【旧車】メルセデス・ベンツ300SL│メルセデス・ベンツ メルセデス・スポーツの真骨頂

【旧車】メルセデス・ベンツ300SL│メルセデス・ベンツ メルセデス・スポーツの真骨頂


■“カモメの翼”が特徴的な、エポックメイクなスポーツカー
・モデル名:メルセデス・ベンツ300SLクーペ
・世代/型式:11954年/W198型
・メーカー名:ダイムラー(独)
・エンジン:M198型2996cc・直列6気筒SOHC直噴ガソリン
・ボア×ストローク85.0×88.0mm
・最高出力:215ps/5800rpm
・最大トルク:28.0kg.m/4600rpm
・トランスミッション:4速マニュアル(フロアシフト式)
・サスペンション:前ダブルウイッシュボーン独立/後スイングアクスル独立
・ボディサイズ:全長×全幅×全高4520×1790×1300mm
・ホイールベース:2400mm
・タイヤ:6.70-15
・車両重量:1236kg
・生産台数:1400台

内燃機関を動力源として走る自動車の誕生以来、その歴史そのものと言えるダイムラー・ベンツの歴史を彩った名車のなかで、「もっともエポックメイクなクルマ」、なかでも第2次大戦後に誕生したスポーツカーにフォーカスしたとするなら、多くの人が、このモデルを挙げることだろう。
「メルセデス・ベンツ300SL」である。

メルセデス・ベンツは終戦の翌年、1946年に直列4気筒エンジンを積んだ量販モデル「170V」の生産を早くも開始した。戦前の大衆車170の後継モデルだ。このモデルは量産車として世界で初めてサスペンションに4輪独立懸架を採用、ボディサイズは全長×全幅×全高4285×1580×1610mmで、ホイールベースが2845mmだ。このクルマは1953年まで生産され西ドイツの戦後復興の象徴となった。

次いでメルセデス・ベンツは1951年に、新開発の直列6気筒SOHCエンジンを搭載した中型サルーンの「220」とプレステージモデル「300」を同時に発表。結果、メルセデス・ブランドは戦前に匹敵する乗用車ラインアップとなり、なかでも全長5m近い堂々たる300系サルーンのデビューでダイムラー社はプレステージカー・メーカーとしての名声を再び獲得した。

レーシングプロトタイプの登場

ところで戦前のメルセデス・ベンツは、もうひとつ輝かしい側面をも持っていた。高性能スポーツカーメーカーという側面だ。当然ながら戦後のダイムラー社内にも新しいスーパースポーツの復活を渇望する声が大きくなっていた。

同社はその一歩を踏み出す。まず1952年、モータースポーツの世界に向けて1台のレーシング・プロトタイプを送り出す。「メルセデス・ベンツ300SL」である。
チーフエンジニアはルドルフ・ウーレンハウト、彼の上司で技術担当役員のフリッツ・ラインゲル、レーシングマネジャーのアルフレード・イノバウアが開発チームの中心となったプロジェクトだ。

ドイツ語で軽量なスポーツを意味する「Sport Leicht」から名付けられたレーシングモデル300SLは、複数の鋼管で構成された軽量・強固なマルチチューブラー・スペースフレームを採用した。それは、後に登場する数多くのスーパースポーツにも採用され、現代でもレーシングマシンの基本シャシー構造のひとつだ。このシャシー構造が300SLの最大の特徴である。

止むを得ず採用となった特異なドア「カモメの翼」

ただしこのスペースフレーム構造はサイドシルが高くて幅広くなるという欠点も持ち合わせていた。いわゆる敷居が高く、幅が広く、乗降性が極端に悪い。そこでメルセデスはフレーム構造のシャシーに載るオールアルミ製ボディに、真上に跳ね上がるドアを採用した。これがカモメの飛んでいる姿に似ていることから“ガルウィング”と後にニックネームが付けられるスタイリング上の大きな特徴となるわけだ。

シャシー&ボディ構造以外のメカニズムは、300系からのキャリーオーバーだ。まずエンジンは300S用のM186型2996cc直列6気筒エンジンの圧縮比を8.0にアップさせ、ソレックスキャブレターを2連から3連に換装。最高出力は171ps/5200rpm、そして最大トルクは25.9kg.m/4200rpmにまで高められた。しかも搭載に当たって、ボンネット高を低く抑えるため縦置きエンジンは左に45度傾けられた。
一方、足回りは300系と同じ、前ダブルウイッシュボーン式、後スイングアクスル式を踏襲。ブレーキは4輪ともにアルフィン・ドラム式のままだった。
SLの名に恥じない車重870kgとなった超軽量の300SLプロトタイプは、最高速度240km/hと公言していた。

全5戦に参戦して4勝をあげる活躍と市販車発表

1952年の「ミッレミリア」でレースデビューした300SLプロトタイプは、いきなり2位~4位に入賞し、「ル・マン24時間」では総合優勝を果たす。また、世界一過酷な公道レースとされる「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」の優勝は、北米のメルセデス・ファンに強い印象を残す。この年、300SLプロトは他2戦のレースに参戦してすべて優勝という圧倒的な成績を収め、当初の予定どおり、この年限りでモータースポーツから撤退する。

再びメルセデス・ベンツ300SLが人々の前に現れるのは、2年後の1954年2月、米ニューヨーク・オートショーのメルセデス・ブースだった。ロードバージョンの2座スポーツカー「300SLクーペ」として再来したのだ。
NYショーを飾ったロードモデルの300SLは、マルチチューブラーのシャシー構造を踏襲。ただ、プロトタイプと較べると室内空間やラゲッジスペースの余裕を持たせるため、全長を300mm拡大した4520mm、全高も1265mmから1300mmへ僅かだが高くなった。が、1790mmの全幅や2400mmのホイールベースは同じだった。

エクステリアはフロント回りが彫りの深い立体的な造形となり、大きなメッキの前後バンパーを装着。前後ホイールアーチの上にフィンが付けられた。また、フロントフェンダーに大きなエア・アウトレットが設けられ、室内換気のためルーフ後端のリアウインドウの上部にも小さなアウトレットが開けられた。最大の特徴であるガルウィングドアはそのまま採用されたが、ドライバーの乗降性を改善するためにステアリングポストが折れる独特なシステムが備わった。

コクピットは高くて幅広い“敷居”のせいで、1790mmもある全幅の割にはタイトだ。左ハンドルのステアリングを折り畳んで運転席に乗り込むのは、簡単ではない。完全にカーペットの内張で覆われたインテリアは、高性能スポーツカーというよりも豪華なグランツーリスモのそれだ。顧客の注文によってダッシュボードの素材や意匠は異なるが、写真のモデルはスパルタンなアルミ削り出しのパネルだ。大径のステアリング越しに並ぶ2連の大型メーターは左が回転計で、右が速度計だ。

搭載した直列6気筒エンジンは量産車として世界ではじめてボッシュ製燃料噴射装置が装着された直噴ガソリンエンジン、8.55まで高められた圧縮比から、215ps/5800rpmの最高出力、28.0kg.m/4600rpmのアウトプットを得ていた。エンジンフードとトランクリッド、そしてドアを除くパネルがアルミパネルから鋼板になったことで車両重量はプロトタイプの870kgから1236kgと大幅に増加した。しかし、ZF製リミテッド・スリップデフを備え、オールシンクロ4速マニュアルトランスミッションを組み合わせた300SLクーペの最高時速は260km/hと、世界最高水準のデータを掲げていた。

ドレス姿の御婦人をエスコートするために

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