングドライバーでもあったルイス・ズボロフスキー伯爵の資金援助を得て設立したレーシングコンストラクターの「バムフォード・アンド・マーティン」が起源だ。
そして完成した1号車がレースで活躍し、ブランド「アストンマーティン」が確立。1923年にはロードカーの販売にも乗り出す。しかし、モータースポーツに傾倒するあまり、その経営はつねに不安定で何度も倒産の危機に見舞われていた。

今日のアストンマーティンの基礎を作ったDB

企業法人として一応の安定を見るのは、第二次世界大戦後の1947年、英国の実業家デイヴィッド・ブラウン氏が率いる、トラクターや歯車メーカーなどの大企業グループ傘下に収まってからだ。デイヴィッド・ブラウン・グループに入って間もなく、高級車メーカーであるラゴンダを吸収、「アストンマーティン・ラゴンダ社」の誕生である。そして、それまでの1.5〜2リッタークラスのライトウエイトスポーツの生産から、ラゴンダ製の大きめのエンジンを搭載したモデルの生産に舵を切り、1948年には「DB1」を送り出す。その後、続く「DBシリーズ」の冠名“DB”は、デイヴィッド・ブラウンのイニシャルであるのは言うまでもない。

アストンマーティン・ラゴンダ ※

熟練のマイスターが1台ずつ手塩にかけて作り上げたビスポークマシン

戦後、プレミアム・ロードカーを生み出すアストンマーティンのクルマの特徴は、ひと言でいうと「ビスポーク・マシン」だということ。“ビスポーク”とは、英国ロンドンの街区、セビルロー(サヴィルロー)に並んだ高級紳士服の仕立屋がつくる、完全オーダーメイドの紳士服製法のこと。アストンマーティンもマイスター(職人)が1台ずつ手塩にかけて作り上げたクルマだったから、こう呼ばれた。

英国のセビルロー街区 日本語の「背広」の語源となったとも言われる

そしてそのアストンマーティンは1963年、本稿のテーマであるビスポーク・クーペ「DB5」をリリースする。このクルマが映画「007シリーズ」の1964年公開「007ゴールドフィンガー」で、ボンドカーに抜擢され、アストンマーティンは世界的な知名度を得る。

かつて童友社から発売されていた、007仕様のDB5のプラモデル(1/24)

画期的な軽量 “スーパーレッジェラ構造”の「DB4」登場

DB5には、その前身となる「DB4」モデルがある。1958年にロンドン・モーターショーでデビューしたDB4は、DB2などの後継とされるが、そのボディ構造は一新されていた。特徴をひと言でいうと、ボディがイタリアのカロッツェリア、トゥリング社特許の軽量構造「スーパーレッジェラ」が用いられた。これによってDB2よりも大型化したにもかかわらず、車両重量はほぼ同じ1300kgだった。

フロントに搭載したエンジンも新開発だ。1957年のレーシング・アストンマーティンDBR2に積まれた直列6気筒である。ボア×ストローク92×92mmというスクエアな3670ccは、チェーン駆動のDOHCで、8.2の圧縮比と2基のSUキャブレターを組み合わせて240ps/5500rpmを発揮した。
サスペンションも新設計だ。フロントはトレーリングアーム式からダブルウィッシュボーンに進化し、リアのリジッドアクスルもパナールロッドがワッツリンクに変わった。さらにステアリングはラック&ピニオンに、ブレーキもドラムから一挙に4輪ディスクとなる。DB4は、それまでのDBシリーズとはまったく別モノのグランドツアラーに進化したのだ。

アストンマーティン・DB5

DB5へと正常進化を遂げる

DB5はこのDB4の基本的なメカニズムとフォルムを受け継ぎ、細部をリファインした正統な進化バージョンだ。ボディサイズは全長×全幅×全高4572×1676×1320mm、ホイールベース2490mmとDB4とまったく同一だった。
ボディ形状はサルーンと呼ばれる4座ファーストバック・クーペのほかにドロップヘッド・クーペ、つまりオープンモデルも用意された。また、ドロップヘッドには別途スチール製のハードトップの用意もあった。

メカニズムも概ねDB4からのキャリーオーバーだが。パワーユニットはやや異なる。搭載エンジンは軽合金製シリンダーブロックとヘッドを持つ直列6気筒DOHC。ただ、排気量はDB4の3670ccのボアを96mmに4mm拡大、ボア×ストローク96×92mmの3995ccにアップされた。加えて、8.9の圧縮比となりSUキャブレターを3連装とすることで最高出力282ps/5500rpm、最大トルク39.8kg.m/3850rpmを発揮するシステムとなった。これは、先代DB4のGTに匹敵する強力な心臓を得たことになる。

