『ステレオ時代』でございます。

『ステレオ時代』でございます。

はじめまして。 不定期のオーディオ雑誌『ステレオ時代』を作っている澤村と申します。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ゴールデン横丁にお邪魔するのは初めてですので、まずはご挨拶させていただきます。


自己紹介代わりに、創刊時のお話を少し。

『ステレオ時代』はネコ・パブリッシングという出版社から年に2~4回発行されているムック本です。内容は昔の国産オーディオを中心に、あまりお金をかけずにオーディオを楽しみましょう、というコンセプトでやっております。もし機会がございましたら、一度お手にとっていただけると、「ああ、こういうことか」とお分かりいただけると思いますので、書店等でお見かけの際はぜひご覧いただけると幸いです。
さて、今回は自己紹介代わりに、創刊時のお話を少し。

『ステレオ時代』が誕生したのは、2013年12月でした。そもそも会社の営業筋から「高級オーディオ誌の動きが良いようなので、何か作れないか」と相談されたのが始まりでした。
社内で私に話が来たのには理由があって、以前社内の新企画コンペで『10万円で始めるホームオーディオ』という企画を提案したことがあったためでした。コンペでは落選していましたが、私の企画を営業の誰かが覚えていたようで、直に私に相談に来たとのことでした。


 *  *  *


2013年当時も今とあまり状況は変わらず、いや今よりももっと深刻な国産オーディオ不況でした。そんな中「高級オーディオ誌が好調」という情報も相当怪しい話ではありましたが、以前よりオーディオ誌をやりたい、と考えていた私には渡りに船の話でした。
もちろん『高級オーディオ』の本など作るつもりはなかったのですが、オーディオを知らない人にとっては10万円でも『高級』ですし、なんとでも言いくるめられるだろうと高をくくっていました。

とはいえ、当時の私は『カーマガジン』という月刊自動車誌の編集長で、月刊誌を作りつつ、もう一冊新規の本を立ち上げるというのは、とても大変なことは想像に難くありませんでした。ちなみに、ウチのような小さい出版社では、こうした当たるか当たらないか分からないような新規刊行物を作る場合は社内では担当はひとりだけ。あとは外部のフリーランスの編集やカメラマン、ライターを集めることが普通です。そこで真っ先に浮かんだのが、牧野茂雄氏でした。

以前私は『ニューモデルマガジンX』というクルマ雑誌の編集部に在籍していましたが、その編集部に入ったときに編集長をされていたのが牧野氏でした。
牧野氏は趣味で集めたオーディオを、入れ替える時などに身の回りの若者にそれまで使っていた機材を配るという、ありがたい趣味をお持ちで、私も過去何台かデッキなどをいただいてました。そういえばジャズのイロハを教えてくれたのも牧野氏でした。牧野氏は『ニューモデルマガジンX』の編集長を辞したあとフリーランスとして、やはりクルマ系のメディアでご活躍されていましたが、もともと顔の広い方ですのでオーディオ評論家の方や、メーカーの方にもお知り合いが多いと聞いたことがありました。


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さっそく牧野氏に相談に行ったところ、「安くオーディオを楽しむということであれば、新品に限らず中古でもいいんじゃないか」というアドバイスをいただき、もちろんご協力も快諾いただきました。ところが、ここからが大変だったのです。

私がもっともオーディオにのめり込んでいたのは1980年代。牧野さんは1970年代のオーディオがお好き。ふたり合わせれば、国産オーディオの黄金期はカバーできます。ただ、ふたりとも知識や記憶はあれど、当時の写真や資料もせいぜいカタログや雑誌程度しかありません。
また評論家の方やメーカーにアプローチしても、本のコンセプトを伝えるとそれとなく、場合によってははっきりと協力を断られることもありました。もう牧野氏とふたりで作るしかない、そう腹をくくり、むしろメーカーとのしがらみがなければ好きなことができる、とポジティブに考えることにしたのです。

いろいろとアドバイスをしてくださる牧野氏も、編集の大先輩として「澤村くんが編集長なんだから、好きなことをしていいんだよ」と背中を押してくれました。
ならば当時一番欲しかったアンプを巻頭特集にしよう、と決心し、NEC A-10という1982年に発売されたアンプが巻頭特集になりました。表紙は1984年に発売されたA-10・です。これはカタログもなかったのでヤフオクで買いました。

また中面で扱うレコードプレーヤー、テクニクスSL-1200MK・もヤフオクで買いました。特集で扱う機材は、写真がなかったのでイラストレーターに頼み、約30台描き起こしてもらいました。
写真や機材はメーカーから借りる、というのが当たり前の雑誌業界において、実物を買ったり、イラストを起こしたりという無駄なコストは常識はずれでした。

さらにA-10の開発ストーリーを訊くために、デザイナーと開発者を探し出し、当時の生々しいお話を収録。ネットでは分からない生の情報を心がけ、メーカーの都合ではない、当事者目線のお話を伺うことができたのです。


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広告はもちろんほとんど入っていません。タイアップ記事もありません。ほぼふたりで作ったため、刊行予定は遅れに遅れました。私も校了直前に過労からメニエル病となり、スケジュールはさらに押しました。

こうして難産の末生まれた『ステレオ時代』は、これまでのオーディオ誌の常識を覆した本となりました。しかも私たちの心配をよそに、発売されるとじわじわと話題になり、数カ月後には完売(もともとの発行部数も少なかったので)。会社からは続刊を出すようにと命じられたのでした。

もしあの時、牧野氏の協力を得られなかったら、またメーカーや評論家の先生方が快く協力してくたさっていたら、今の『ステレオ時代』はなかったかもしれません。

そんななりゆきで独立独歩せざるを得なかったマイナーオーディオ誌『ステレオ時代』ですが、縁あってここゴールデン横丁に参加することになりました。今後ともぜひよろしくお願いいたします。


第1号の表紙は、なんと約30年前に発売されたアンプ、しかも中古、という型破りなものでした。中古オーディオがヤフオクでまだまだ安く買えた時代でしたので、「カタログを持ってなかったら買っちゃえ」くらいの勢い(ヤケクソ)でした。

ネットで探しまくり、現存メーカーに訪ねまくり、やっと当時の開発者に行き当たりました。新製品時にはメーカーのオフィシャルなコメントしか雑誌に載りません。『今だから話せる』開発ストーリーは、その後の『ステレオ時代』のウリになりました。

第1号でご協力いただいた数少ないメーカーに、国産オーディオの雄、アキュフェーズがありました。以前牧野氏が別の本で取材をされていらい、個人的にお付き合いがあるということで、ご協力いただけました。

正面から取材依頼をして、唯一オーケーしてくださったのがオーディオテクニカでした。どこの馬の骨とも分からない、また業界のルールも分からない私たちにも丁寧にお応えいただきました。本当にありがたかったです。

普通のオーディオ誌と違い、資料もカタログもなかったため、イラストで描き起こした過去のコンポーネント。時間があればカタログをヤフオク!で探すということも考えましたが、とにかく数が多かったのでイラストの方が早かったのです。

ゴールデン横丁の仲間たち | 澤村 信(さわむら まこと)

https://goldenyokocho.jp/articles/675

かつてのオーディオブームを体験した世代にはたまらないムック本『ステレオ時代』(ネコ・パブリッシング)の編集長。ゴル横会長たっての願いを快く受け入れ、オーディオ愛あふれるコラムをゴル横に書き下ろしていただくことになりました!

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