【旧車】パンテーラ│デ・トマソ フォード+ギアとの絆が生んだ異色のロードカー

【旧車】パンテーラ│デ・トマソ フォード+ギアとの絆が生んだ異色のロードカー


■スーパーカーブームのただ中に誕生したスポーツモデルとして知られる
・モデル名 :パンテーラ
・世代/形式:-
・メーカー名:デ・トマソ(伊)
・時期   :1970~1994
・撮影   :会長、ミノ

フォードとカロッツェリア・ギアのコラボレーションで誕生した、異色のスーパースポーツ

スーパーカーブームで一躍注目を集めたデ・トマソ

デ・トマソ・パンテーラは1970年、日本ではスーパーカーブームのただ中に誕生したスポーツモデルとして知られる。しかしながら、ブームを牽引したフェラーリなどのエキゾティックなスーパーカーとはずいぶん異なった成り立ちのクルマだった。パンテーラの話に入るまえにデ・トマソ、そのものについて触れておこう。

アルゼンチン生まれのレーシング・ドライバー、アレッサンドロ・デ・トマソは、20歳代半ばまで母国で活動していた。が、1955年にイタリアに渡りマセラーティの前身であるOSCAのワークスドライバーに抜擢される。そこで知り合った裕福な米国人資産家の令嬢で女性レーサーのイザベルと知り合い、2年後に結婚。そしてふたりは、イザベルの実家の援助で1959年にレーシング・コンストラクター「デ・トマソ」を設立、フォーミュラ・マシーンなどを設計して世に送り出す。

そして、デ・トマソは、レースカーで培ったノウハウを活かしたロードカーの開発にも乗り出す。初めて世に送り出したのは、1962年に発表したオープンボディのプロトタイプで、2年後にクーペボディに換装して市販された。ローマ近郊のサーキットの名を冠した「ヴァレルンガ」である。

ヴァレルンガから始まるデ・トマソのロードカー

デ・トマソ ヴァレルンガ 1964-68 (出典:omniauto.it)

ヴァレルンガは、レーシングモデルそのものの構造を持ったロードカーだった。鋼管フレームにエンジンをミッドシップ搭載し、サスペンションは前ダブルウィッシュボーン、リアもIアームと逆Aアームを組み合わせた独立懸架式だった。

搭載エンジンは英国フォード製の1499cc直列4気筒OHVで、9.8:1まで高めた圧縮比を得て、2基のウェバーキャブを組み合わせて100ps/6000rpmを発生していた。ここから、デ・トマソとフォードのアライアンスともいえる関係が始まる。
FRP製のボディのコーチワークはイタリアのカロッツェリア・ギアが担当し、ボディサイズは全長×全幅×全高3840×1600×1080mm、車重は720kgと極めて軽量になっていた。

しかしながら、スパルタン過ぎたヴァレルンガは価格も日本円で203万円と高価で、50台ほどがつくられただけの失敗作に終わる。が、この仕事でデ・トマソは、フォードとギアという盟友を得ることとなった。

ヴァレルンガの失敗に懲りず、デ・トマソは第2弾の企画に乗り出す。
今度は米国フォードの大排気量V型8気筒エンジンを使い、ヴァレルンガの鋼管フレームを拡大したシャシーと組み合わせたモデルだ。
米国製の大排気量パワーユニットを搭載して世界最大のスポーツカー市場であるアメリカでの販売に主眼を置いた計画だった。

そして、1966年の伊トリノ・ショーでデビューしたのが、デ・トマソ・マングスタだった。
1967年から生産を開始したマングスタだったが、レーシングカーを成り立ちとするため高コストや実用性の問題で、ヴァレルンガ同様に販売は伸び悩む。

エキゾティックスポーツと一線を画するモノコックボディ

そこでデ・トマソは、コストダウンと量産に適したモノコックボディのスポーツカーを企画。加えてフォードとの提携関係を強めて、フォードの販売力をも利用する計画を実行に移す。こうした計画が生んだスポーツカーが1970年にプロトタイプが登場するデ・トマソ・パンテーラだ。