組み合わせたトランスミッションは、デイヴィッド・ブラウン製のオーバードライブ付き4速ギアボックスだった。が、その後、信頼性アップを狙って、ZF製5段ギアボックスに変更された。また、ボルグワーナー製のオートマティックもオプションで用意された。そのほかのメカであるサスペンション、ステアリング、ブレーキなどはDB4を受け継いでいる。

その後、1964年9月にDB5ヴァンティッジ仕様がリリース。搭載エンジンが改良され、排気量はそのままに、キャブレターをウェーバー製45DCOEにグレードアップすることで315ps/5750rpmのアウトプットを獲得した。

わずかに2年間の生産で1023台が世に送り出されただけ

アストンマーティン・DB6

しかし、翌1965年9月、アストンマーティンDB6の登場で、DB5の生産は、わずかに2年で終える。総生産台数はすべてのバリエーションを含めて1023台だった。
DB5サルーンの12台は、英国コーチビルダー、ラドフォード社によってスポーツワゴンに改造された。シューティングブレークと呼ばれるこのモデルは、2ドアのままルーフをリアエンドまで延長し、リアゲートを備えたモデルだった。このシューティングブレークは、その後のアストンマーティンでも派生モデルとして少数だけ生産された。

なお、DB5を受け継いだDB6は、全長を50mm延長、ホイールベースを95mm延ばしたダックテールスタイルに変身。パワーステアリングやエアコンなどがオプションで用意された。DB6は1970年11月まで生産される。

映画「007シリーズ」のボンドカーの行方

シルバーのアストンマーティンDB5は、前述したようにショーン・コネリーがジェームス・ボンド役を演じた映画007シリーズ第3作「ゴールドフィンガー」が思い浮かぶ。その映画の撮影には2台のDB5が用意されたという。書籍「The Most Famous Car in the World」を著したデーブ・ウォーラル氏によると、2台のうちの1台は“効果車”と呼ばれるボンド用の武器が装着されたクルマだった。もう1台は“ロードカー”と呼ばれ、おもに走行シーンの撮影に用いられたという。
効果車は10年ほど前に盗難に遭い行方が分からないが、ロードカーは永年米国人のコレクターが所有。2010年にオークションにかけられ、291万2000ポンド(約4億円)という価格で落札された。


ところで、英アストンマーティンは2018年8月20日、映画「007シリーズ」の制作会社であるイーオンプロダクションズと共同で「DB5」を25台限定で再生産すると発表した。今回、再生産するDB5は映画の効果車に倣ったモデルで、回転式のナンバープレートなどを装備。ボディも劇中車とおなじシルバーパーチと呼ばれる特別なシルバーに塗られるという。
生産は、かつてDB5が生産されたニューポートパグネルを拠点とする、アストンマーティンのヘリテージ部門「アストンマーティン ワークス」が担当。価格は275万ポンド(約3億9000万円)だ。デリバリーは、2020年から始まる予定だ。

経済変動の波に飲み込まれて変遷するアストンマーティン

アストンマーティンは、DB4やDB5を製造した60年代が、ある意味で絶頂期だった。1972年、親会社のデイヴィッド・ブラウン・グループが経営不振に陥る。アストンマーティンを成長軌道に乗せたデイヴィッド・ブラウンは、アストンマーティンの経営権を手放さざるを得なくなってしまう。そして、ウィリアム・ウィルソン率いる投資グループ「カンパニー・ディベロップメント」に経営権が移り、以降のモデル名から「DB」の文字が消える。

その後もアストンマーティンには難題が降りかかる。最大の問題は70年代のアメリカ・カリフォルニアなどで施行された排気ガス規制だった。同社はこれに対応する技術を持たず、米国という最大の市場を失う。
以降、アストンマーティンの経営は曲折し、1987年に米フォード傘下に入り、ランドローバーやジャガーとともにフォード主導のPAG(Premium Automobile Group)の一翼を担う。が、しかし、これも長くは続かない。アメリカの同時多発テロ事件以降、フォード本体の経営状態が悪化、フォードは2007年にアストンマーティンを売却する。

現在、イタリアの「インベスティンダストリアル」が37.5%の株式を取得し、独のダイムラーと提携関係にある。2016年にはメルセデスAMGから供給されたエンジンを搭載する「DB11」を発表。今後、発表となるアストンマーティン車のエンジンはメルセデスが供給することが発表された。

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