TDK カセットテープ “メタルアロイ” シリーズ カタログ

TDK カセットテープ “メタルアロイ” シリーズ カタログ

家電蒐集家松崎順一さんが考古学的アプローチで昭和時代の様々なカタログを読み解くコーナー。今回はメタルテープの誕生と同時に登場し話題となったTDKメタルテープのカタログを取り上げます。


MA-Rは変身サイボーグを彷彿させる未来感溢れるデザインが刺激的だった。

70年代のオーディオ界は激動の連続だった。中でも録音メディアの進化は目覚ましく、70年代初頭のオープンリール全盛時代から中期は音楽専用のクロームテープも登場し、カセットテープが台頭した。

そして76年にはオープンリールとカセットテープのいいとこ取りのエルカセットが登場し、オーディオフォンを湧かせたのだ。しかし、カセットテープの進化は止まることを知らず、79年にはついにクロームテープの音質を遥かに超えるメタルテープの誕生により、エルカセットの牙城は崩れていった。結果、エルカセットは短命でその使命を終え、メタルテープによってカセットプレーヤーの進化も飛躍的に進んでいった。

今回紹介するTDKのメタルテープMA-Rは、性能もさることながら、メタルという概念をヴィジュアルで表現したカセットテープだった。当時筆者もこのヴィジュアルに魅せられ、何本か購入した一人だ。ただ、カセットテープとしては高価すぎて使うのに躊躇した思い出がある(笑)。

それではカタログを見てみよう。

MA-Rがほぼ全面を占めている表紙はインパクト大だ。TDKのメタルテープはこのカタログ時点では46分と60分の2種類が存在する。写真はC-60と思われる。そして横の帯には大きく「METAL ALLOY SERIES」と合金であることを表示。MA-Rは金属のハーフの中でテープが空中に浮いている姿に次世代感が表現されていたように思っている。

そして中を開くと目に飛び込んでくるのは、表紙と同寸大のMA-Rの裏側、つまりB面だ。とても小さくまとめられたキャプションが、よりMA-Rのプロローグ的役割を果たしている。

いよいよこのページから、MA/MA-Rの持つスペックの紹介だ。筆者もあまり馴染みのない様々な数値が並び、その凄さを感じさせるが、従来の高性能テープSAと比べて2倍から4倍のエネルギーを持つ旨が書かれている。筆者は、スペックよりもメタルテープの酸化していない金属粉が塗布された黒光りのテープを見ただけですごさを実感する。

続いてのページは、MA/MA-Rの電磁特性がグラフで紹介されている。よく新品のカセットテープのシュリンクフィルム(外装フィルム)に印刷されている特性のグラフだ。そして上部には、そのフィルムをしたママの新品状態のMA-Rだ。この佇まいも実に美しい。今入手したら、勿体無くてフィルムは剥がせないかも。

そしてこちらはMA-Rのアイソメ図だ。黒ベースに写真ではよくわからないが、銀色で描かれている。カセットテープ初の革新的なメカニズムは、やはり一番訴えたいところなのだろう。

アイソメを見てからの次のページは、MA-Rの持つRSメカニズムの実際の分解写真だ。MA-Rは本体自体が透明なので、分解しなくてもある程度の構造は分かるが、こうやって見ると通常のカセットテープと異なるダイキャストでできたフレーム以外はシンプルな構成だ。

最後のページは当時のラインナップだ。なかでも筆者が長年愛用していたのは、TDKのADだった。MA-Rは勇気を出して1本購入したことがある。カセットテープで当時の男性たちのオーディオライフを支え続けたTDK。現在は全く違う業種を展開しているが、長年培った磁性技術を応用しているのは、なぜか嬉しい。

出典: 東京電気化学工業株式会社 TDK CASSETTE TAPES カタログ (1979年)

ゴールデン横丁の仲間たち | 松崎 順一(まつざき じゅんいち)

https://goldenyokocho.jp/articles/676

家電蒐集家・デザインアンダーグラウンド工場長。1960年生まれ。インハウスデザイナーを経て2003年よりデザインアンダーグラウンドを設立し活動を開始。近代家電製品の蒐集・整備・カスタマイズ等を手掛ける。近年は特にデジタル世代へのメイド・イン・ジャパン家電の持つ魅力をカルチャーとして伝える活動をイベント、執筆等、広範囲に展開中。

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