1970年に発売された初代パンテーラは、前述のようにコストダウンを図るためにモノコックボディを初めて採用した。
カロッツェリア・ギアがデザインしたボディは、全長×全幅×全高4270×1811×1100mmで、マングスタよりもピュアスポーツらしい雰囲気のモデルだった。が、鋼板で構成したモノコックボディ&シャシーの影響か、車重は1420kgに達した。

搭載エンジンは最高出力330ps/6000rpm、最大トルク46.0kg.m/4000rpmを発生するフォード製5.8リッターV型8気筒OHVエンジンで、完全に“素”の状態のユニットだった。これをミッドシップ搭載する。組み合わせたトランスミッションは5速マニュアル。汎用型エンジンを搭載するも太いトルクを利して、最高速度280km/hに達し、ハイテクなV型12気筒DOHCエンジンを搭載したフェラーリ365GTBやランボルギーニ・ミウラなど、ライバルが持っていた独特で官能的なフィーリングは皆無だったが、遜色ない高速性能を発揮した。

コックピットはスーパーカーの教科書通りのレイアウトだが、どちらかといえばシンプルだ。シートは本格的バケットタイプで、レーシングカーのようにファイバーに薄いクッションを張り、その上にビニールレザーが張られる。見た目よりは疲労が少なく、座り心地もいいとされた。

1994年まで生産された長寿モデル「パンテーラ」

1972年、装備の充実を図ったグレード「パンテーラL」が登場、グレード名の「L」はイタリア語で「豪華、贅沢」を意味する「Lusso」で、米国での販売を伸ばすための戦略的なグレードだった。反面、装備の充実で車重はさらに100kgほど増加した。

1973年にはさらなるパフォーマンスを追求したグレード「パンテーラGTS」が追加される。GTSのスペックは、エンジンのチューニング変更により、最高出力355ps/6000rpm、最大トルク50.1kg.m/4000rpmまで向上した。

1980年には、オーバーフェンダーやリアウイングを装着した「パンテーラGT5」が追加となる。その後、1984年にマイナーチェンジを受け「パンテーラGT5S」となる。

1990年には、エンジンが「フォード・マスタング」の搭載する4.9リッターV型8 気筒OHVに換装され、最高出力305ps/5800rpm、最大トルク46kg.m/3700rpmにスペックダウンする。

そして1991年、最終型となる「パンテーラSI」が登場した。このモデルは大幅にエクステリアが変更され、現代的で迫力あるイメージへと大きく変わる。ボディサイズは全幅が拡大され、全長×全幅×全高4350×1980mm×1100mmとなった。このモデルは1994年まで販売された。

1979年当時、パンテーラGTSのステアリングを握って試乗した、自動車評論家の徳大寺有恒氏は、講談社の自動車専門誌「ベストカー」の試乗記で、

「運転しづらいかといえば、そうでもなく、都内の大渋滞はともかくとして、少しでも動いていれば3速ギアはおろか、4速ギアでさえも走れる。その粘りは驚くほどだ。とにかく低速トルクが太いのだ。クラッチは当然重いがフェラーリ308GTBほどではなく、渋滞でもローのまま我慢していられる」 と記している。

そして、「パンテーラGTSの最大の魅力は、価格が安いことだ。安いといっても1080万円もするが、これはフェラーリ512BBやランボルギーニ・カウンタックなどに比べて明らかにリーズナブルなのだ。そして、私個人の驚きは、この種のスーパーカーでもけっこう都内を走らせることができるということだった」 と結論している。

パンテーラ(Pantera)、つまり英語のパンサー(Panther)で「豹」を意味するスポーツモデルは、デ・トマソ社とフォード、ギアの協働で生まれた。
この種のスポーツカーとしては、大量生産とコストダウンを重視して製作されており、これが、冒頭で述べたエキゾティックなスーパーカーと異なるという最大の理由である。

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