『こんなものを買った』Technics SL-MA1

『こんなものを買った』Technics SL-MA1

私たち昭和世代にとってレコードは「オシャレ」なものでも「カッコいい」ものでもなく、当たり前にそこにあるメディアでした。そんなレコードと大人な付き合いができるプレーヤーを買ってみました。


気軽にレコードと付き合うならフルオートがぴったり

若者たちの間でレコードが流行っていると言われてしばらく経ちますね。もっとも若者たちは『レコード』とは言わずに『ヴァイナル』なんて洒落て言ったりしているようですが。

そんなブームのあおりか、中古のレコードプレーヤーやターンテーブルの値段がちょっと異常です。
といっても、高値で取引きされているのはマニュアルの定番機と高級機。ヤマハGT-2000やテクニクスSL-1200あたりから始まって、最近はデンオン(デノン)やパイオニアのマニュアル上級機まで値上がりしてきてます。(もちろんマイクロや海外製品は別格です)

そんな昨今ですが、最近『ステレオ時代』でも小さいながら試聴室を作りまして、「ちゃんとレコードが聴ける環境がほしいなあ」と思ったものの、定番ターンテーブルのあまりの値上がりっぷりにひるんでしまいました。

ただ、ふと考えると果たしてマニュアル機である必要はあるのでしょうか、と。別にスクラッチプレイとかする必要はないし、聴くのは一般的なレコードだけ。だったらオートマチックでも良いのではないでしょうか。そんな視点で中古の出物を探してみると、けっこう1万円くらいで良さそうなものがたくさんあるではないですか。

そんな中で今回目をつけたのが、このテクニクスのSL-MA1でした。1984年頃の製品です。
CDが発売されたのが1982年。1984年にはソニーの世界初のポータブルCDプレーヤー、D-50が発売されたこともあり、CDは爆発的に普及していきます。そんな新世代デジタルオーディオに席巻されつつあった時代に生まれたレコードプレーヤーでした。「ヤフオク!」で見つけたのですが、1万円ポッキリで落札しました(競合なし)。

届いてびっくり。針はカンチレバーが曲がっていてちょっと使う気になりませんでしたが、まあ美品といって差し支えないでしょう。


こんな上物がたった1万円というのにはいくつか理由があります。

①オートマチックであること
②カートリッジがT4P規格(後述)なこと
③もともと普及機(5万9800円)であること

ですが1万円でこれが手に入るなら大満足でしょう。

ちゃんと動くかな

1970年代、国産オーディオ業界は世界に打って出るため他国では真似できないようなレコードプレーヤーを作りました。それがダイレクトドライブです。

モーターというのはコギングというカクカク動く段差運動が起きます。それを吸収するためにベルトを介してターンテーブルを動かしたり、プラッターを重くしてイナーシャでコギングが起きないよう(わからないよう)滑らかな回転を実現していました。しかしベルトは交換が必要です。またベルトという遊びのある動力伝達を使うため、ある程度以上の精度を出すことも難しいのです。

そこでコギングの極めて少ない高精度なモーターで、ダイレクトにプラッターを回転させる方式が考えだされたのです。もっともモーターの素性が(正に)ダイレクトに反映されてしまうダイレクトドライブよりも、モーターの粗を隠せるベルトドライブの方が結果的に良い音になることを、海外の多くのターンテーブルメーカーは知っていました。とはいえ後発の国産メーカーがつけいる隙はここしかなかったといっても良いでしょう。

ソニーとテクニクス(松下電器)はほぼ同時にハイファイと呼べるダイレクトドライブ機を発表。その後各メーカーは日本ならではのエレクトロニクス技術で高精度・高信頼性を実現。ダイレクトドライブは国産ターンテーブルの伝家の宝刀として世界を席巻していったのでした。

SL-MA1はそんなダイレクトドライブ技術が頂点を極めた頃の製品。モーターはクォーツによるサーボモーターで、ワウフラッターは0.012%、回転偏差±0.002%という超高精度。これはベルトドライブの普及機では望むべくもありません。


一方トーンアームは、演奏開始時はボタンひとつで1曲目のアタマに針を落とし、終わると勝手にホームポジションに戻る、電子制御式のフルオートタイプ。もっとも駆動用のモーターこそついているものの基本はテクニクスが培ってきたトーンアーム技術が活かされたジンバルサスペンションを採用した本格的なものです。

さて美品です。ちゃんと電源も入ります。心配なのはちゃんと精度が出てるかな、ということで、ストロボスコープで回転数をチェックしてみました。

ストロボスコープはオーディオテクニカ製。

いついくらで買ったか忘れましたが、たしかオーバーハングをチェックするために買ったような…。これで回転をチェックするには発光器が必要となります。

最近は2〜3千円で簡易的なものも売っていますが、ホームセンターで売っているソケット付きケーブルとLEDのナツメ球で代用できます。(くわしくはコチラ→「オヤイデ電気のオーディオみじんこプログ」http://oyaide-blog.blogspot.com/2011/09/ledok.html


安いLEDだとしっかり50Hzで点滅してくれるのでご覧の通り50Hzの33RPMがピタッと……って写真だとみんな止まって見えますね…。

まあ、とにかく回転精度はバッチリでした。

ちなみにSL-MA1はフルオート機で、プラッターに開いた検出孔でレコードの大きさを検知して回転(針を落とす位置を決める)しますので、写真のように検出孔がむき出しになっていると、レコードが乗っていないと判断されてしまい、回転もしてくれません(回転してもすぐ止まってしまいます)。

仕方がないのでレコードを載せた上にストロボスコープを載せました。

針のこと

正直に言います。カートリッジって交換するの面倒じゃないですか?

私は面倒です。多分、SL-MA1が新製品だった当時もそう考えた人が多かったのでしょう。プラグインコネクタタイプのカートリッジというものがありました。交換は差し込むだけ。T4P規格といいます。専用のシェルがついたプレーヤーにしか使えません。

SL-MA1は本来通常のカートリッジが使えるシェルも付属していたのですが、今回入手したものは欠品していました。そもそもカンチレバーがひん曲がっていたのでカタログで交換針(EPS-33CS)を調べ、「ヤフオク!」で探してみるとありました!3個セットで6800円。安いのか高いのか分かりませんが、これで当分針の心配はなさそうです。

T4Pのカートリッジは自重が6g、標準針圧が1.25±0.25gなので、スケールで調べつつ針圧を合わせます。

アンチスケーティングも合わせて、これで準備完了!
試しにユーミンをかけてみます。うーんなつかし〜い!
ユーミンを一生懸命聴いてた中学生の頃はレコードしかなかったもんなあ。

師走の夜、レコード(ヴァイナルじゃないよ)のユーミンに耽る夜、なかなか幸せじゃないですか。SL-MA1買ってよかったー!

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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